第2話 恐怖とゴブリンLv3


この世界はゲームの世界であり、キャラクターを操っている人が現実世界にいるようだ。


ミウというキャラクターを操っている人は、僕をおかしな奴だと思い、現実世界へ帰ったのだろう。


確かにどう考えても、この世界において僕は変な奴だ。


人に避けられるということは、現実世界で充分慣れたと思っていたが…。


やはり、きついものだ。


ポツンと一人、僕は街外れに立っていた。


相変わらず夢は覚めない。


いや、もはやこれは夢ではないのかもしれない。


僕は、怖くもなったが少しワクワクもし始めていた。


だって、こんな体験は現実にいたらできやしないのだ。


憧れていた『剣と魔法の世界』が、ここにはあるのかもしれない。


僕は、一人街を出た。


冒険してみようと思ったのだ。


門の所には兵士がいた。


「あの…」と話しかけてみると「ここから北西に行った所に、村がある。だけど魔物がいるから気をつけて」と言った。


もう一度話しかけてみた。


「ここから北西に行った所に、村がある。だけど魔物がいるから気をつけて」


一言一句違わず、同じ答えが返ってきた。


どうやら北西に村があるらしい。


ひとまず、村を目指してみようと思った。


街を出てすぐ、魔物が現れた。


「ゴブリンLv3」と表示されている。


棍棒を片手に、襲いかかってきた。


はじめての戦いだ。


ゴブリンの攻撃を避ける僕。


すかさず反撃を仕掛ける僕。


勿論武器はないので、素手だ。


僕の攻撃を盾でガードしたゴブリン。


ガードされた僕はそのままゴブリンの一撃を食らってしまう。


思い切り飛ばされる僕。


どうやらクリティカルヒットしたらしい。


その瞬間、僕は焦った。


なんと、痛かったのだ。


ここがゲームの世界だとするならば、痛みは無いんじゃないかと思った。


だけど違う。


痛かったのだ。


痛みがあるということは、これは夢ではなく現実だということでもあった。


「い、痛い…。」


怖くなった僕は、その場から逃げ出した。


ゴブリンは追いかけてきたが、兵士が守ってくれた。


どうやら魔物は街に入ってこれないらしかった。


メニューウインドウを開くと、僕のHP、つまりヒットポイントが表示されている。


赤い表示になっていて、それが僕が死にかけているということを表現していた。


体力は段々減っていき、僕自身の動きも鈍くなってきている。


「大丈夫か?!」


そう声をかけてくれたのは、鎧をきた冒険者の男だった。


その男が回復薬を使ってくれると、あっという間に僕の体力は全快した。


「すみません。ありがとうございます。」


そう答える僕。


体力が回復すると、動きづらさも解消された。


男の頭の上には、ディンLv10と表示されていた。


ミウの時と同じ失敗をしてはいけないと思った僕は、ディンにこう言った。


「僕は初心者で…。どうしていいかわからず街の外に出たらいきなりやられちゃいました。」


すると、ディンは「そうだったのか。なら、俺と来るか?」と言ってくれた。


妙に上から目線なのが気になるが、きっと彼はこの世界の人物になりきっているのだろう。


僕にとっても、それは都合が良かった。


「ディンさん、よろしくお願いします。」


「あぁ、ディンでいいよ。コウ、よろしくな!」


どうやら僕の名前はコウというらしかった。

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