22-11
「初期段階の準備やらにゃならん奴らは大変だったなぁ」
「うーわ、川路ちゃん他人事ォー」
「まあ、実際そうだから仕方あるまい。俺達がどうにかしなければ実験も観察もできなかったからな」
「感謝しております」
当事者達は呑気に喋っているが、聞くだけの若者達はあまりの内容に絶句していた。想像を遥かに超えている。鳩が豆鉄砲喰らったような顔付きの二人を見て、医師達は苦笑い。
「映画みたいでしょお。ハリウッド映画ばり」
「……っつうか、ほぼSFですね」
「それにホラーも足した感じ?」
だが、医師達にとってはこれが現実であり、過去であり、思い出なのだ。今はこの場でへらへらと笑ってはいるが、そんな彼等を形作る要因。この、おとぎ話じみた。
「ま、最初のうちはこんなものだ。まだミミックに慣れていなかったし」
目澤が簡単に言う。
「慣れ、の問題なんですか」
「そんなものだ。しばらくしたらミミックの解体手術にも慣れてきたしな」
「慣れ、ですか」
「コツが有るんだ。弱くなる箇所というのがあってね、どこかが硬化すればどこかが必ず軟らかくなる。上手くやれば、最初にメスを押し込んでわざと硬化させて、ちょっとメスを持ち上げた後に少し位置をずらしてやれば素直に切れる。レーザーメスが使えないのは少々面倒だったけれども」
「……はぁあ……分からん。先輩はどうっすか」
「分かるようで分からん」
「良かったぁー俺だけじゃなかったー」
「僕も分かんにゃい!」
「やったぜッワカンナイ仲間増えた!」
相田と網屋と塩野でハイタッチ。笑って眺める中川路と目澤。
まだ、いい。最初のうちは。研究途中は。どうしてあんなことになったのか、三人の医師達には正確なことは分からない。
ただ分かるのは、死に、失い、救ったということだけ。結末などただひとつ。
これは、知恵によって怪物を倒し、世界を救った勇者達のおとぎ話。
呪われた島で戦った、救世主のおはなし。
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