第7話
「お断りします。何も喋らずにお帰りください」
リィーセがドアあたりに着いた足音が聞こえたと思ったらすぐに、リィーセの棘のある声が聞こえて来た。
ドアを開ける音も何か話した様子もないにもかかわらずすぐにそんなことをリィーセは言っている。いったい誰が来ているのだかリィーセはわかっているのだろう。しかも、俺と話をしている時とは全然違う棘のある声。よっぽど嫌いな奴なのかもしれない。
「すみません。とても大事な用事があるので少しお時間をいただけないでしょうか?」
リィーセの声とは違って、落ち着いた声で返事をする客人。
言い方と声音から大人っぽさを感じる。
「やっぱり、怪しいのでお帰りください」
「決してそんなことはございません」
「あのぉ〜、しつこい営業の方はいつもそんな感じで言って嫌な思いをさせられるので、早く黙って……、息をせずにお帰りください」
「営業ではございません」
「さっさと帰ってください。警備隊を呼びますよ」
「帰りません。大事な用事があるので、」
「こっちには用がないので、早く帰ってって言ってるでしょ!」
「いいえ、とても大事な用事があるので帰りません。
それに、そもそも、リィーセになんか用はありません。
私が使えるべき王に会いに来ました」
客人はリィーセの名前を呼んだ。
まだドアを開けて対面した様子はない。
きっと声だけで誰だかわかるほどの見知っている間柄なのだろう。
「何言っているかまったくわかリません。
そもそも、チィーヤはうちには必要ありません。
早くお帰りください。声も聞きたくありません」
リィーセも客人の名前を呼んだ。
やっぱり二人は知り合いだ。
ただ、どうやら険悪な仲らしい。
いったい客人は何をしに来たのか気になる。
などと考えていると……、
「本当はこんなことをしたくありませんが……、仕方がありませんね」
と、客人は不吉なことをつぶやいたと思ったら、
『スゥゥーー…………、バタン、』
と、何かを斬れ味のいいもので斬った音が聞こえてきた。
音の様子から……、あまり考えたくはないが……、おそらく……、ドアだろう。
最初の訪問でドアをいきなり壊しちゃうような人をどう対応すればいいのだろう。
ちゃんとドアを弁償してくれるのかな?
などと考えて考えていると、ブロンズ色の髪の大人っぽい女性が俺がいる部屋に入ってきた。後ろからリィーセが着いてくる。客人の……、チィーヤと呼ばれていたな、チィーヤのことをリィーセは止められなかったもだろう。
チィーヤは嬉しそうな顔をして、
「ジノ様、お久しぶりです」
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