私と扇風機


今日も雨で、

部屋の湿気が多く感じた。


なので、

扇風機せんぷうきをつける事にする。


リビングに持ってくると、

気付いた仲間がこっちを見て


「お!」


と声を出した。


扇風機せんぷうきつけるのか!」


「今日は湿気が多いですからね。」


リビングの丁度いい場所を探し、

そこに置いてコンセントを差す。


「スイッチオーン。」


間抜けな掛け声と共にスイッチを押すと、

扇風機せんぷうきの羽根がいきおいよく回り出し、

密室だったリビングに風が回り出した。


「おー、涼しいなー。」


「風があると違うなー。」


流れてくる風にリビングにいた仲間達が、

心地よさそうに目を閉じている。


「・・。」


私はというと、

絶えず回る羽根を見て、

き起こる好奇心こうきしんおさえられずつい


「あー。」


扇風機せんぷうきに向かい、

声を出してしまった。


「あ、それついやっちまうんだよなぁ。」


「なんとなくやるよな。」


あちこちにいた仲間達が笑っているが、

私はそのまま声を出し続ける。


「あー。」


「・・あー。」


側から突然声が増え、

おどろいた私は思わずとなりを見た。


すると、


「・・今日は暑い。」


という理由で、

本日はブルーのおもさんが、

同じようとなりで声を出している。


「あー。」


「あー。」


2人で並んで声を出していると


「我々は宇宙人だ~。」


と、ベタなセリフの声が増えた。


反対側を見ると、

楽しそうな表情でそらさんが参加している。


「そのセリフもよく言いますよね。」


「1人なのに『我々』なんだよなぁ。」


「・・不思議だ。」


そう言いながら会話していると、

面白そうな顔をしたヒトが次々と増え、

思い思いのセリフを扇風機せんぷうきに向かって

叫びだした。


「赤巻紙、青巻紙、きまきまきー。」


「区切ってても言えてねぇよ。」


「開けびわー。」


「ゴマだろ!」


胡麻ごま嫌いなんだよ!」


「表イタリアン~。」


「なんだそれ。」


「ウラメシやの現代版。」


「原型ねぇじゃん!」


「いしや~きイカ~。」


「気軽に食えねぇ。」


そのうちふざけて変なセリフを叫び出し、

それに突っ込みを入れてみんなで笑う。


笑うとその声がふるえ、

奇妙きみょうな声になった事で、さらに笑った。


何時いつの間にか、

人口密度の増えた扇風機せんぷうきの前で、

全員で


「下らねー!」


といいながら腹を抱えて爆笑する。


湿気しっけが多くて不快ふかいな日が続くが。


楽しい事を1つ見つけるだけで、

こんな日も楽しくなった。



明日が雨でも、楽しく過ごせそうです。




それから少しして


うるさい!」


「いい加減にしろ!」


と、別室で本を読んでいた

いかずちさんとこおりさんが怒鳴どなりこんで来たが。


扇風機せんぷうきの前に全員が集合して


「ごめんごめん~!」


と震える変な声であやまると、

2人は頭をかかえ深い溜息をついた。

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