第3話「雪の白をこの手に」

 雪の白をこの手に。

 雪の白をこの手に。

 新雪の誰の手も触れられていない、実にすばらしき白。

 言葉で遊ぶ詩人のおもちゃ。

 雪の白をこの手に。

 ちらちらと降る美しい白。

 深い紺色の空に描きつける白い絵の具。

 名も無き白。

 雲のかけら。

 街を寝かしつける子守歌。

 しんしんといつまでも続く白。

 雪の白をこの手に。

 白い雪よ。

 街を染めよ。

 この冬に灯りがともるために。

 冷たさが、寒さが、人を集わせる。

 この雪は魔法。

 人は灯りに集い暖を取る。

 雪の白をこの手に。

 まるで子供のように手を伸ばし、触れること叶わぬ白よ。

 冬の良き日に人と人が集うために降れ。

 雪の白をこの手に。

 雪の白をこの手に。

 今宵の奇跡に。

 実にすばらしき白を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る