第三章 新生活は魔法習得の後で(前編)
徐々に意識が覚醒してきていることがわかる。薄ぼんやりとした視界に、知らない天井。そして、金色のフカフカした何か。窓から入ってくる風が頬をなでる。
「あらっ、気がついた?」
天井を見つめていた視界が、青色の瞳に引きつけられる。どうやら同じベッドに座って、俺が目を覚ます様子を見ていたようだ。金色のフカフカは彼女の髪の毛か・・・・・・。
「ああ、気がついた。えっと・・・・・・。それで、ここは?」
「あなたが4回目の勝利で手に入れた、資産に含まれる家よ」
ああ、そりゃあ助かる。転生して一番最初にすることが、屋根のついた部屋を探すなんていうのは、御免被りたいからな。
「そんなことより、窓から外を見てみなさいよ」
リーリアに促され、ベッドから立ち上がり、外の景色を眺めた——
「綺麗だな」
目の前に広がるのは城下町。どうやら街の中でも少し小高い丘にこの家は建っているようだ。木組みの家々が立ち並び、一部の家の煙突からは白い煙が上がっている。住宅街を抜けた先には、キラキラと光る海が見えた。この景色を見るだけで、ここが現代日本でないことはハッキリとわかる。
「そうでしょ。私も綺麗で驚いちゃった」
そう言って俺の隣に立ち、リーリアは風景を眺める。
窓から入ってくる風は、排気ガスとは無縁の透き通ったような空気で、どこか、うっすらと感じる遠くの海の磯の香りと、リーリアの髪のにおいが、なんとも言えない雰囲気を出していた。
「そういえば、鏡を見なさいよ」
促されるまま、寝室に置いてあった立て鏡の前に立つと、服は死んだときのスーツ姿から、おそらくこの世界のモノだろう。そんな服に着替えさせられており、アラサーに近づき衰えつつあった体が、少しだけ若返っていた。そういえば、体を若返らせてくれって頼んだったな。
「前より、男前になったんじゃない」
そういって、俺の顔をのぞき込んでくるのだからたちが悪い
「はは、悪い年の取り方をしてたのかなあ」
思わず、視線をそらしてしまう。困るなあ、女の子は苦手なんだよ。というか、この服に着替えさせたのはもしかしてリーリアなのか?それはちょっと恥ずかしいな・・・・・・。
さて、とりあえず身の回りの情況がわかったところで、ほかの諸々の情況を確認しないといけないな。
「日本語は通じるわ」
リーリアはベッドに腰掛け、俺は椅子に腰をかけながら、この国・・・・・・ひいてはこの世界の情況を聞きはじめた。
「そりゃあよかった。この年になって第二言語を勉強したくないからな。だけどなんで通じるんだ。違う世界なんだろ」
「まあ、それも特典みたいなものかしら、基本的な言葉はすでに学習済みの状態で転生しているの。転生して周りが知らない言葉をしゃべっていてコミュニケーションがとれないなんて情況、絶対にいやでしょ」
あ、でも、といって、顎に指を当てて補足する。
「あなたのいた世界特有の文化やモノについての言語は通じないわ。例えば、この国では魚を生で食べる文化が無いから、刺身とか寿司は通じない」
「基本的なコミュニケーションに問題は無いってことか」
「ええ、そういうことね・・・・・・。ここら辺は手探りになると思うから異文化交流と思って楽しめば良いわ」
「ふむ、じゃあ、俺の今のお金の情況はどうなってるんだ?この家は俺の資産ということはさっき聞いたけど、他にお金はあるのか?一応、資産を持って転生できたはずなんだが」
「ええ、あるわ」
「だいたいどれくらいなんだ。この世界の情況がわからないから、俺がいた元の世界の水準で教えてくれると助かるんだが」
「えーっと、ややこしいことを言うわね。今ある資産の額は500万円ぐらいね。ただ、物価を考慮しないといけないから、そうね、だいたい5,000万円ぐらいの貨幣を持っていると思えばいいわ」
——5,000万円か。確かにしばらくは遊んで暮らせそうだが、その間に仕事を見つけておかないと後々苦しくなってくる額だな。
「この世界の通貨システムはどうなってるんだ?」
「この世界というより、この国でいいかしら?この国では、あなたの世界の財務省みたいなところが、一括して貨幣を管理していて、比較的、貨幣価値は安定しているわ。単位は『メル』で、だいたい1メルが100円くらいの価値ね。そこの金庫に5,000万メルがしまってあるわ」
そういって指さした先には、鉄で出来た箱が置かれている。
「中を見てみて良いか?」
「いいけど、ちょっとまって今のあなたじゃ箱を開けられないから、私が開ける」
そう言って、立ち上がり鉄製の箱に手をかざす。一瞬、薄く光ったかと思うと自動で箱が開いた。
「うお、すごいな」
そこには、紙幣と貨幣がびっしりと詰まっていた。
「まあ、無駄遣いはしないことね。お金がなくなっちゃったら、現状、詰んじゃうんだから」
「肝に銘じておくよ」
収入が安定するまではあまり無駄遣いは出来なさそうだ。
「なあ、リーリア様」
「リアで良いわ。後、様も要らない」
あれだけ頑なに様付けを強要していたリーリアにしては珍しい反応が返ってきた。おまけにムッとした顔をしている。
「だって、私はもうあなたのモノになったのよ。自分の”モノ”に様をつける人なんている?」
ああ、そういえばそうだけど、あの時とはえらくキャラが違うなあ。
「えっと、じゃあ、リア・・・・・・でいいか。うーんなんだか違和感があるなあ、一応、神様なんだろ」
「元・神様ね。もちろん神様が持っていた固有の能力とか知識はほとんどそのままだけど、基本的な人権——ならぬ、神権は停止されたわ」
なんかいろいろと大変そうだな。
「そして、神の元で行われた賭博での約束は絶対。だから私はあなたのモノなのよ」
モノ・・・・・・か。人いや神か・・・・・・。細かいことはどうでもいいが、人の形をしているのにモノ扱いするのはちょっと抵抗があるな。
「だ、だから、私はなたの命令に逆らうことが出来ないの。私を好きにして良いのよ・・・・・・。わ、私はあなたのモノなんだから。そうね、例えば——」
そう言うと、ベットから立ち上がり、スカートの裾を両手でつかんだ。
「リア・・・・・・。いったい何を」
掴んだスカートの裾を自らの手でジワジワとたくし上げ始める、その顔は紅潮し、視線は恥ずかしそうに斜めを向いている。いやー困る。そういうの困るよ。いや、女性経験が無いかと言われれば嘘になるんだけど、一度こっぴどい失敗をしてから、そういうの避けてたんだよなあ。そうか、あのとき「大切にしてくれる?」って聞いてきたのはそういうことだったのか。周りの状況にほだされて、どんな意味で言っているのか全く理解していなかった。
そう言っている間に、徐々に手の位置が上がり続け、膝を超えたかと思うと、白くてすべすべとした、綺麗な太ももが露出する。駄目だ、これ以上は駄目だ。
「お、おいそれ以上はもうやめろ。やめてくれ」
言葉を発するとリアはぴたりと動きを止め、そのままベッドに座り込んだ。その表情はどこか悲しげで、どこか満足げな顔をしていた。
その様子を見届けると、俺は自己嫌悪に見舞われた。
こんな形でリアを連れてきてしまったけど、よく考えたら非常にマズいことをしてしまったんじゃないか?神権が停止されたとも言ってたし、俺は神様の一生を大きく狂わせてしまったんじゃないか? 少なくとも、こんな場所で過ごすよりはよっぽど良い生活が出来ていたんじゃないのか?
俺は大きな罪を犯してしまったんじゃ無いのか?
「あなた、もしかして後悔してる?」
「あ・・・・・・。」
思わず、声が出てしまった。
「私みたいなのを連れてきたこと、後悔してる?」
「いや、そういうことはない、むしろ分からないこととかを教えてもらえてるし、凄く助かってる」
「じゃあ、なんでそんな悲しそうな顔をしてるの?」
「いや、一緒にギャンブルをしようって言って、連れてきちゃったけど、そもそも俺がそこまで責任をとれるのか、少し不安になって。しかも神様だったろ。何より、俺のモノになって、何でも言うことを聞かなければいけないなんて、そんなの——」
まるで呪いじゃないか。神の名の下で行われた、自らの手で自らを呪う————
「大丈夫よ」
不安をかき消してくれるような、安堵に満ちた声が返ってきた。
「あなたなら、大丈夫よ。神様の仕事はもう辞めたかったし、これからあなたと一緒に新しい生活が出来れば良い。それで私は十分に幸せ。なんせ、私に5回もギャンブルで勝った男のモノになれるんだからね」
「しかも!! あなたは、例え私に命令を下せたとしても、変な命令なんてしないでしょ?あれだけ誘っても、全くなびかないのだから。勝負の時、あなたは私を大切にすると言ってくれた。私はそんなあなたのモノになれて、十分に幸せよ」
万遍の笑顔で言われてしまった。神様殺しの笑顔だな畜生。正直、その容姿と仕草がドストライクなんだよ。金髪・碧眼・決して無いわけでは無い慎ましやかな胸・白くてフリフリがついた服装、あーもう、神かよ、あ、元神様だったか。
「ちょっと水を飲んでくる」
その場を離れた。そうでも言っていないと、正気を保てる自信が無かったからだ。
台所に行ってグラスをとる。蛇口のような装置はあるが、使い方がわからない。ひねる部分が無く。手を蛇口の下にかざしても出てこない。まさに異世界の文明という奴だ。この文明の違いについては、あとでリアに指南を仰がなければいけない。幸い、机の上にピッチャーがあったので、グラスに水を注ぐ。軟水なのか硬水なのかを一瞬考えたが、そんなことよりも今はとにかく水を飲みたい気分だった。
2杯目の水を飲む頃には、気分が落ち着き、キッチンの情況が少し分かるようになってきた。当然、ガスコンロは無いし電子レンジも無い。かまどのような器具が置かれているから、ここで加熱処理をするのだろう。他にもいくつか見慣れない箱状の調理器具が置かれているが、使い方が分からない。謎の蛇口の近くには包丁が置かれていたので、このあたりの文化に違いは無いのだろう。グラスを取り出した棚も今まで使ってきた棚を相違ない。
「なんというか、馴染むのに結構時間がかかるかもしれないな」
独り言が漏れていた。
「ふう・・・・・・」
一度、我が家全体を歩いて回り、部屋の間取りや、家具の類いを見て回った。問題点は、寝室がさっきまで寝ていた一室しかないということぐらいで、キッチンはダイニングキッチンのようになっているし、手狭だが二部屋の空き部屋があった。
寝室に戻ると、リアは窓の外から風景を眺めている様子だった。どこか物憂げな表情をしていて、さっきまの様子はどこへやら、その様子は掴むと砕けてしまいそうな、可憐さがあった。
「あら、戻ってきたの?」
「ああ、ついでに家の中を見てきた」
「そう、寝室がここしか無いのよね。どうしようかしら」
「まあ、そこら辺は追々考えよう。とりあえず俺は床で寝るから」
「モノがベッドで寝て、主人が床で寝るなんて、ちょっとおかしい気がするけど」
なんだか、冷たい目線を向けられてしまう。こいつもしかして、さっきの誘惑にのらなかったことに怒っているのか?いや、それは自意識過剰か。
とにかく、まずい、強引に話しを変えなければ。
「そ、そうだ、そういえば、まだこの街の様子を見ていない。一緒に買い物にいこうぜ、やっぱり街を見てみないとわからないことはたくさんあるからな」
「あら、私も一緒なのね。良いわ、せっかく私という有能なサポーターを手に入れたんだから、上手に使って頂戴」
「はは、いうなあ・・・・・・」
少女は微笑んでいた。
家を出て街道に入る。家のほとんど木とレンガで出来ていて、とても情緒がある。街の市場は賑わいを見せており、見たことが無い食べ物が目につく。なれてしまえば平気になるのだろうか。
人々は皆、元の世界の人間とほとんど変わらない。違うのは、服装と人種だろうか?動物と人の愛の子のような人種、これがリアの行っていた亜人なのだろう。
「あ、ねえ、あそこでアイスクリームが売ってるから一緒に食べない?」
返事を聞く前に、彼女は露天にかけていった。まったく、大人びているのか、それとも見た目通り子どもなのかさっぱりわからない。
近場の噴水の隅に腰を下ろし、リアが戻ってくるのを待つ。
「はい、これあなたの分ね」
そういって、手渡されたのは、ホームランバーのようなアイスクリームだった。なんらかの生乳があるということは、畜産の技術があるのだろう。また、棒の持ち手がただの木の棒ではないから、何らかの加工技術も発展しているのかもしれない。
ああ、こんなことを考え込むよりも、さっさとリアに聞いた方が早い。
アイスを美味しそうにほおばる少女に向かって、無粋な質問を投げつけるのはいささか気が引けるが・・・・・・。
「なあ、アイスが作れるっていうことは、この世界に畜産の技術はあるのか」
「ええ、あるわ。今は街の真ん中にいるからわからないけれど、街の外に出た郊外には畜産場があって、そこで牧畜が管理されているの。もちろん、自分の家で飼っている人もいるわ」
「へえ、なるほど」
じゃあ、少なくとも食料の供給に困るということは無いわけか。
「畜産があるということは、農業技術も比較的発展してるんだろ?何が作られてるんだ?」
「そうね、この地方は年中温暖な気候に恵まれているから、トウモロコシみたいなもの、それから麦みたいなものね。さっき売っていたのに気がつかなかったかもしれないけれど、あなたの世界で言う所のパンみたいなものが売っているわ」
”みたいなもの”が気になるが、こちらも問題なさそうだな。米が恋しくなりそうだが。
アイスクリームにかぶりつき、残りをすべて口に放り込む。お世辞抜きに美味しい。旅行先で食べるものは何でも美味いんだよなあ・・・・・・。ってこれから俺はここに住むんだったか。
アイスを食べ終え、いつもの癖で当たりの印字が無いかを確認してしまう。すると、あることに気がついた。
「なあ、このアイスの棒なんだけど、結構綺麗に作られてるじゃ無いか?そんなに科学技術は発展していないって話だったけど、どういう仕組みなんだ」
「ああ、それは魔法ね」
リアは何気ない様子で答える。
「あなたの世界で、電気によって行われていたことのほとんどは魔法で行われているの。たとえば、今日見たかまど『火をつけるの面倒くさい』って思わなかった?」
「そうそう、思った。使い方が分からないから困ってたんだよ」
相変わらず、リアの人を観察する力は凄いな。
「平たく言っちゃうとマッチみたいなものなんだけどね。特定のものに魔法的役割を持たせたアイテムがあって、たとえば、かまどに関しては、魔力を注入することで自然に発火するの」
「火の魔法みたいなものか」
「わかりやすく言ってしまえばそう。ほかにも、多分この綺麗なアイスの棒は水の魔法か風の魔法で効率よく断裁したんじゃないかしら。すでに魔法は生活にとって切っては切れないものになっているの」
「俺も、かまどに対して魔力を注入とかできるのか?」
「ええ、少しだけ訓練をすれば可能になるわ。この世界で一番最初に学ぶのは言葉。その次は魔法の使い方ですもの。もっとも、魔力の注入に関しては、教わる前から自然に身につけてる人が多いけどね。そして、生活に関わる製品に関しては特に魔法の扱いに長けた人が製造に携わっていて、少ない魔力を着火点として、連続した魔法を組み立てることで、効率の良いエネルギーを使えるようになっているの。だから、安心して」
そう言って、アイスの最後の一口をほおばった。
「ただ、そうなっちゃうと必然的に電気の役割っていうのが下がってるのよね。あなたのいた世界は電気がまず生活の基盤だったじゃない? もちろん、この世界でも電気を使う魔法はあるんだけど、発電とか蓄電とかそういうレベルには達していないわ。暗くなったときのランプも魔法で動くしね。ま、使い慣れた方に発展したって形かしら」
「ちなみにリアも魔法は使えるのか?」
「ほら、さっき金庫を開けたじゃ無い?あれも魔法よ。魔力を注入する際に、固有の魔力振動があることから、ああやって認証にも使われてるのよ。後は扉を開くためのエネルギーとか」
なるほど。そのレベルまで発展しているのか。
しかし、実際に魔法っぽい魔法を目の前で見ていない以上、にわかには信じられない部分もある。
「もう少し分かりやすい魔法を見せてくれないか?」
「たとえば、そうねこうよ——」
手に持っていたアイスの棒を目の前に持ってくる。
「3,2,1、えいっ」
次の瞬間、棒が発火した。リアはそれを地面に落とすと、棒は瞬く間の間に燃え尽きた。
「まあ、こんなところかしら」
いや、すごいなこれ、俺のいた世界でやったら一躍有名人になれるぞ。
「なるほど、これぐらいのレベルは皆が使えるってことなのか」
「いいえ、違うわ」
予想に反する答えが返ってくる。
「言ったじゃ無い、ほとんどの製品はは魔力を注入するだけで動作するの。もしも火を起こす魔法を皆が使えるなら、わざわざ、かまどにそんな機構を設ける必要はないでしょ?」
「ああ、なるほど、たしかに」
「これぐらいの火の魔法は下の上くらいかしら、それでも適正がない人には出来ないわよ。私はなんていったって、元神様だから。上級の魔法もお茶の子さいさいよ」
褒めなさいって顔をされてしまった。
「これは凄いな。なんというか、いざ目の前で見せられると結構驚く」
「そうでしょう、すごいんだから。フフンってあふ・・・・・・」
気がついたら、頭をぽんぽんと叩いていた。
「なんだか馬鹿にされてる気がするぅ・・・・・・」
あれ、ばれちゃったか。
「ああ、そうだ、この魔法って使うと何か減るのか?MPみたいなの」
「MPってゲームじゃないんだから」
頭に当てていた手を少女は膝の上に誘導した。
「うーん、基本的に魔法には適正があるって話はしたわよね」
聞いた気がする。
「えっと、質問に答えると、まずMPの概念は無いわね。魔力は空気中に浮遊していて、私たちはそれを体に取り込んで放出したり、それを一部の箇所に集中・定着させたりするの」
「じゃあ、魔力はほぼ無限ってわけか」
「そう、ただ、魔力を体内に取り込む、体外に放出する過程で、肉体的疲労が発生するの。だから、使い続けられるものじゃないし、これが平気な人は適正が高いってわけ」
「ああ、じゃあ体内に大量の魔力を取り込めたり、一度に大量の魔力を放出できる人は、強力な魔法が使えるわけか」
「そう、そういうことよ。ただ、もちろんそれだけじゃ無くて、さっきみたいに魔法を発動させるためには、魔力をイメージした術式に併せて放出する必要があるの。それが苦手という人もいるわ」
なるほど、いわば魔力は電気みたいなものでこの世界には無くてはならない存在になっているんだな。そして、有識者が誰にでも複雑な魔法を実行できるようにした製品が販売されていて、それが一般の生活にも普及していると。
「そういえば、キッチンの変な蛇口みたいな奴も、魔力を注入すれば動くってことか?」
「そう、ご名答。しばらくの間はあなたが困ると思ってピッチャーに入れておいて正解だったようね」
全く、気が利くやつだ。素直にありがたい。
「なあ、後で俺にも魔法の訓練をさせてくれよ。さすがにこれは生活に困りそうだ」
「ええ、もちろん、私に任せなさい」
胸を張った少女を目の当たりにして、俺はどこか安心感を覚えた。とりあえず、この世界の生活にも馴染んでいけそうだなと。
異世界に転生してスロットカジノを経営したら儲かり過ぎてヤバイ ななくさ なずな @nanakusa_nazuna
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