仲間とカードゲーム


我が家では今、

カードゲームが流行はやっている。


遊び好きな仲間の1人が

買って来たのだ。


最初はみんな


洒落しゃれた花札みたいなもんだろ?」


とか


「紙切れで擬似ぎじ戦闘しても面白くない。」


とか言っていた。


私にいたっては、


「ルール覚えんの無理っす。

面倒くさいし。」


と、初めに逃げた。


でも、そのヒトは諦めず、

みんなを説得して回り、ルールを教えた。


そんな彼に根負けし、

渋々しぶしぶ付き合い始めたヒトがハマり、

そのヒトがまた別のヒトを誘って・・


そうしていると、

いつの間にか家中でカードゲームの

大会が開かれるようになった。


最初は嫌がっていた私も、

やってみれば慣れてしまい、

大会に混ざっては大敗している。


今も、おやつのどら焼きを巡って

熱い戦いが繰り広げられていた。


「よっし!俺の勝ち!」


やっぱり、

Aブロックはつるぎさんが勝ったらしい。


つるぎさんは超攻撃特化型で、

本人も攻撃的な戦い方をする。


しかも、本人は運がかなり良く、

カードの引きが良い。


それに、彼は食べ物が関われば

更に強くなるというステータス持ちだ。


「俺の勝ちだな。」


Bブロックは、

いかずちさんが勝ったらしい。


いかずちさんは超防御特化型で、

慎重な戦い方をする。


カードの引きは普通だけど、

戦略と防御で確実に相手を倒しに行く。


・・それに、

今日の相手は運の悪い彼なので、

順当な所だろう。


「このまま勝ってやらぁ!」


「負ける事は性に合わん。」


2人がデッキを手に互いを睨む。


どこのアニメだろうか。


そんな事を考えてた時だった。


「俺も混ざってやろう。」


悪役のセリフでこおりさんが登場した。


「兄貴が?」


不思議そうにつるぎさんが聞く。


「お前は興味無いと言ってただろう?」


眉をすがめながらいかずちさんが言う。


「俺に不可能は無い。・・それとも。」


こおりさんが楽しそうにニヤリ、と笑った。


「自信が無いのか?

それならそうと言えばいい。

負け戦は、馬鹿のやる事だからな。」


2人の眉が、ピクリ、と動く。


「初心者でも容赦ようしゃしねぇぞ!」


「思い知らせてやろう。」


あーぁ。


一応、言っておいた方がいいかな。


「あの、2人」


2人に忠告しようとした口を、

側にいた仲間に抑えられた。


「しっ!・・面白いから黙ってようぜ。」


このヒトは、このゲームを広めた本人だ。


・・そして、事情を知っている。


「・・知りませんよ。

後で2人に怒られても。」


「バレなきゃへーきだって!」


完全に面白い物を見る目で、

彼はそう言う。


「2人まとめて掛かって来ればいい。」


こおりさんも、自分のデッキを構えた。


「来い。

・・格の違いを見せてやる。」


ラスボスの顔で、彼は笑う。



・・これは、

どこのアニメだと突っ込む人はいなかった。




「瞬殺でしたね~。」


どら焼きを口にしながら私は言う。


「当然だな。」


勝利のどら焼きを綺麗に食べながら、

こおりさんは自信満々で笑った。


あの後、

1対2という変則的なルールで始まったが、

まずつるぎさんが1ターンで瞬殺され、

いかずちさんは健闘したが3ターンで負けた。


初心者に負けたと項垂うなだれる2人に

こおりさんは嘲笑ちょうしょうと共に言ったのは


「誰が初心者だと言った?」


だった。


唖然あぜんとする2人に、

本人に代わって私が説明する。


実はこおりさんは、

ゲームが広まる前に私と対戦していたのだ。


ルールが中々覚えられず、

私がこおりさんに頼み込み、

覚えるのを手伝ってもらった事がある。


すると、彼は1度で覚えた為、

確認も兼ねて練習に付き合ってもらい、

何度か対戦した。


彼は、物凄ものすごく強かった。


偶然側にいたゲームを広めた彼が、

1ターンで負けてしまうくらいに。


100時間やりこんだ彼が、

たった1時間のこおりさんに負けたのは

観ていた私が驚いた。


しかし、こおりさん本人は


「飽きた。」


と言い捨て、それ以来止めてしまった。


「その筈でしたけど、

カード持ってたんですね。」


「戦略を練るのは楽しかったからな。」


お茶を飲みながら、

楽しそうに彼は笑う。


「2人に黙ってたのはどうしてですか?」


疑問に思った事を聞くと、

こおりさんは追いかけっこをする3人の方を見た。


あの後、

いかずちさんとつるぎさんに彼が黙っていた事がバレ、

現在は3人の壮絶な追いかけっこが

開催されている。


「思い知らせる為だ。」


「思い知らせる?」


「ああ。

どんな時でも、油断をしない事。

相手が誰でも、あなどらない事。

常に作戦を変更できる柔軟じゅうなんさが

必要だという事だ。

・・それに」


どら焼きを食べきった彼が

こちらを見た。


「上には上がいると

思い知らせてやらないと、な。」


不敗の帝王は、

ラスボスの顔で笑う。


このヒト達は、

遊びも手合わせも全力でする。


負けず嫌いなのだ。


ちなみに、

こおりさんは罠や魔法が主体の変則的な

戦い方だった。


相手の性格から先を読み、

的確に弱点を突く。


だから、決まった戦い方をしない。


終わった後、

彼のデッキをみんなで見せてもらったが、


「お前らしい、相手が嫌がるデッキ。」


と、全員顔を引きらせていた。




その日以来、

再戦を願う2人や、

対戦を申し込むヒトに囲まれ、

キレたこおりさんが誰かを蹴り飛ばしてるのを

目にするのが日常化する事になる。

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