それぞれの過ごし方


今日も、

朝から雨だった。


外に出られないので、

仲間達は室内で好きな様に過ごしている。


私もぼんやりと過ごしていたのだが、

ふと、気になる事ができて彼に声を掛けた。


そらさ~ん。」


「なんだ~?」


カードゲームで対戦中のそらさんに、

ソファーに転がったままゆるく声を掛けると、

同じくゆるい返事が返ってくる。


普段ふだんの雨の日って、何してます?」


「ん~・・。」


手札から1枚場に出し彼が何か告げると、

相手から叫び声が上がった。


どうやら、良いカードを引いたらしい。


「読書してるな。」


「読書ですか?」


余り彼のイメージに合わず、

思わず聞き返してしまった。


それでもそらさんは気にする事無く、

笑いながら説明してくれる。


「俺、本好きなんだ。

特にハードカバーの、重くて分厚ぶあついやつ。

気に入ったら、

原文と翻訳版ほんやくばんの両方集めてるぞ。

言語によって、ニュアンスが変わるから

面白いんだよな。」


「へぇ~。」


説明を終えたそらさんが、

相手の出したカードに悲鳴を上げた。


どうやら、逆転されたらしい。


せきさ~ん。」


「シャキッとしろ。」


本を読んでいるせきさんに声を掛けたら、

眉をひそめて怒られてしまった。


仕方なく、

ちゃんと座り直していてみる。


普段ふだんの雨の日って、何してます?」


普段ふだんか?」


手元から目を離し、

彼はこちらを見ながら答えた。


「武器の手入れをした後、座禅ざぜんをする。

その後には基礎鍛錬きそたんれんをし、書を読んでいるな。」


「雨の日も鍛錬たんれんですか?」


「当然だろう?」


せきさんは

私の質問に不思議そうな顔をしたが、

その後に少し考えながら続ける。


「それ以外なら、音楽を聴くぐらいだな。」


「ジャンルは?」


「クラッシックだ。

よく聞くのは、ショパンの夜想曲ノクターン第2番。

静かで、落ち着いた音が好きなんだ。」


目を閉じて楽しそうにそれだけ言うと、

彼は再び視線を本に戻してしまった。


「お前は?」


カードゲームを終えたそらさんが、

片付けながら私にたずねる。


「私ですか?

ん~・・ぼんやりしてますね。」


そう言ってソファーにまた転がると、

目の前にそらさんとせきさんがやって来た。


「それはいつもじゃん。」


「他には無いのか?」


あきれ顔の2人にかれ、

私は自身の雨の日の行動を思い出す。


「・・え~っと。」


ごろごろしたり、だらだらしたり、

のんびりしたり、ボーっとしたりですね。


全部同じだな。


「お前はもう少し」


せきさんが何か言いかけた時、

出かけていたつるぎさんが帰ってきた。


「おーい!

人気のアイス、手に入ったぞ!」


早く食おうぜ!


それを聞いた私は、

素早すばやつるぎさんにって行く。


「チョコレートがいいです!!」


「わかってるって!」


すっかりアイスに気を取られた私は、

ソファーに残された2人の会話を

聞いていなかった。




物凄ものすごく早かったな!」


「食い物の事は、

昔から反応が早いんですよ・・。」


「ま、いいじゃんか!

食欲があるのは元気って事だ!」


俺らも行こうぜ!


・・そうですね。


2人は話をくくり、

アイス争奪そうだつ戦へと向かうのだった。

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