6 最終列車

小さな駅の二番ホームに

一両だけのディーゼルカーが

ひとりぽっちのお客を乗せて

まだかまだかと発車を待っていた


カラカラという乾いたエンジン音と

虫の鳴き声だけがあたりにこだまして

それはさながら異界の入口のように思えた



本当に街まで行ってしまうの

私を置いて

何もこんな 最終列車じゃなくっても


明日も明後日も 来月も来年も

いくらでも列車は来るじゃない


最後まで振り返らないあなたを

この町でいつまでも待っていると

そう私は言ったけれど

全ては叶わない事でした


ありがとう 小さな駅

さようなら 愛すべき人

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