第14話 普通の第3部「最後の選択」7
書いている間に、次のアイデアの「ネ申」が降臨される。問題だな・・・。かといって、この話に組み込むのも、あと3万字で字数的に無理だし、また10万字書くのも嫌だし・・・困ったな。
ここは魔王モヤイ城、。ポンジャ姫の人生の回想。
「ポンジャ姫。私がお父上とお母上様の敵を取って参りましょう。」
「まあ、なんて頼もしい、モヤイ様。」
魔物の舞踏会で踊る魔王モヤイとポンジャ姫はお似合いのカップルだった。魔王モヤイはポンジャ姫に一目ぼれし、魔王なのに人間の姫を魔物から助けてしまった。ポンジャ姫も命を助けられた恩があり、魔王モヤイがカッコよくみえた。2人が恋に落ちるのに時間はかからなかった。
しかし、ポンジャ姫の甘い平和は長くは続かなかった。
「魔王モヤイ! 覚悟しろ!」
「むむむ、勇者か!?」
「ポンジャ姫! 助けに参りました!」
「助けなくて結構です!」
「はあ!?」
魔王モヤイ城にやって来たのは、10人の勇者候補生の中で唯一の真の勇者のジュウだった。意気揚々と登場したのだが、救出に来たポンジャ姫に拒絶されてしまう。
「何を言うのですか!? 姫を連れて帰り、姫と結婚して、俺が次の国王になるんだ! さあ! 早く帰りましょう!」
「嫌です! 絶対に帰りません!」
「ポンジャ姫はおまえなどには渡さないぞ! 姫は私が守る!」
「魔王の分際で勇者の邪魔をするんじゃない!」
勇者ジュウの目的は、姫を助けて姫と結婚して、次期国王になることだった。ポンジャ姫を愛してなどいないのだった。ジュウの今まで勇者として人々を守ってきたが報われない人生よりも、勇者として社会的ステータスを満たしたいという、私利私欲であった。
(ポンジャ姫・・・。)
勇者ジュウの邪な私利私欲は、人の心に闇を生み出す。そして邪悪なる闇を目覚めさせる。闇と闇は惹かれ合い、ジュウはあっという間に闇に呑み込まれる。
「ガガガ!」
闇の騎士が誕生した。ジュウの全身を闇が覆った。邪悪なる闇がジュウの体を支配していく。
「なんだ!? こいつは!?」
「人間が闇に堕ちた!?」
「私は魔王をやっているが、こんな魔物は知らないぞ!?」
「こ、怖い。」
魔王モヤイとポンジャ姫は人間が闇に食べられる様を目の前で見た。こんなことがあるのかと目を疑うばかりの光景であった。
「ガガガ!」
「姫は離れて! 私が倒します!」
「モヤイ様! どうかご無事で!」
襲いかかってくる闇の騎士に応戦する魔王モヤイ。2人の戦いは互角のように見えた。戦いが長引くかに見えたが、予期せぬ出来事が起こった。
「ガガガ!?」
「なに!?」
いきなり闇の騎士が自分の剣で自分の胸を刺した。そして闇が少し怯んだところで、ジュウの意識が少しだけ戻る。
「これは俺の体だ! 好きにはさせんぞ!」
ジュウは最後の力を振り絞って闇に支配されるのを抵抗したのだった。しかし次第に闇は闇であることを自覚し直したかのように、闇を増していく。
(人間の如きが生意気な!)
闇はジュウの体を、また支配し直した。ジュウの意識は、また無くなってしまった。闇の騎士は胸に突き刺さった剣を抜き、そこら辺に投げ捨てる。
「闇よ。私は魔王だが、おまえのような魔物は知らない。いったいおまえは何者なのだ?」
(知る必要はない。)
「なに?」
(おまえは私の1部になるのだから!)
「うわあ!?」
闇が魔王モヤイに襲い掛かる。闇が魔王モヤイを呑み込もうとしている。一瞬だけだが魔王モヤイはポンジャ姫を見つめる。自然と目がポンジャ姫を追った。
「ポンジャ姫!」
「モヤイ様!」
ポンジャ姫の叫び声も虚しく、魔王モヤイは現れた闇に呑み込まれた。次に闇はポンジャ姫に魔の手を伸ばそうとする。
「返して! 私のモヤイ様を返して!」
泣きじゃくるポンジャ姫。そんなことはお構いなく闇はポンジャ姫に近づいていく。
(姫、久しぶりだな。)
「え?」
(私のことは忘れたというのか?)
「あなたのことなんか知らないわよ! モヤイ様を返して!」
(悲しいことを言うな。おまえも闇に呑み込まれ、昔のように一緒に暮らそうではないか。)
ポンジャ姫は愛しの魔王モヤイを闇に呑み込まれ気が動転していた。にっくき闇の言うことなど耳には入ってこなかった。しかし闇はポンジャ姫のことを知っている様だった。闇がポンジャ姫も呑み込もうとする。
「おまえの好きにはさせないぞ!」
闇の中から魔王モヤイの声が聞こえる。闇は動きを止める。魔王モヤイの魔力で闇の動きを抑え込んでいるのだ。
「モヤイ様!?」
「ポンジャ姫。私の大好きなポンジャ姫。私がこの闇の動きを封印します。100年ほどの眠りにつくことになるでしょう。もしも私のことをすきでいてくれるなら、闇の世界で私が目覚めるまで待っていてくれないか?」
「待ちます! 私はモヤイ様の復活まで、お待ちしております。」
「ありがとう。ポンジャ姫。」
「愛しています。モヤイ様。」
ポンジャ姫と魔王モヤイのラブストーリーは100年後の世界まで続くことになるのだった。100年後の世界はハチハチやポンジャ3世の世界である。
(魔物のくせに!? ポンジャ姫は魔物なんぞにはやらんぞ!)
「闇よ! おまえの力は徐々に抑えられ、時期に封印され眠りにつくのだ! 100年後の世界で私が目覚める頃には、おまえは消滅しているかもしれないがな!」
(そうはいくか! おまえを闇で吸収してやる!)
「うわあ!?」
闇の中で闇が魔王モヤイを吸収しようとする。そして闇は渦を巻いて、そのまま魔王モヤイ城から姿を消してしまった。
「モヤイ様・・・モヤイ様!!!」
大好きな人の名前を泣き叫ぶ。1人残されたポンジャ姫は魔王モヤイの言い残したことをしっかりと覚えていた。
「100年後・・・100年後に必ずお会いしましょう。」
ポンジャ姫の額には第3の瞳があった。魔王モヤイを愛したポンジャ姫には魔物の証である第3の瞳を持っていた。
回想、終わる。
ここは魔王モヤイ城。
「そんなことがあったのか。」
「すごい真実。」
盗み聞きしていたコウとナーはとても驚いた。下流の洞窟で闇の騎士とも戦ったが、そんなややこしい話になっているとは思わなかったのだ。
囚われのポンジャ姫を助けに来た勇者候補生たち。ポンジャ姫から真相を聞かされて衝撃を受ける。
「なんということだ!?」
「魔王モヤイが助けてくれたなんて!?」
「や、や、闇!?」
「おいおい!? どうするんだ!? 100年後だなんて!?」
「ポンジャ姫の額に普通に3つ目の瞳が!? 魔物の証が!?」
ハチたちは真実を知り、頭の中を整理できない。そんなハチたちにポンジャ姫は頭を下げてお願いをする。
「勇者候補生のみなさん。どうか私と一緒に100年生き続けてください! そして魔王モヤイ様を助けてください!」
「ええ!?」
「どうする!?」
「ど、ど、どうしよう!?」
「100年って・・・死んでるよな!?」
「僕たちはどうすればいいんだ!?」
100年生きると言われて戸惑うハチたち。ポンジャ姫と魔王モヤイのことはどうでもいいのだが、ハチたちには気になることがあった。そして何も言わずに全員で目と目を見て頷く。
「分かりました。私たちも闇の世界へお供します。」
「ありがとうございます。」
「しかし、これは姫と魔王の恋物語のためではありません。100年の眠りに着いた闇に我々も出会っています。」
「ええ!? あなた方も闇に!?」
「はい。そして闇に呑み込まれた闇の騎士ジュウと闇の増殖装置にされてしまったヨンは、私たちと同じ勇者候補生なんです。」
「な、な、仲間なんです!」
「だから助けたい。助けないといけないんです。」
「僕は普通に100年後の世界も見てみたいし。」
ハチたちは100年生きることを選択した。同じ勇者候補生の仲間を呑み込んだ闇と決着を着けるために。
「分かりました。あなたたちが魔物になってしまっては闇と戦う時に光の力が使えなくなるかもしれません。私の魔物の力であなたたちを闇で覆い、魔物にならないで済むようにやってみましょう。」
「ポンジャ姫、ありがとうございます。」
「その前に、外の群衆はどうしよう?」
「そうだな。きっと俺たちが魔王モヤイを倒し、ポンジャ姫を救い出すと期待してるぞ。」
「で、で、でも今の王様は魔物・・・。」
「うん・・・。」
ポンジャ姫を魔物の王様の元に連れて帰ることもできず、魔王モヤイと闇が復活する100年後の世界まで闇の世界で時間が過ぎるのを待つためにも、目の前の問題を解決しなければいけなかった。
「よし! 一計を設けよう!」
「おお!」
「ハチ。」
「なに?」
「おまえが勇者になれ。」
「いいよ・・・ええ!? なんで!? 僕が!?」
「おまえが1番、顔がいいからだ。」
そんな理由でハチは伝説の勇者ハチになったのだった。勇者も顔で選ばれる時代だった。面倒臭い役を押し付けられただけであった。
「まず、お城から火の手をあげて、激しい戦闘があったように偽装。」
「ほい。」
「ハチに・・・ジュウの剣を持たせて勇者っぽくしよう。」
「ほい。」
「ハチはセリフをしっかりと覚えろよ。」
「ええ!? そんな・・・。」
「ポンジャ姫も、嫌でしょうがハチに寄り添ってください。」
「はい、嫌です。」
「・・・。」
ポンジャ姫ははっきりとした性格だった。愛のために闇に堕ちるのだからサバサバとした思いっきりが良いのだろう。
「よし、準備が整った。それではみんな、手筈通りお願いします。」
「おお!」
こうして伝説の勇者ハチの寸劇の準備が整ったのだった。まさかの展開で伝説の勇者が誕生するのだった。
ここはポンジャ城。
「おお! 魔王モヤイの城から火の手が上がったぞ!」
「王様! バルコニーに人の姿が!」
「あれは我が娘! ポンジャ姫!」
魔王の城のバルコニーに勇者候補生のハチと魔王にさらわれたポンジャ姫が現れた。ハチの持っている剣は、どことなくジュウの持っていた剣に似ていた。ハチは剣を空高く高々に上げて、勝利宣言をする。
「僕の名前はハチ! 魔王モヤイは僕が普通に倒したぞ!」
「おお! 魔王を倒したのだな!」
「やりましたね! 王様!」
「王様! ポンジャ姫はご無事です!」
「お父様!」
「おお! 姫! 我がかわいい娘よ!」
「王様! 僕は姫を妻として、これから新しい冒険に旅立ちます! 決して探さないでください!」
「さようなら、お父様!」
「姫よ! 幸せになるんだぞ!」
「よかったですね、王様。」
これが勇者候補生ハチとポンジャ姫の最後の雄姿だった。魔王モヤイの城のバルコニーにハチは剣を突き刺して、魔王の城の中に消えていった。
ハチとポンジャ姫は魔王モヤイ城の中に戻って来た。
「お疲れ様です。」
「ああ・・・疲れた。」
ハチは大役を果たし、戦闘以上に疲れている。ハチの労を労う仲間たちだった。そしてポンジャ姫は第3の瞳を額に開く。
「それではみなさん、闇の世界に参りましょう。」
「はい。」
ポンジャ姫は魔王モヤイとの愛のために。ハチたちは闇との決着を着けるために、100年後の世界が訪れるまで闇の世界で時間が過ぎるのを待っために、この世界から去って行くのであった。
「ハチさんたちはこうして闇の世界に行ったのか。」
「100年後の世界を救うために。」
コウとナーは複雑な気持ちだった。もしも自分たちがヨンを助けることができていれば、闇を倒すことができていればと後悔するのだった。
「僕たちは闇を倒しに行くんだ。」
「世界を平和にするのよ!」
コウとナーは全ての元凶、闇との戦いに赴くことにした。長かった闇との戦いが終わろうとしていた。
そして、闇の世界。
「ここはどこなのかしら?」
「これが闇の世界!?」
ポンジャ姫とハチたち勇者候補生たちは闇の世界にやって来た。よく見れば今まで住んでいた人間世界と変わりはなかった。
「色が白と黒しかない!?」
「全てが灰色がかった世界!?」
「ひ、ひ、陽の光がない世界!?」
「引きこもりには最高の世界だ!」
「僕たちはこれからどうやって暮らせばいいんだろう?」
初めての闇の世界に戸惑うハチたち。それに比べるとポンジャ姫は堂々としたものだった。これも人間から魔物に堕ちたからだろうか。ポンジャ姫は最初から闇の世界の住人であるかのようだった。
「ここが愛しのモヤイ様の世界。なんて素晴らしいのかしら!」
色ボケのポンジャ姫はうれしそうだった。その様子を見て呆れているハチたちの前に、闇の世界に巣くう魔物たちが押し寄せてくる。
「闇の竜だ!?」
「闇の目玉だ!?」
「や、や、闇の魔獣だ!?」
魔王モヤイのいなくなった闇の世界は統治者がいなくなったと足早に情報が広がり、大人しくしていた闇の者たちが闇の世界の覇権を争って動き始めたのだ。
「私がモヤイ様の世界を守る!」
ポンジャ姫は立ち上がる。闇のプリンセスとして。自称「魔王モヤイの妃」として、闇の世界の安定を守るために立ち上がるのである。ハチたちはポンジャ姫のテンションに呆れている。
「いけ! 勇者候補生たち!」
「ええ!?」
「なんで私たちが!?」
「じ、じ、自分で戦ってください!?」
「俺の活躍を見せてやる!」
「僕たちは普通にこうなる運命なのか?」
こうして勇者候補生たちは闇の世界で100年もの間、闇の世界の安定のために明け暮れた。次第に「5人の暗黒の騎士」の名は闇の世界に轟いた。
「モヤイ王妃、万歳!」
「モヤイ王妃、万歳!」
「モヤイ王妃、万歳!」
闇の世界の魔王モヤイの城に入場したポンジャ姫を魔物たちが喜んで受け入れる。そのポンジャ姫の後ろを闇の鎧に包まれた5人の暗黒の騎士が護衛するかのように続いて入場する。
「なんか変な気分だな。」
「私たちが魔物に称賛されるとは。」
「え、え、英雄みたいだ。」
「闇の世界もいいかもしれないな。」
「僕たちの目的は100年後の世界で普通に闇を倒すことだからね。」
ハチたちは戸惑いながらも闇の世界を統治して平和な世界を築いていくことに生きがいを感じていた。時間はたっぷりあるのだ。そしてポンジャ姫が大勢の魔物たちに所信表明を演説する。
「私は魔王モヤイ様の妻ポンジャ姫です! 魔王モヤイ様は100年後に甦ります!」
「おお!」
「それまで私と暗黒の騎士が魔王モヤイ様の世界を守ります!」
「おお!」
「そして再び魔王モヤイ様が闇の世界を治めることになるだろう!」
「おお!」
「モヤイ王妃、万歳!」
「モヤイ王妃、万歳!」
「モヤイ王妃、万歳!」
ポンジャ姫の演説は魔王モヤイの手下の魔物たちの支持を得た。手を振り笑顔で期待に応えるポンジャ姫と暗黒の騎士たちであった。
「でい!」
「やあ!」
暗黒の騎士たちは戦い戦いを繰り返し、闇の世界で勢力を広げていき、闇の世界の争い事に終止符を打ち、平和で安定した闇の世界になっていくのだった。
そして月日は流れ、100年後の世界が訪れるのだった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。