19歳

19歳

　正月や冠婚葬祭で、親戚が集まる家系があるじゃん。　

　その時、酒に酔っ払った名前も知らないおっちゃんが俺の年齢を聞いてくるんだよ。　

　隠すのもあれだし、俺は答えたよ、今年で十九歳になるって。　

　そこまでは良いんだ、問題はその後、その後のおっさんの発言だよ。おっさん、何て言ったと思う？

『十九歳かー。じゃあ大学一年生だな』って言いやがったんだ。　

　俺はこのおっさんの発言が気に入らない。だってそうだろ？　

　なんで十九歳＝大学生なんだ？　　

　十九歳だからって、誰しもが大学に通っているとは限らないだろ。高校を卒業してすぐに就職する人だっているはずだ。　

　まあ、その十九歳が社会人ならまだ良い。

『あ、いえ。大学は行かないで働いています』って言えば良い話だ。　

　だが最悪なのは、その人が浪人生の場合だ。

『あ、いえ。今は浪人中です』なんて言ってみろ。その場の空気が凍るぞ。楽しい結婚式の空気が重くなるぞ。ただでさえ重い葬式の空気が、鉛みたいになるぞ。　

　そんな事態を避けるために、飲んだくれの親戚に、次のことを心がけてほしい。　

　まず、青年に年齢を聞く。次に青年が年齢を答える。　

　そしてこの次だ、この次にお前ら親戚が言うべき台詞はこうだ。

『十九歳かー。じゃあ来年は酒とタバコができるな』だ。酒とタバコ以外に、車の免許やギャンブルに話題をそらしてもいい。　

　こう言えば、たとえ青年が酒とタバコをやってもやらなくても、場の空気は変わらない。

「って思うわけだよ、俺は。お前もそう思うだろ？」

「んなこと考える暇があるなら、勉強しろ浪人生」　

　俺は今年で十九歳。今は予備校に通っている。酒とタバコを嗜むつもりはない。