第四章

太陽を探し出した、四人は、何日歩いたろう、森を見つけた。初めて見た木々で、みな、驚いた。



「これ何?」妹は、驚きまくり、怖がった。兄が、「木」という植物だよ、と、教えた。弟は、ペタペタさわりくり、「この木、いい匂いがする」と、とても満足気だった。


森の中に入っていくと、だんだんと薄暗くなり、四人は、ちょっと怖くなりだした。


そして、「どこまで行ってみる?」と、話出した。


「僕たち、迷子になってないかな?」と、兄が言うと、少年は、「青空は、見えてる。きっと大丈夫だよ。前に進もう」と、言うと、三人も「そうだね。まだ、見つけたばかりの森だもんね。先を行こうよ」と、言うと、四人は、歩き出した。


でも、この森は、ちょっと変だった。草はたくさんあるけど、草原と同じ、花が全くない。動物もいない。昆虫もいない。


少年は、「せめて、大好きなトンボがいればいいのに」と、独り言をこぼすと、しばらく歩いていくと、明るい光が、見えだし、その方向に歩いて行くと、パッと、光が目に入り、四人は、目が痛くて、少し目をつぶった。


そして、やっと目を開けると、そこは、小さな草原になっていて、小さな赤とんぼが、いっぱい飛んでいた。

四人は、びっくりして、そして、とても喜んだ。



「トンボだー!」と、少年が言うと、兄が「これ、トンボって言うの?」と、聞いて来て、妹や弟も、繰り返した。


少年は、「知らなかったの?」と、聞き返すと、「うん。初めて見た。かわいいね」といいながら、三人ともトンボを、追いかけ出した。


少年は、草の上に、横になり、腕を天に上げて、トンボがとまるのを待った。


少年の指にトンボが、一匹とまったころ、兄弟たちは、走り過ぎて、疲れて、横になった。

下から、宙を飛んでいるトンボの群れは、爽快で、四人の心を癒した。


少年は、トンボがいるってことは、どこかに、水があるんだな、と思った。


ずっと不思議だった。草原の土は、雨も降らないのに、いつも湿気っていた。草は、ピンッと真っ直ぐ上に向いていた。


どこかに、水がたまるところがあるんだ。太陽探しより、水探しの方に、気持ちが揺れた。


でも、「ダメダメ、今は、太陽探しが先。水は、探している途中で、見つかるかもしれない。」と、気持ちを入れ換えた。


「今日は、どこで過ごす?」兄が

みんなに聞いた。


少年は、いつもの草原からかな

り歩いた方かな?と、思い、「ここ、青空続いているから、暗くはならないんじゃないかな?この小さな草原で、過ごす?」と、聴くと、「そうだね。あの場所から、結構来たのに、お腹空かないし。きっと続いてるんだよ」と、兄が応え、妹たちも、トンボにはまり、「あたし、トンボ気に入った。もう少し、一緒にいたい」と、応えた。


やっぱり、青空は、暮れなかった。

でも、鳥もいないから、とても静かだった。


あっちの草原、木がないから、鳥がいないかと思ったけど、ここ、全体的にいないのか、と、思った。


みなが、横になり寝ようとした頃、不思議と、「ピピ」と、何かの音がした、少年たちは、びっくりして、起き上がった。


しばらく、みな、だんまりして、緊張していると、また、「ピピ」っと聞こえた。


少年は、ひょっとして小鳥?と、思うと、音は、一斉に、「ピピ」「チュンチュン」「ピーピー」と、響き周り出した。


四人は、びっくりして、怯えたけど、綺麗な音色に、その怖さは、温かさに変わった。


「これ、どうなっているの?何の音?」と、妹が聴くと、「え、知らないの?」と、少年はびっくりして、聞いた。


兄は、「鳥っていう生き物の鳴き声だよ。お前は、初めてだね。」と、いい、少年に、街にはいないことを言った。


「そうなんだ。スズメもカラスもいないの?」


「名前は、わかるんだけど、誰も見たことないよ。」と、応えた。


「街、見てみたいな」と、ポロッと少年は喋ってしまった。


「大丈夫だよ。必ず街はみつかるよ。」と、兄は言った。


しばらくして、四人は、鳥のさえずりに、気持ち良く寝入った。


最初に目が覚めたのは、妹だった。

妹は、唖然として、座り込んだままだった。


どのくらい経ったろう?早かったか、遅かったか、兄が目を覚ますと、兄も絶句してしまった。


急いで、少年と、弟を起こすと、四人は、びっくりしすぎて、それ以上喋れなかった。


小さな草原を、囲んでいる木々の向こうから、ザーザーと、大きな音が聞こえる。白く光るように、キラキラ光が入ってくる。


四人は、ようやく立ち、その方向へゆっくり歩いて行った。


木々の間を、クルクル回りながら、向かって行くと、パッと、視野が広がり、そこは、大きな滝があった。


四人は、その豪快さに、圧倒された。


結構近くだったので、水しぶきが、飛んで来て、涼しい風がフワフワと、包んでくれるんで、気持ちが良かった。


滝のそばまで、できるだけ近づくと、四人は、飛んでくる水しぶきで、結構濡れてしまった。


弟が、「海の水もいいけど、この水もいいね。これ、なんていうの?」と、聞かれ、少年は「滝て言うんだよ。これが、川になるんだ」と、応えた。


「川?川なら街にもあるよ。この水みたいにきれいじゃないけど」と、弟が言うと、


「街の川に通じているかもね。」と、兄は嬉しそうに言った。


「この森、下へ降りれるかな?ひょっとしたら、街があるかも。」と、少年が、言うと、兄が、「探してみよう」と、みなをまとめて、川沿いに降りてみることにした。


川の横の地面は、水をいっぱい含んでいて、とても危険だった。

だから、川から離れたところを歩くことにした。


少年は、街が見れるかもしれないと、疲れも忘れ、夢中で歩いていた。


「クシュん!クシュん!」弟がくしゃみをしだした。


そういえば、自分たちが、滝の水で、びちょぬれになっていたことを、すっかり忘れていた。


兄弟は、それぞれ、バッグを開け、濡れていない服を探して、見つけると、着替えた。


少年は、濡れた上着を脱いだ。


どのくらい歩いたろう?気がつけば、みな、息切れをして、歩く速度もかなり、遅くなっていた。



川の幅も変わらず、空も水色に爽やかに、澄み切っていた。


「僕たち、無駄なことしてるのかな、、」と、弟が、言うと、


「今日、疲れたね。どこか、休むところを探そう」と、兄が、弟の頭を撫でながら、静かに言った。


少年も、疲れていたから、助かった。というより、「そういえば、僕初めて、疲れた、、、」と、今まで全然疲れなかったことに、気づいた。


「あの空や草原から、離れたから、なったのかな?これ以上、離れたくないな」と、思い出した。


少年は、焦った。元々、草原から出る気がなかったから、後悔をしだした。


しかし、今更、その気持ちを口に出すわけにはいかない。自分は、何才かわからないけど、わがままを言えない歳になってるくらいわかる。


四人は、比較的平らで、草も少ない場所を、見つけて、休むことにした。


近くに、服を乾かせる木もあり、「あとは、ご飯だけだね」と、妹が、冗談を言った。冗談というのも妙だけど、僕たちは、お腹が空かなかった。


大きな木の葉っぱを敷き詰め、寝床を作った。


川の音と、小鳥の鳴き声を、聞きながら、四人は、深い眠りに入った。


大きな木々の隙間からは、水色の透き通った空が、眠りを忘れているように、広がっていた。


青い空は、休むことが、あるんだろうか?

そんな思いを抱きながら、少年は眠った。

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