私とダイエット番組


「またやってますねぇ。」


テレビをつけると、

出演者にダイエットをさせる番組が

やっていた。


「最近多いですよね。」


「こういう番組な。」


「一気に増えたよなぁ。」


となりでお菓子を食べながら、

つるぎさんとそらさんが同意する。


なんとなく見ていると、

つるぎさんが顔をしかめた。


「おいおい。

・・このやり方だと、体壊すぜ。」


「だよなぁ。

体の大きい人に、

りこんな激しい運動させると、

ひざとか心臓悪くするぞ。」


心配そうな表情で、

そらさんが画面を見る。


「そうなんですか?」


私がくと、

難しい表情をしたつるぎさんが、

画面を見ながら言った。


「体が大きくなっても、

内臓ないぞうの大きさは変わらねぇ。


負担ふたんの大きくなっている時に、

普通の人間でもキツイ運動をすれば・・


反動はんどうは全て体重をささえるひざと、

血流を流す心臓に来るぞ。」


心配からか、

食い入るように画面を見ながら、

そらさんが続く。


「健康どころか、

下手すれば死んじまう。


だからこういうのは、

ゆっくり時間かけてすればいいんだよ。


健康の為にする事で、

体壊しちゃ意味無いもんな。」


「確かにそうですね。」


お茶を飲みながら私がうなづいていると、

今度は2人が不思議そうな顔で

テレビを見る。


「あれ?

でもこのテレビの出演者・・ぎだな。」


「本当だな。

・・健康をうながす番組で、

どうして不健康な奴が出てんだろ?」


頭に疑問符ぎもんふを飛ばす2人に、

私は静かに世の中の不条理ふじょうりを話した。


「細い事が正義らしいです。」


へぇ~。


2人は不思議そうにうなづき、

テレビ画面を見続ける。


「何をているんだ。」


そこに通りがかったこおりさんが、

私達に声をかけてきた。


「ダイエット番組です。」


「ダイエット?」


テレビ画面をチラッと見て、

彼は盛大に顔をしかめる。


「・・体を作り変えるだけの

番組なんかて、楽しいのか?」


「面白くないですよ。

・・人の心の変化を、

楽しんでいる人もいるでしょうけど。」


私が言うと、

彼は不思議そうな顔をした。


「そんな物、

テレビでやる必要などないだろう。


ここに映っている者達の、

心根が真実このままならば・・

知り合いが少ないという事がわかるだけだ。」


「なるほど。」


私が納得していると、

映像を見た出演者が何かを言ったらしく、

ていた彼の眉間みけんしわが寄る。


「・・この出演者は、

どうしてこんなに上からの目線で

物を言うんだ。


まったく、これだから人間は。」


「・・こおりさんは細い太い関係無く、

人間が嫌いなんですか?」


私がくと、彼は少し苦い口調で言う。


「外見は関係無い。


俺はひとしく人間が嫌いだ。


太かろうが細かろうが、

若者だろうが老人だろうが。


そこに区別は一切いっさい無い。


一皮けば、ただの骨。

死んでしまえば、ただのむくろだからな。」


「・・そうですか。」


静かになった空間から、

こおりさんは離れていった。


しかし、

リビングから出る前に小さく何かを呟く。


「?」


私には全然聞き取れなかったが、

つるぎさんとそらさんが爆笑した事から、

2人には聞き取れた事がわかった。


「なんて言ってたんですか?」


そうたずねると、

2人はまだ笑いながら言う。


「『奴らは、命を大事にしないからな』

だってよ!」


「照れるなら言わなきゃいいのにな!」


いまだ笑い続ける2人の言葉に、

私も静かに笑った。





その後も2人は笑い続けていたが、

通りがかったいかずちさんに、

自分達が笑っている理由を説明しようとした瞬間


何時いつの間にか姿を現したこおりさんに、

物凄ものすごいきおいでり飛ばされたのだった。

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