第4話 月からの刺客?
「やっぱり、タイムマシンは実現不可能なのかぁ〜…………」
「何のことだ?」
同窓会の後、関は持田と閉会ギリギリにやってきた、旧友その2の山岸を連れて別の居酒屋へ2次会に来ていた。
結局、秀才内倉を負かすことができなかったこともあり、少々やけ酒も入って、同窓会のときよりも関は顔を紅くしている。
「いや、近代物理学について少々…………」
知的に見せようと、「ふっ」と微笑してそう言いかけると、
「どうしたっ、熱でもあるのか?」
「それとも何か悪いものでも喰ったか?」
ホントに心配しているのか、2人の言葉にはどこか悪意さえ感じる。
自分の友達運のなさにため息をつき、
「いや、実はな………………」
関は、これまでの経緯を2人に語った。
「ほほう、謎の笑う女のホームレスとな?」
「しかも頭いいのに、月から来ただなんて、妄想癖もあるんだ。取材してても、まるで狸か狐にバカされたみたいで気味が悪い」
愚痴るように言う彼に、今度は山岸が興味深そうに、
「でもその話し、もしかしたら、もしかするかもしれないぞ」
『オイオイ……………』
関と持田の2人は、まるで(またか)と言った顔で
学生時代から彼は、超常現象オタクだったのである。さすがに今ではそうでもないが、当時は火星人の存在を信じていたほどであった。
「いやいや、今回はそういったのじゃないんだ。おとぎ話では語られていないけど、かぐや姫ってのは、本来の話しだと月世界の罪人で、流刑で地球に送られて来たらしいぞ」
(やっぱそういったバカ話しじゃん!)
関は心の中でぼやくが、持田は面白がって、
「なるほど。それで罪人のかぐや姫ニコさんは、罰として地球でホームレスになりましたとさ。めでたしめでたし、ってか?」
と続けて笑い出した。関は諦め苦笑いを浮かべつつ、
「と、とにかく、そういったのじゃないんだ」
話しをムリヤリ切り上げようとした。
取材も本気でしていないし、あまり彼女や仕事のことを、ねほりはほり聞かれたくもない。
早く別の話題をと思ったが、2人はニコさんに興味を持ったようで、
「で、どうなのよ?」
「どうって?」
「美人かどうかだよ。決まってんだろ!」
「う〜ん………………、髪の毛がボサボサで顔はよく見えなかったけど、美人の部類に入るだろうな」
「で、それから?」
「それからって………………ああ、そういうことね」
何を聞いているのかと2人を見ると、鼻の下を伸ばしながら、手で胸の膨らみを表現していた。酔っていても、スケベの考えるコトは同じだ。
「まあコート着てたから分からないけど、それなりの体型じゃねぇかな?」
別にニコさんのヌードを見たわけではない。そこは曖昧に答えるが、
「何だよ、分かんねぇのかよ、つまんねぇ!」
「そこが一番大事なトコだろっ!」
「いや、別にファッションモデルを探しているわけじゃないから………」
「何やってんだよ、おまえ記者だろ? 何とか口説き落として脱がせないでどうする」
「そんなんだから、未だに下っ端記者なんだよ」
「……………………」
2人のツッコミに、関はたじろいだ。
男数人集まれば、女の話しで俄然テンションは上がるものだが、どちらも女性に縁がないだけに、エロネタへの喰い付きようがハンパではない。
「次はセクシーショット、撮ってこいよ」
「もう取材、行かないって。新人だからってこの業界、そんなヒマじゃないんだぞ」
ホントは捨て企画を担当させられたほど、仕事場では忙しくもないが、そういったことはあまり認めたくはない。
「とにかくこの話しはもう終わりっ! そんなことよりも山岸、おまえ最近……………」
何とか2人をごまかして、今度こそ話題を変えようとすると、
「ちょっと失礼」
いつからそこにいたのか、関が座っていたカウンター席の、すぐ後ろに立っていた1人の男が声をかけてきた。驚いて振り返り、
「はっ?」
思わず言葉を詰まらせる。その男の発する異様は威圧感がそうさせた。
夜で、しかも室内だというのにサングラスをかけていて、怪しい事この上ない。と、いうよりも不気味であった。
まるでエイリアンか何かに見つめられているような、気味の悪い雰囲気に気圧され、さっきまでの酔いが覚めてしまった。
持田と山岸の2人も、相手に聞こえないように「M○B?」「マト○ックスに出てたミスター何とか」などと、ヒソヒソ囁いている。
「な、何か……………?」
恐る恐る答えるが、何故か落ち着かない。気を利かせてか、やはり男の目に見えない何かに負けてか、隣に座っていた持田は椅子を譲るように立ち、トイレに行くふりをして、山岸と2人で逃げて行った。
男は逃げた持田を特に気にする様子もなく、
「今の話し、もう少し詳しく話してもらえませんか?」
「え?」
「失礼。聞くつもりはなかったのですが、話しておられた、え〜と、ニコさんですか? どうも家出した知人の娘さんと、どことなく特徴が似ていましたものですから、もしやと思いまして、つい聞きいってしまいまして」
「そ、そうですか。それは心配でしょう」
そう言って関は、内心面倒と思いつつ、先日の取材の内容を男に語った。
男も聞き終わると、礼を言ってすぐに店を出て行ったが、関は彼との会話に、妙な違和感を感じていた。
ただ、それが何だったのか、そのときは分からなかった。
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