メンマって結構おいしいよね!:お宝さがしゲーム編さん
パリーンッ。
窓ガラスが、割られて飛び出てジャジャジャジャーン。
「仲良しごっこはそこまでだ!見つけたぞ私達の勝利じょうけーん‼」
いいところで誰かが声をはさませた。
窓ガラスを割って、そのまま俺の方へ飛んでくる女子はポニテ先輩のいつ抜いたのかわからない刀で一閃されていた。
「「……………………」」
顔を見合わせて唾を呑み込む俺達二人。
「理由はいる?」
鞘に刃物をおさめながら振り返る彼女。
ぶんぶん首を振って答えることしかできないか弱い後輩柏桐弘幸とその他一名。
俺だったら逃げ回った挙句曲がり角で不意打ちぐらいしかできない。このままあの戦力が他のチームに回ったら厄介だ。
俺は自分の探求心を心の牢獄に閉じ込める。
「今日一日お願いします…………」
行動を共にしている吾壌チームと王女様チームは図書館への道のりを歩いていた。あっちのチームは最初はすることがないとか言って、俺達に合わせてくれた。
「しかっしホントに広いですね。遠すぎやしませんか?」
「筋トレだと思え。私は毎日の鍛錬を欠かさんぞ?」
さすがに筋トレはしてるのか。刀をあんだけ振り回せるんだあたりまえか。
「そーいえば、えーとポニテ先輩は部活とかには入らないんですか?」
「もしかしてポニテって私のこと?」
指さし確認絶対の先輩。
「まあポニテですから」
「え?普通刀とかに目いかない?まさかの着地点が髪型⁉」
「はあでも…………そのポニテ可愛いし」
ギラっと目線が刺さる。ちくちくするますよ女王様。
「え、え⁉ホント?じゃなくてポニテってそんなに珍しい?」
「何言ってるんです。……………前の学校じゃ見たことないですよ!絶滅危惧種認定ですよ愛される対象ですよ‼」
「そ、そう。なのね」
目線が抜け落ちたので後ろに首を動かすと、千宮詩先輩が長い髪を後ろにまとめあげていらっしゃった。
「…………何してるんですか」
「…………戦闘のじゃまかなあって」
「アンタ髪くくらなくても凄かったじゃん!」
なぜだかあせあせしている。歯医者さんに行きたくない小学生か!あ、べつに俺怖くなかったけどな?いや、ホントだよ?
「べ、別にいいじゃない。人の勝手でしょう!」
はあ?なめてんのか特に女子の大半!
「俺昔から思ってたんですけど…………なんで女子って、お友達と一緒の髪型にしたーいキャーン。みたいな感じなのん⁉自分をもてよ自分をよお‼」
『……………』
「わ、わかったけど………そんなに怒鳴らなくても………」
え?なんでちょっと涙目⁉こんな数秒の言い合いで?俺が悪かったから!うまい棒あげるから!ベビースターで三人の視線から守って!あ、ダメだ通り抜けるぅ。
「ちょ、ちょっと先輩?心配しなくてもそのロングの髪型俺は好きですよ⁉俺、短髪よりロングだしぃ!アハ、アハハハハハハ」
「本当に………?」
その上目遣いやめてえ、ドキッとするからドキッと。
「じゃあ、私わたくしの髪型は嫌いと………そういうことですか?」
え?なんでマゾ先輩まで⁉俺どんだけフォローすればいいんだよ。柏桐フォロユキになった覚えねーんだけど!
「そ、そういうことを言っているわけではなく――――うお!」
試験管が空中をまっていた。
まっていたそれは、俺達の視界に入った途端割れて中に入っていた液体が散々に飛び散る。嫌な予感がしたのかが寸でのところで後ろにひいた俺達が見たものは、割るために用いられたであろう吹き矢の矢に液体がかかり溶け始めているところ。
「王水か!」
橙赤色の液体を見て叫ぶ帯刀ポニテ先輩。
「王水?科学とか意味わからないんですよ俺!」
吾壌が後に続けて、
「王水ってのは、濃塩酸と濃硝酸とを三:一の体積比で混合してできる物質のこと。劇物よ!通常の酸でも溶けない金や白金でも溶かすヤツ!」
「その心は⁉」
「触れたら最後、ゲームオーバーってこと‼」
吾壌が豆知識を披露しているうちに決着はついていた。
マゾ先輩が近くにあった花瓶を、高校球児顔負けの剛速球で発射元を攻撃。
ストライクを取られた相手選手は白目むいてのびている。くわばらくわばら。
「やりすぎでしょこれ………てか王水?の片づけどうすんの?いやだよ、俺触るの」
「適任者がいるから安心して」
そう言いポニテ先輩はポケットからケータイを出して発信しだした。
「あっ矢部?悪いんだけどちょっと来てくれない?うん?いやいつもの処理じゃなくて、ただの劇物の回収。うん。うん。そうそう。じゃ、場所は図書室前。うん。そうじゃよろしくね」
なに、いつもの処理って。女王様を狙う奴の闇討ちかなんかしてんの?どんまい一年生。お前らには無理らしいぞ。もちろん俺にでもだが。
「さ、行きましょう。図書室だったわよね?」
「はい」
図書室には他の生徒が見てとれたが戦闘の意思はなさそうだ。席に座り本を読んでいる。
人がいないところに行き、管理人さんから言われた通り電話をすることにした。
数回のコール後繋がったケータイにむけて現在状況を報告する。
「あの、管理人さん?柏桐です。図書室に着きました。どうぞー」
『あ、かしぇきりさんでしゅか?(ズルズルズルズル)どうりょおー』
「……………あのちょっと?管理人さん?なんかズルズルいってんですけど。なにしてるんですか?どうぞー」
『いやなんでもないりぇすよ。どうぞー』
「いや、絶対なんか食ってるよね⁉もぐもぐしてるよね、なんかそば的なもの食ってるよね⁉どうぞー」
『残念ラーメンでした!あ、おばちゃん、私もうちょっとメンマ多くしてくれない?あ、で図書室に着いたって?どうぞー』
おばちゃんて。なにナチュラルにメンマ要求してるのん?
「どうぞーじゃねえええええええ!どっちでもいいんだよそんなこと!なにしてんすかてかどこいるんですか!アイツは?にっくきイケメンのあの野郎は⁉どうぞー」
『ああ、あれですよ。なんか腹減ったとか言って学食に行ってご飯たべてるんで、私も朝ごはんたべようかなーって、朝ごはん食べてないんですよ。どうぞー』
「…………そうですか。それで防具は?どうすればいいんですか?どうぞー」
管理人さんは、はいはいと区切ってから、
『ではまずカウンターの中に入ってから机に向かってください』
言われた通り中に入り、奥に置いてある机のところへ行く。残りの四人はそれぞれ本を取りに行っていた。さっきのやり取りが原因で。あ、もちろん読書中の方たちからは気づいたら冷ややかな目線で見られてました。
「きましたよ」
『では(ズルズルズル)その机の引き出しにLaLaがあると思うので、出して開いてください』
ホントにあるし。夏目友人帳が表紙の分厚い月刊雑誌を机の上に置きページを開く。へー管理人さんマンガとか読むんだ。
「それから?」
『はい、真ん中あたりのページから、真ん中が切り取られていると思うんですが、その中に入っている箱に五四五三と打ち込んで下さい』
パラパラとめくっていると、あった。箱の側面に電子板みたいな物が四つあり、左からタップしていく。触るごとに数字が上がっていく仕組みらしい。五四五三といれおわるとガチャッと音がする。開くと中から一つのカギが現れた。
「あの、カギが出てきたんですけど」
『はい、ではそれらは元の場所に戻してカギだけもって図書室の右奥に行ってください』
マンガは読まずにかたずけてカウンターを出る。右奥には辞典コーナーと書かれた紙がぶら下がっていた。
「つきましたよ?」
『じゃあ壁にコンセントがあると思いますので、それを取り外してください』
ガチャっと意外にあっさり取り外せたと思ったら鍵穴が見えた。
『鍵穴があると思うのでさっきのカギを指して中に入り、右の扉の中に入ってください』
ガチャッ。現れたドアノブを回し中に入る。左右両方にある扉を確認し右へと足を踏み入れる。
そこには三十を超える引き出しが縦横に壁の中に埋め込んである。気を見計らって管理人さんは声を小さくする。
『たくさん引き出しがあるとは思いますがその中から『よーふく』と書いてある引き出しを見つけてください。その中に防具はあります』
中は暗くて到底文字なんてみることができない。ケータイをだし明かりにする。
よーふくよーふく…………………あった!『よーふく』と書かれた引き出しを見つけると俺は躊躇なくそれを手前に引いた。
そして中にあったもの。
その中に鎮座していたもの。
それは―――――――――――――――――――
ラブなコメディーって案外すごく難しい 許原しらす @sirasu803
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