現れし少女は美少女ちゃん

なんて、気分に浸れていたのはつかの間だった。

(穏やかな日の光?眩しすぎて熱いんだけど!

僕を吹き抜けていく春の風?春じゃねーし!嵐レベルの風だし!)

「アアアアアアアア、もう!外の世界なんか全然良くねえ!」

道端で外の世界への不満を撒き散らしながら、

中指を立てて発狂した僕は急いで我に返り指を戻した。

「せんせー、こわいよぉー!」

「うぇーん、あのひとへんだよー!」

後ろにいた散歩途中の幼稚園児たちは、僕が急に怒鳴ってしまったところを

運悪く目撃してしまいわんわんと泣いている。

それを見た付き添いの先生は子供たちを宥めつつ俺をにらむ。

「(なにしてんだよ、お前のせいだぞ!早くここから立ち去れ!)」

僕を睨んできている目は、そう物語っている。

取りあえずお詫びの一礼をすると僕は直ぐ様そこから走り去った。

            ***

「ふぅ...ここまでくれば大丈夫かな?」

無我夢中に走り続け、気付けば人気の無い場所に辿り着いていた。

壁にもたれ掛かり、おでこの汗を拭い、荒くなった息を整える。

「ここは....どこだ?」

改めて周りを見渡してみるが何処にも見たことのある物はない。

一先ずポケットに入れていたガラケーを開き、

地図アプリで現在地特定をしたが、特定中の画面のまま一向に進まない。

「とりあえず来た道を帰るか...。」

ガラケーを閉じ、ポケットの中にねじり混んで、

来た方向に歩いていこうとしたその時だった。

「誰かーーー!たすけてーーー!」

女の子の助けを呼ぶ悲鳴らしき声が後ろから聞こえてきた。

振り向くとそこには体のでかい男二人と、

顔がよく見えないが、女の子らしきひとがたっていた。

「ようよう、可愛い姉ちゃんよぉ?俺と遊ばねぇ?」

「楽しいことしようよー」

どうやらナンパの最中だったらしい、だが女の子のほうは嫌がっている。

「やめてよ、汚らわしい.....。」

(なかなか酷いことを言う子なんだな...)

すると男らは怒ったのか、女の子の腕を引っ張り出した。

「おいッ!!ごちゃごちゃうるせーこといってっとこの腕折るぞ!

女は大人しく俺らの言うことを聞いときゃいいんだよ。」

「やだね!あんたなんかに折られてたまりますか!

私のこの腕はね運命の王子様に撫でられるためにあるのよ?わかる?」

男が少女の腕を本気で折ろうとしているなか、

とうとう少女は怖くなったのか王子様など訳の解らぬことをいい始めた。

(ちょっとこの女の子、マジで腕おられるんじゃねーの?

止めた方が良いのか、でも俺じゃ力不足だからすぐ負けるだろうし....)

「ぷぷっ、王子様だって!!こいつ頭可笑しいんじゃねーの?

可哀想なお嬢ちゃんの為にどっちの結末がいいか選ばしてやるよ。

今運命の王子さまを待って俺に腕を折られて泣いて終わるか、

諦めて俺たちについてくるか、どっちにする?」

男が握っているところが段々と赤くなっていく。

少女は泣きかけ、助けを待つ中、着いていく決断を決めようとしている。

(きっとこのままだと彼女は着いていくしかないだろう....。

よし....駄目元だがやってみよう....!!)

「うおーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

僕は決断すると男ら二人に向かって叫びながら走っていった。

そして全勢力を使い、思い切りジャンプする。

(神様!どうかこの僕に力を......!!)

「必殺!双龍弐剣!」

この技はいつも俺がネトゲでモンスターに使う必殺技の名前で、

二つの龍が剣となり相手に斬りかかるという技だ。

いつもの構えかたを再現し、

手で剣を持つようにし、相手に斬りかかった!..つもりだった。


ドテン!


僕は豪快な音ともにアスファルトの地面に顔面から直撃した。

自分の出した技(?)は男らにはなんのダメージも与えず、

逆に男らは僕の姿を見てドン引きし、少女の手を離すと逃げ出していった。

(....ふはは...ドン引きしてるだろうけどお陰で少女は助けら..れた。

あとは何も..無かったように....たちあがっ...て..立ち去れば....いい.......。)

頭を打ち、意識が朦朧としていた僕はそのまま意識を失った。

           ***

目を開けると、目の前には白い天井と目映い光を放つシャンデリアが見えた。

「こっ、ここは......?」

意識をまだ完全に取り戻せてない僕には状況が全くわからない。

(........なんでだろう...おでこが冷たい....?いや、冷たい以上だろ!

おでこがもの凄く冷えている、いや凍ってる!)

「うああ!?」

ようやく意識を取り戻し、体を起こすと

おでこから水滴とともに氷が3つほどぼたぼたと落ちてきた。

(なぜ、氷?というか僕はどこで寝てるんだ...)

周りを見渡してみると、そこはベルサイユな空間だった。

まず床には赤いカーペットがしかれていてる。

カーペットの上ににはロココ調の家具が揃えられており、

真ん中の机の上には薔薇やアフタヌーンティーセットが乗っている。

右奥にはテラスがあり、逆に左には本棚が置いてある。

(なんでこんな部屋に僕がいるんだ....?第一俺は倒れたはずじゃ...)

全く状況が掴めない中、奥の方からかつかつと足音がしてきた。

振り返るとそこには俺と同い年らしき女の子がたっていた。

ただその子は俺の知ってる同い年のモデルよりも遥かに可愛かった。

と言うより世界を探してもこんなに可愛い女の子はきっといない。

パステルピンクを基調としたロリータ服をしっかりと着こなし、

陶器のように白い肌を際立たせる柔らかい黒髪交じりの綺麗な茶髪、

その綺麗な髪の毛をツインテールにし白いリボンで結んでおり、

正に童話の中からそのまま出てきた少女を連想させた。

(や、やばい!普通に可愛い...てかなんでこの子がいるの?!

女の子と二人きりなんて何年ぶりだろう...すごくドキドキする..。)

早まる鼓動を抑えつつ、こちらに来る美少女を見つめる。

そしてちょうど僕の前まで来て立ち止まると、

その美少女は顔を真っ赤にしもじもじしながらこう呟いた。


「すいません...、私..その...あなたに一目惚れしちゃいました...。」


今日はじめて俺は告白された。それも会って間もない美少女から。

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