ふたりぼっち

明日野 望

第1話

「なぁ」

「なんでしょう」

「暇」

「そうですか」

「そうですかって。答え雑か」

「そうとしか答えようがないんですけど」

「そこは、一発芸しましょうか!?くらいのノリが欲しい」

「一発芸しましょうか」

「おう」

「寿限無寿限無五劫の擦り切れ」

「それ一発芸かもしれんけどつまらんやつ。分かる。覚えててすごーいってなるだけの奴」

「……じゃあどう言うのを求めてるんですか」

「なんかこう…会場がドッカーンってなる感じのやつがいい」

「会場?」

「吉本新喜劇みたいなのがいい」

「無理です」

「なんでや」

「いや僕そう言うの見ないんで」

「あーそうですかーそうですねー……お前つまんなさそうな本ばっか読んでるもんなぁ……漫画とかないの?」

「ないです。ここ図書室ですし」

「ブラックジャックくらいあるんじゃね?」

「探してみればいいじゃないですか」

「おう」

「………………」

「………………」

「…………見つかりました?」

「……なぁ」

「なんでしょう」

「……よっこいせ。これ何?」

「どれですか」

「これこれ」

「挿し絵ですか?こんなのどこにでもありますよ」

「それくらい分かるわバカにすんな。なにこの絵って。漫画みたいな絵のやつないの?」

「なんで文芸部に入ったんですか……。多分それマンドラゴラですよ」

「静かだし寝やすそうだったしな。で、漫画みたいなやつは?」

「……ありますよ。そっちの棚に」

「…………これか?」

「そっちじゃなくて…いやなんですかその本」

「ヤクザ大全集…?」

「その棚の反対側3段目からライトノベルがあるはず。あとヤクザ大全集ちょっと読みたいです」

「ほん、こんなん好きなの?シャブの密輸ルートとか書いてあったら怖くない?あー…これか。知ってる知ってる。なんかオタクが好きそうなやつな」

「図書室の本でそんな危ない本あるわけないじゃないですか」

「こういうのあれだよね。萌え。萌え萌え」

「…………」

「お前もこう言うの好きなの?」

「…………まぁ」

「ヤバいオタクじゃん。ははっ。なにこの絵えろ。見てみほらエロくない?」

「分かりましたから広げないでくださいよそんなの……」

「えー?なに興奮した?」

「いや別に」

「……ふーん?」

「……………」

「まぁいいや。そろそろ帰ろーぜ。もう暗くなるし」

「……いつも思うんですけど」

「なに?」

「寝たいだけなら帰宅部で良くないですか?」

「そしたらお前ぼっちじゃん」

「……別にいいじゃないですか」

「私も家帰ったらぼっちだし。ふたりぼっちだよふたりぼっち。寂しさ半分楽しさそこそこ。よくない?」

「…………賑やか半分うるさい半分の間違いじゃないんですか?」

「なんだよ悪いかよ」

「いいと思いますよ。帰りましょう」

「おう」

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