仲間とバーベキュー


夕飯のリクエストを聞いたら


「焼肉がいい!」


と言われた。


確かに、

焼肉はここ最近していなかったが、

人数が多い上に全員がよく食べるので、

ホットプレート1つだけではりない。


どうするか悩んでいたら、


「バーベキュー用コンロとか持ってくるから、

庭と分ければいいんじゃね?」


と、そらさんが言い出し。


「そんじゃ、俺が肉持ってくるわ!」


そう言ってつるぎさんがけ出した。


「なら、野菜を持ってこよう。」


「・・魚介類を持ってくるか。」


「白飯をいて持ってくる。」


それを切欠きっかけに、

全員が材料などを持ち寄って、

夕飯は焼肉からバーべキューへと

変わったのである。


材料や器具を持って来た後、

手分けして庭とリビングの準備をととのえた。


直ぐに火の通る者は庭で、

げやすい物はリビングで、

と分けて焼く事にする。


ホットプレートとバーベキューコンロの前には、

名乗り出てくれた焼き担当けん番人が、

それぞれの焼き具合を管理してくれている。



我が家では食べ物を作る時は、

必ず誰かが見張りに付く事になっていた。


何故なぜかというと、

こういう時につまみ食いをするヒトが多数、

存在しているのが理由である。


現にさっき、

待ちきれないつるぎさんがつまみ食いをしようとして、

こおりさんにり飛ばされた上で正座を言い渡され、

今はリビングのすみで座っていた。


・・その隣りにも追加された何人かが、

同じ正座スタイルで並んでいるが。


「焼けたぞー!」


「こっちもいいぞ!」


リビングと庭の両方から、

肉などが焼ける良いにおいがただよい、

焼き担当が叫んだ。


「ご飯欲しいヒトはこっちですよー。」


・・私は1人でも出来ると言ったのだが、


「人数が多いだろう?

やる事が無いから手伝う。」


と、隣に来たせきさんと一緒に、

並んだヒト達に順番に、

ご飯やはし、焼肉のタレを入れる小皿を渡す。


それらが全て行き渡った所で、

全員で手を合わせた。


「いただきまーす!」


いただきます!


それぞれが小皿に好きな物を入れて、

楽しそうに食事を始める。


「これ、美味いな!」


「あっちの取ってくる!」


食事の感想や会話でにぎわう中、

私は座る場所を探して移動を始めた。


その最中、

庭で焼かれている巨大なむらさき色の肉を発見し、

思わず足を止める。


「これは・・。」


「食うか?」


美味いぞ!


そう言って、

やはりむらさきの肉のかたまりを1個差し出したのは、

つるぎさんだ。


「これ、つるぎさんが持って来たんですか?」


「おう!

昨日仕留しとめてさばいたやつ!」


何をつかまえたのだろうか。


「食べても平気なんですか?」


勿論もちろんだ!」


好奇心こうきしんから食べようと思い、

受け取ろうとしたその手が、

あわてたいかずちさんに止められる。


駄目だめだ!

・・この肉は確かに美味いが、

抗体こうたいを持っていない者には猛毒もうどくになる!」


「また、何も考えずに食べようとしたな。」


何時いつの間にか側に来ていたこおりさんに、

溜息と共にデコピンされた。


「痛っ!」


「こっちの普通の肉にしなさい。

・・何か食べる時は、

側に居る者に確認かくにんしてから取った方がいい。」


「俺達にしか食べられない食材を、

持って来た馬鹿が多数いるからな。」


何時いつの間にか自宅で、

けのロシアンルーレットに

参加させられているようです。


取り敢えず2人にお礼を言い、

私はその場を離れる。


そのまま3人から離れると、

次に会ったのはそらさんだった。


「食べてるか?」


「はい。」


返事をした時、

偶然ぐうぜん目に入った彼の焼き肉のタレの色が、

おかしい事に気が付く。


「あの、そのタレは?」


「あぁ、これか?」


彼は楽しそうに笑いながら、

その理由を話してくれた。


「焼肉のタレって、味がいだろ?

マイルドにしようと思って、調味料をしたんだ!」


ちなみに何を?」


ハチミツと、ピーナッツバターと、ブルーベリージャム!


「後、カスタードクリームだな!」


「・・。」


かなければよかった・・。)


心から後悔こうかいしつつ、

私はそらさんとも別れて歩き出す。


するとすみの方で、

せきさんとくもさん、

本日もレッドなおもさんという、

珍しい組み合わせを見つけた。


「ここに座ってもいいですか?」


かまわない。」


「いいよ~。」


「・・あぁ。」


三者三様さんしゃさんようの返事が返ってきた事を確認かくにんし、

私は静かにとなりに座る。


私の皿の中を見たせきさんが、

眉をひそめながら言った。


「野菜が少なくないか?」


「もっと取ろうと思ったんですが、

見た事が無い物ばかりだったんです。

さっき、いかずちさんとこおりさんに、

誰かにくように言われまして。」


で、面倒めんどうになった訳だな?


はい。


まったく・・。

お前が食べられる物を取って来るから、

少し待っていろ。」


そう言うとせきさんは立ち上がり、

ホットプレートの方に行ってしまう。


「食べるの邪魔しちゃいましたね。

・・悪い事したなぁ。」


せきさんは何時いつも、

ああやって私の面倒めんどうをみてくれるのだ。


彼の方が気がくので、

色々な事に気が付くのも早い。


なので1人で無理にやろうとしても、

気が付いた彼に手伝わせる結果に

なってしまうのだ。


・・最近は彼に、

迷惑しか掛けていない気がして、

私は非常に申し訳なく思っている。


私が溜息をつきながら言うが、

くもさんはおだやかに笑いながら


「違うよ~。」


と、否定ひていした。


「そうですか?」


「うん。

あの子はね、嫌な事ははっきり言うよ~。

それに、君の世話せわ焼くの楽しいみたい~。」


「楽しい?」


頭に疑問符ぎもんふを浮かべていると、

おもさんも静かにうなづく。


「・・せき、この中で若い方。」


「そう。

今まで、面倒めんどう見てもらう側だったからね~。

お兄さんになったみたいで、嬉しいんだよ~。」


「・・。」


確かに、

せきさんは仲間達の中でも年下の方だと、

いかずちさんに聞いた。


私よりも当然年上なので、

あまり気にした事は無かったが。


「・・喜んでくれていれば、いいんですけどね。」


何となく照れ臭くなって笑うと、

くもさんとおもさんも静かに笑う。


「喜んでるって~。」


「・・大丈夫だ。」


3人で笑っていると、

手に皿を持ったせきさんが戻ってきた。


そして、

笑っている私達を見て、

理由が解らない彼は頭上に疑問符ぎもんふを飛ばしたのである。




その後、

寝ながら食べようとするくもさんを起こしたり、

苦手な玉ねぎを残そうとするおもさんに、

何とか食べさせようと苦戦するせきさんを見て


(さっきの言葉は、面倒めんどうみられている経験談けいけんだんか。)


と、私はさとった。



・・もう少し、せきさんをいたわろうと思う。

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