Chapter2

Side御園

その誕生祭で俺は翡翠癒凪にアプローチをした。

そして、そのアプローチが利いたのかは定かではないけれど翡翠癒凪はその数日後も俺と密会を繰り返してくれてた。

密会になるのは仕方がない、翡翠家は今日本ではかなり権力のある家だ。

そんなところの一人娘を簡単に他人に会わせるわけがない。


もっと俺の家にも権力があれば俺が結婚相手に選ばれていた可能性もあるのかもしれなかったけど、そんなことこの世がひっくり返ってもない。

だからこそ、俺は必死にアプローチをしてた。

せめて、交友関係だけは持っていたかったから。

この想いが叶うわけないそんなことはわかっている。

この恋はかなわないんだ。


決して、翡翠癒凪が会ってくれているのも、俺自身を気に入られているからではない。そんな自惚れはしない。


あの誕生祭の会場では俺が一番年が近くて、近寄りやすかったから。

ただ、それだけ。

そんなことは理解している―――――。




それから数カ月後、翡翠癒凪…、いや癒凪のお父さんから全国民に向けてお話があった。内容は勿論、全国民のほとんどが気になっている癒凪の結婚相手について。

少しのヒントだそうだ。

俺はその話が展開されていくのが嫌になっていっていた。

だって、俺は癒凪が好きなんだ…、その人の結婚の話なんて聞きたくない、当たり前だと思う。


やっぱり結婚相手は『有力財閥』の『ご子息様』だった。


やっぱり俺なんか比じゃない相手だ。

俺は癒凪とそのお相手様の物語のモブに過ぎない。

ただ、存在しているだけの存在。


『何で俺じゃないんだろう』『嫌だ』『俺の方が幸せにさせられるはず』


こんな感情ばかりが沸いてきた。すべて俺にとって初めての感情。

嫉妬?独占欲?どうともとれるようなマイナスの感情。


癒凪のお相手様は『将来有望』な『有力財閥家』の『長男様』

嫌だ…。


俺なんかが勝てる相手じゃない、そんなの分かってる。

俺は最近ようやく目にした、まだ話して間もない相手に一目惚れをした。

一時の感情と言われれば納得のいくような日数しか経っていない。

でも、俺はこれから先もずっと、今よりも狂ったように癒凪を好きになる、そんな気がする。

結婚式までに癒凪の心をこっちに向けれればいい。

少しだけでも。俺はただの交友関係を持った友人じゃやっぱり嫌だ。


俺は、狂おしいぐらいに癒凪を愛している。

今も、これからも。

だから、癒凪のためなら何を犠牲にしてもいい。そう思えた。


結婚式まであと5カ月。まだ時間はある。実行しよう。

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