第8話
「ーージノてっ…………、」
初めて聞く名前。
今、この部屋には3人しかいない。俺、リィーセ、チィーヤだ。
そうすると、ジノって俺のことを言っているのだろう。
こっちの世界にくる際に昔の記憶はなくなっている。
よって、どんな名前だったなんて忘れてしまっている。
だから、俺の名前がジノだったなんて初めて知った。
そう、初めてだ。自称妹であるリィーセは俺の名前について何も言わなかった。一週間くらい同じログハウスの中にいるにもかかわらずだ。
しかも、記憶のない俺に対してお兄様と呼んで兄妹だと思わせようとしてきた。まるで、生まれたばかりの雛鳥に間違った情報を正しい情報だと思わせるように。
あらためて考えると自称妹であるリィーセは一見何も考えてなさそうだが、実はものすごく腹黒い奴なのかもしれない。
(まあ、リィーセの性格についてまた考えるとして、今考えるべきはいきなりきたお客さんであるチィーヤと呼ばれている少女についてだ)
まず、チィーヤの容姿は声が聞こえてきたように落ち着いている印象を受ける。歳は俺と同じぐらいで18前後ぐらいに見える。顔は可愛いというよりもどちらかというと綺麗といったところ。胸はリィーセよりもやや大きいか……。身体もリィーセよりも高いかもしれない。
おそらく、リィーセよりもチィーヤの方が落ち着いて話をすることができそうな気がする。
あとは、最初になんと言うかだが、相手は俺のことを知っている。きっとここに来た用事の内容も俺に対してだろう。そうでなければ、リィーセとあんなやりとりをしないだろう。
するとだ。知り合いとして話を合わせるという手もあるが、チィーヤの落ち着いていて落ち着いって話せそうな雰囲気から、正直に話をした方がいいだろう。リィーセとのやりとりでドアを破壊してしまったということに対して一抹の不安はあるが、それはリィーセと昔因縁があったりしてそのせいであんなことをしてしまったのだと信じたい。
「……すまない。俺は今記憶がなくなってしまっていて……、名前も覚えていないんだ、」
「やはりそうでしたか……、先の大戦で私は悪い魔法使いであるリィーセからあなた様を助けに来たのです」
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