私とお面


「ただいまー。」


声を掛けながら家に入って、

リビングまで行くと


「・・お帰り。」


日曜の朝によく見る、

赤いリーダーの仮面が待っていました。


「ただいまです。

今日は遊びに来たんですか?」


「・・。」


そうくと、彼は静かにうなづく。


「お茶れますね。」


あ、チョコレート菓子食べます?


・・。


またうなづいてくれたので、

皿にチョコレート中心の菓子類を乗せ、

自分の分も合わせてテーブルに運んだ。


彼はチョコレートが大好きなので、

何時いつも多めに入れる事にしている。


「どうぞ。」


そう言ってお茶をすすめると、

彼は少し面をずらして口に運ぶ。


「最近見かけないから、心配していたんです。」


「・・仕事。」


「あぁ、いそがしかったんですね。」


「・・。」


また1つうなづき、

彼はチョコ菓子を口に入れた。


口元が少し笑っているので、

味を気に入ってくれたらしい。



無言でお茶を飲むこのヒトは、

おもさん。


物凄ものすごい無口だが不愛想ぶあいそうではなく、

此方こちらが話しかければ、

しっかり聞いて動作で答えてくれる。


そして彼の1番の特徴とくちょうは、

常に何かの面をかぶっている事。


初めて会った時、

彼はナマハゲの面をかぶっていた為、

私は思わず悲鳴を上げ

いかずちさんの後ろに隠れてしまった。


静かに落ち込む彼に


『面に驚いてしまった。』


と、私が説明して謝ると、

彼は逆に驚かせた事を謝ってくれたのである。


その後に一緒に特撮番組をて、


『これなら怖がらないだろう。』


と考えたらしく。


それ以来彼はヒーローの面を手作りし、

それをかぶって遊びに来るようになった。


「今回の面も、クオリティーすごいですね。」


「・・造るのは、楽しい。」


お茶を飲みながら、おもさんは静かに言う。


「昨日は雨がひどかったですね。」


こく。


うなづいたから、これは肯定こうてい


「濡れたりしませんでしたか?」


ふる。


横に振ったから、これは否定ひてい


・・こうやって仕草しぐさをみていると、

ジェスチャーゲームみたいで楽しい。


「お茶、新しいのれましょうか?」


ふる。


「チョコ菓子美味しいですか?」


こくこく。


2回うなづいたから、気に入っているようだ。



しばら他愛たあいない話をしていると、

そらさんがリビングに入ってくる。


「お!おも来てたのか!」


こく。


「俺も菓子持ってくる!少しやるよ!」


ブンブン!


物凄ものすごいきおいで、

手も一緒に振るおもさんに


「なんでだよー!」


と、そらさんが笑った。


おもさんも知ってるのか。)


そのまま笑いながらキッチンに行った彼は、

両手に菓子をかかえて帰ってくる。


「ちょっといそがしくて、作れなかったんだよ。」


市販ので勘弁かんべんしてくれよ!


・・こく。


(あ、ホッとしてる。)


その後は3人でお菓子を食べながら談笑だんしょうし、

にぎやかで、静かな時間をごした。


夕方になり、

気に入ってくれたチョコ菓子を、

おもさんにお土産として渡したら、

彼は嬉しかったらしく。


次の日。


お礼として私用に造ってくれた、

ゴールドの面をプレゼントされたのである。




過去に1度だけ、

仕事がいそがしくてレッドの面が造れず、

さっと造った可愛いクマのキャラクターの面で

遊びに来た事があるのだが。


それを見た仲間達は、

遠慮えんりょなく全員が爆笑し、

本人は終始しゅうし恥ずかしそうに菓子を

食べていました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る