私とクイズ


最近は、梅雨つゆで雨の日が続く。


この時期は、

必然的ひつぜんてきに室内にいる事が多くなり、

各自かくじリビングで好きなようごしていた。


カードゲームで対戦するヒト達や、


テレビをるヒト。


携帯ゲーム機を持ち寄り

通信して遊ぶヒトもいれば、


本を読んでいる人もいる。


その中で私は、

大抵たいていぼんやりとしながら、

窓から景色を見ている事が多かった。


今日もぼんやりしていると


「おーい!」


と、つるぎさんに呼ばれる。


「どうしました?」


「クイズしようぜ!」


唐突とうとつですね。


クイズの本貸してもらったんだよ。


「じゃあ、第1問!」


まだやるとは言ってないんですが。


「『パンはパンでも、

食べられないパンはなーんだ?』」


「フライパン。」


当たり―!


基本ですからね。


「そんじゃ、

『太郎君は風邪かぜをひきました。


病院に向かっている間にちょうが1羽飛んできて、

側にいた牛が『モウ』と鳴きました。


太郎君は何の病気でしょう?』」


風邪かぜって言ってますが。」


おお!また当てた!


これも基本ですから。


その後も、

3回ほどつるぎさんが問題を出してきたが、

どれもが小学校の低学年レベルだった。


簡単すぎて私がき始めた時、

彼が笑いながら言う。


「ここまでは小手調こてしらべな。

次の問題は難しいぞ。

・・間違まちがえたらばつゲームな!」


「いいですよ。」


この時の私は


(やっと、高学年の問題レベルかな?)


と考えていたのだが。


その予想は、

悪い意味で裏切うらぎられる事になる。


「じゃ、問題!


『私は、熱く冷たくあたたかい。

また、体であり体である。


大きくも小さくもあり、

かたくもやわらかくもある。


無くなる時もあれば、増えもし、

新しければ、古くもある。


良くもなれば、悪くもなり、

どちらでもない時もある。


私とは何か?』


これなーんだ!」


30秒以内な!


「えぇっ?!」


いきなりね上がった難易度なんいどに、

私は思わず声を上げた。


「いきなり難しくなってるじゃないですか!」


「あと20秒だぞ!

このままだとばつゲームだな!」


笑顔でカウントを続けられ、

あわてて答えを考える。


・・しかし、

冷静になれない今の状態では、

頭の中がまとまらなかった。


(水、じゃないし、虹、でもない。

時計は違うし、風呂、はさっきのだ!)


全然分からない!!


「あと10秒!

9、8、7、6.・・。」


あせればあせるほど、

訳のわからない単語しか出て来なくなる!


・・なぜか今、

リュウグウノツカイが頭の中で

立ち泳ぎしているのもそのせいだろう。


「3、2、1。」


うあぁあ!


降参こうさんだな!」


そう言って、

笑顔のつるぎさんが時間切れを

げようとした時だった。



「夢。」



のんびりした声が部屋にひびく。


「え?」


思わず声のした方を見てみると、

おだやかな顔で笑うくもさんがいた。


「答えは夢だよ~。」


ふわふわした笑顔でげるくもさんに、

つるぎさんがっていく。


「答え言うなよ!

クイズにならねぇだろ!」


「そうだったんだ~?」


困ってるみたいだから、

答えちゃった~。


それでも暢気のんきに笑っているくもさんに、

すっかり毒気を抜かれてしまったつるぎさんは、

大きな溜息をついて肩を落とした。


「もういいか。

・・正解は、『夢』で合ってるよ。」


「やったね~。」


まったく・・。」


もう1度、

溜息をついたつるぎさんが何かを言おうとして、

くもさんを見る。


が、それはすぐにあきらめの表情に変わった。


「もう寝てらぁ・・。」



くもさんは、とにかくよく寝る。


聞いた話によると、

彼は膨大ぼうだいな知識を記憶しているらしい。


その上、

無意識に色んな事を計算し、

記憶してしまうというくせがあり、

そのせいで脳が常に休息を求める為に、

眠気がとれないそうだ。


放っておくと何日でも寝続けてしまうので、

友人達に起こしてもらっているらしい。


勝負を邪魔され、

へそを曲げてしまったつるぎさんは、

見兼みかねたいかずちさんに鍛錬たんれんさそわれ

出掛けてしまった。


私はタオルケットを持って来ると、

おだやかな笑顔で眠るくもさんに、

そっとかける。


「・・ありがとうございました。」


小さな声で礼を呟き、静かにそこを離れた。


すると



どういたしまして。

ありがとう。



と背中に小さな返事と礼が返ってくる。


驚いて後ろを振り返っても、

彼は笑顔のままで眠っているだけだった。


「・・どういたしまして。」


私も小さい声で返事をし、

そのまま静かに彼から離れる。





しかしその後、

タオルケットの肌触はだざわりを気に入ったくもさんが、

夕飯になっても起きず


みんなで色々手をくし、

苦労して起こす事態になってしまった。

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