第10話
「ーーどうしてこんなことを…………、」
ジノは目の前で起きた予想外の展開にただ、ただぼうぜんとするしかなかった。
チィーヤが契約精霊を召喚する呪文の詠唱をするといきなり蛇状のどでかいドラゴンが現れた。こんな近くではどのくらいの大きさなのか確認するのは困難だ。ドラゴンの大きさから自然とドラゴンよりも小さいログハウスは大破される。一気に、跡形もなく。
救いとすれば、ジノがいたあたりには被害はなかった。無事にベットは残っている。
こんな取り返しもつかない状況になってしまう前に止めておけばよかった、との後悔が脳裏によぎる。
もし、アニメとかだったらワクワクする展開かもしれない。もしかしたら、違う立場だったらこの状況を楽しめたかもしれない。だが、今は違う。自分ちが破壊されてしまった。いきなりドラゴンを召喚したチィーヤへ腹立たしさ、怒りすら出てくる。
そんなジノをよそに、いつのまにか空に浮いているリィーセに対して、
「相変わらず呪文の詠唱だけは早いわね」
「呪文の詠唱が早いわけではありません。
ただ、呪文発動に必要な手順をしっかりと行なっているだけです」
空に浮いたままチィーヤに言うリィーセ。
手元には初めて白金色のリィーセよりもやや長い杖を持っている。杖を覆うように薄く輝きを帯びている。普通の自然現象ではありえない。もしかしたら、魔法が関係しているのかもしれない。
リィーセはその杖でチィーヤの方を指し、
「私の魔力は先の大戦とは比にならないほど強大なものになっています。
そのウザいドラゴンを召喚せずにおとなしく帰っていれば、ここに来た罪を許してあげたものの、私が一生懸命作った愛の巣を壊してしまった以上、もう許すことはできません。
今日こそ永久に封印してあげます」
「ーーっ?」
「何そんな衝撃的な事実を告げられたかのような顔をするのですか、チィーヤ」
「そりゃ、驚くようなことを言われれば、こんな顔をにもなりますわ。
リィーセが私を封印できるわけないでしょう。
封印されるのはリィーセ、あなたの方よ。
ハンデとして教えておいてあげる。
私のルールは以前からするとだいぶ変わっているわ」
と言うとともに、ドラゴンはリィーセに向けて、火を吹く。先ほど水をかけられたから、水とは逆の『火』ということだろうか……。
それに対して、リィーセは杖をさらに光らせ、チィーヤのドラゴンが吐いた火の方へ向ける。すると大量の水が出てきて、ドラゴンの火が消火されていく。
(ーー凄い……、)
素直にジノは思った。
ジノの中にある常識から普通ではありえないことが起こっている。
(だが、非常に熱い)
目の前にいる巨大なドラゴンが現れ、火を吹いている。
それだけだって、非常に熱いにもかかわらず、リィーセが火に水をかけて水蒸気を発生させている。
どんどん湿度が上がり、暑くなっていく一方だ。
(なんとかして今の状況をやめさせなければな)
暑さによる身の危険を感じながら、ジノは強く思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます