ツンデレフォーエバー
あれから一週間。
未だに、彼女のデレの時期が来ない。
おかしい、おかしいぞこれは。既に僕は充分彼女のツンを見ることが出来た。わざわざ彼氏がいるという嘘までを伝えてきたくらいだ、過去最高のツンだとも言えよう。
にも関わらずだ。どうして彼女はデレてこない?
もしかしたらあの言葉は本物だったのかもしれないという考えが脳裏を過り、僕は頭を振る。そんなことがあるわけがない。ならば、彼女の今までの態度はなんだ? 時にツンとした言動を取りながらも、ちゃんと頃合いを見計らったかのようにたまにデレと呼ぶに相応しい姿を見せてくれた、今までの彼女は一体何だったんだ?
なに、僕の勘違いだって? はん、それこそ馬鹿なことだ。
ツンデレには、真にそれを極めたものにしか分からない美学があり、いわゆる『属性』として最高の存在であるとも言える。それを長年に渡って研究し続け、遂に辿り着くことが出来た至高の女性こそが、彼女なのである。そんな彼女が、この期に及んでツンデレを解除するわけなどありはしない!
僕に向けられた全ての言葉・行動・視線・態度をツンであると捉えるならば、これから先に待ち受けるのは大きなデレ! 八割が長ければ長いほど、二割のデレもそれだけ強力になる!
ただ、先にも言った通り、ツンの時期が長いということは、それだけ対象にきつく当たらなければいけないということであり、つまりは双方にダメージを伴う諸刃の剣とも言える行為へと成りかねない。その辛さに、対象が逃げ出してしまうこともあれば、ツンを見せる自分自身が耐えきれずに泣き出してしまうこともあることだろう。
だが、僕にはそんな心配など皆無である。相手がツンデレであると分かっていて、どうして逃げ出したり出来ようか。未来の幸福のために今を堪え忍ぶことなど、人生においてはむしろ基本的なことだ。それさえ分かっていない野郎に、ツンデレを愛する資格などない!
そしてそれは、彼女自信にも言えることである。僕が見る限り、彼女はツンデレのプロだ。相手が本気で傷ついたり、泣かせてしまうような言動を越えることなく、一線を保ちながらツンを貫いている。並みの女性が出来ることではない。だからこそ、僕は彼女にこんなにも陶酔しているわけだ。
素晴らしきかな、ツンとデレ。
ツンデレ最高。ツンデレ万歳。
ツンデレフォーエバー!
イヤッホオオオオオオ!
「……アンタ、また一人で何かやってんの。気持ち悪いから本気で止めなさいよ」
ほう、そんなことを考えていたら彼女が来てしまった。いかんいかん、気持ちを切り替えなければ。
なんせ、これから僕には、最大級のデレが待っているのだからな。それなりの誠意を持って受けなければ、彼女にも失礼だ。
さあ、どんと来い!
今こそ、大いにデレる時だ!
「あ、悪いけど、今日の放課後の掃除当番代わってくれる? 彼氏とデートがあるの」
……。
……なるほど。
僕にはちゃんと理解出来るぞ。
今回のツンは、まだまだ続くわけだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます