ツンデレエクスタシー
いいか、皆。僕はこれだけは伝えておきたいことがある。
ツンデレを、決して舐めるな。
時として人は、好意を抱く人間に対して素直な気持ち通りに動くことが出来ないことがあり、それどころか本当の気持ちとは真逆の言動をとってしまうことも多々ある。これは人間に課せられた業とも言える本能レベルでの行動であると予測され、一度こうなってしまったからには、人はそれに抗うことなど出来はしない。
しかし、ではその行為や態度が招く結果が最悪なものばかりであるのかというと、もちろんそんなことはない。
言うまでもなく、その真逆の言動こそがツンデレの起点となるからだ。
ここから学べること、それは、人間にはピンチを逆境にしてチャンスへと繋げる大きな力があるということ。ツンデレとは、正に人の秘めたる大きな可能性の具現化なのだ。
ただ、何度も言っているように、いくらツンデレが最高の存在であると言えども、その扱い方は非常に難しく繊細だ。少しでも誤れば、ピンチはさらなるピンチを招き、取り返しのつかないこととなる。
ハイリスクハイリターンな属性、それこそがツンデレ。
今あなたの近くに、ツンとした態度を取る異性はいないだろうか。もしかしたら、その彼・彼女は、ツンデレの初期段階であるのかもしれない。そうであるなら、あなたはその兆候を決して見逃してはいけない。絶滅危惧種を取り扱うように、慎重に、大事に、丁寧に見守りながら、その花を咲かせよう。大丈夫、怖がることはない。その先にあるのは、輝かしい未来なのだから。
なに、見極めるのが難しいだって? 何を寝ぼけたことを言っているんだ。そんなの当たり前じゃないか。
ツンデレとは、簡単に人にバレるようなものではない。もちろん僕みたいな玄人が対象であるならば話は別だが、普通の人ならば、八割の時期で見切りをつけてしまうことさえあるだろう。それはあまりにも勿体ないことだ。
大事なのは、じっくりとその時を待つこと。機を焦るな、必ずその時は来る。それまでは、相手が頑張って見せてくるツンに、微笑ましく対応しておけばいい。
ツンデレはまだまだ奥が深い。玄人とは言ったが、僕なんかよりまだツンデレ愛が上の人など沢山いることだろう。それでも、その奥底に辿り着けた人はいないはずた。いつか皆が、いや、世界中の人がツンデレの真のよさを理解できる日を信じて、今日も研究に勤しむことにしよう。
まったく、ツンデレは飽きないな。
ツンデレ万歳。ツンデレ最高。
ツンデレエクスタシー!
ハハハハハハ!
「……お兄ちゃん、何パソコンに向かって一人で話してるの? キモいんだけど」
おお、これはこれは、我が妹じゃないか。そういえば、彼女も最近ツンデレの兆しが見栄隠れする一人である。兄に対して冷たい態度を取る時期はどんな妹にもあるようだが、僕にはちゃんとその奥に潜む兄への敬意が見えているぞ。
さあ、そろそろいいんじゃないか。
妹よ、今こそ兄にデレる時だ!
「私今から部屋でテスト勉強するから、絶対邪魔しないでよね。お兄ちゃんの声、本当にうるさいから」
……。
……なるほど。
僕には伝わったぞ、妹よ。
さては、反抗期ってやつだな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます