第十三章

「お兄ちゃん。」と草原で寝ていると、あの兄弟たちが、そばで座っていた。


少年は、驚いて、起き上がった。

「無事に街に、着いたのか?」と聞くと、「うん。街から街へ連絡が取れるようになっていたの。おばさんたちが、探してくれた。」


妹は、そう言うと、少年の顔を、バシッと叩いた。


痛かった。少年は、「悪かった。ごめん」と、顔をふせて、言った。


「あたし、ずっと一緒に暮らしていて、嬉しかった。楽しかった。このまま、四人で暮らして行きたかった。街に帰って、みんなで仲良く暮らせると、期待して、旅していたんだよ。」


「なのに、あたし達、置いていなくなった。パパとママのように、置いて行った。」泣きながら、妹は、少年の服をひっぱりまくりながら、「薄情者!薄情者!馬鹿野郎!」と、叫ぶのを、兄は、妹を押さえて、引き離した。


「お兄ちゃん。」兄は、涙目になりながら、「僕のせいなんでしょ?」

と、言った。


「な、なんのこと?僕が、悪いんだ。中途半端な行動をしたから。」


「僕、お兄ちゃんに、会いたかったんだ。もっといっぱい遊びたかったんだ。あの森で、花を見た時、思い出したんだ。」と、涙を流しながら

、話をした。


少年は、「僕も、思い出したんだ。僕が、もっと大きかったら、って。一緒にいるのが、苦しくて、戻ってきてしまった。」


「お兄ちゃん。僕は死んだの?」と、きくと、「うん。僕も死んだよ」と、応えた。


兄弟は、話について行けず、戸惑った。


すると、「お前達は、知らなくていいんだよ。気にするなよ」と、兄は、弟たちに言った。


「お兄ちゃんが、ここにいたいなら、いていいよ。お兄ちゃんも、傷ついたでしょ?水色の空に、雲がある。思い出したことに、僕も気がついたよ。」と、言うと、「たまに来ていい?僕もこの草原が、気に入っているんだ」と、弟が、言った。


弟と、妹は、楽しそうに、草原を走りまくった。

いっぱい走った妹たちは、疲れて、草原の上に寝転ぶと、スースー寝息を立てて、寝てしまった。


兄は、少年に、「今、僕らは、保護施設にいるんだ。職員は、厳しくて、僕なんて、よく殴られているよ」と、寂しそうに、語った。


「家には、帰れなかったの?」


「うん。僕らの家は、もう他の人が、住んでいた。」


「僕、この草原で、暮らしたいけど、大人が許してくれないだろう。」


「ここで、暮らしたいの?何もないよ?」と、言うと、「森があるじゃん。お兄ちゃんが、壁を作ってくれたら、僕らここで、暮らせると思うよ。」と。言われると、「ばれていたんだ。」と、気付き、「いいよ。ても、みんな、仕度をしてくるんだよ」と、言うと、兄弟は、急いで、立ち上がると、「ばれないように、仕度してくるから、出入り口作っといてね!」と、妹は、元気に駆け足で、戻って行った。


兄は、「ごめん。わがまま言って。森ができていたから、中にいるんじゃないかと、森をくぐったら、入れたんだ。広い森だね。草原を隠してくれる。妹は、幼稚園が、嫌いなんだ。だから、行かなくて済むことに、魅力を感じて、張り切っているんだ。」

「僕も仕度をしてくるよ」と言うと、兄も走って、入り口をくぐって行った。


兄弟が、走って草原に戻って来た。三人揃うと、少年は、入り口を大きな木で塞いでしまった。


妹は、パンに、野菜に、お菓子をいっばい詰め込み、洋服も、もう一つのバッグの中につめこんでいた」


弟は、おもちゃと、やはり、パンやソーセージや、服をいっばいつめこんでいた。


兄は、洋服に、懐中電灯に、ナイフと、お金を持ってきた。


「お金」は、この世界では、必要なかったけど、念のために、「お金」と言うものも持ってきた。


そして、四人が揃うと、「今度こそ、一緒に暮らすぞ!」妹が言うと、「おう!」と、みなで、腕を上げ、団結した。

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