第13話 普通の第3部「最後の選択」6
現時点でラスボスが分かっている人は偉い(⋈◍>◡<◍)。✧♡
ここはポンジャ城の周辺。
「えい!」
「やあ!」
「た、た、たあ!」
「とう!」
「だあ!」
下流の洞窟から命からがら逃げ戻って来たハチたち。今の自分たちでは敵わない敵がいることを知った。あの強いジュウですら闇に堕ちた。いろんなものを目で見て背筋がゾッとする体験をした。
「みんなのレベルが、あと5上がるまでは訓練を続けるぞ!」
「レベリング大切だからね!」
「し、し、死にたくない!」
「いい汗をかいてきたぞ!」
「生きることを最優先に普通に考えよう!」
ハチたちはレベルアップに勤しんだ。剣と剣で互いに打ち合い訓練に励んだ。洞窟から戻って来てからは、人が変わったみたいに真面目に訓練に取り組んだ。
「ハチさんたちは今日はどこにも行かないみたいだな。」
「私たちはどうする?」
「どうしよう?」
「魔王モヤイのお城にでも行ってみるか、ポンジャ城でも探索してみる?」
「近いからポンジャ城でいいんじゃないか。」
コウとナーは邪悪なる闇の正体を探していた。闇は、この時代には存在していた。ということは、もっと過去に闇が生まれたことになる。しかし当てもなく過去に戻っても闇の正体の見当がつかない。この世界で闇の手がかりを探すことにした。
ここはポンジャ城。
「コウのお父さんのハチハチは・・・なんか言いにくいわね。」
「まあまあ。」
コウとナーはポンジャ城に忍び込み闇の情報を探すのであった。コウとナーの入り組んだ人間関係が2人の会話をギクシャクさせる。
「コウがポンジャ5世で、コウのお父さんのハチハチがポンジャ4世。ポンジャ4世には、ハチハチの人格とポンジャ3世の人格と2つの人格があって、ポンジャ3世は魔物だった。コウのお母さんはポンジャ3世の妹のポン姫で魔物だったわね。」
「そんな感じだね。」
今までの複雑の経緯を簡単に説明する。ここまでは理解できる。問題はポンジャ1世からポンジャ3世までの間が抜けていることにある。
「いつポンジャ王は魔物と入れ替わったんだろう?」
「この伝説の勇者ハチの世界のポンジャ1世は人間なのかしら?」
「調べてみよう。」
「そうね。まずはポンジャ王の周辺を調べましょう。」
最初からなのか、それとも途中からなのか、現在のポンジャ王は人間と魔物のどちらなのだろう。
「いた。ポンジャ王だ。」
「大臣も一緒にいるわ。」
ポンジャ王とポンジャ大臣が部屋で会話をしていた。コウとナーは物陰に潜みポンジャ王たちの会話を盗み聞きすることにした。
「ポンジャ王とポンジャ王妃を殺したまでは順調だったのに。」
「そうですね。王様。」
なんと!? 人間のポンジャ王と王妃は、こいつらに殺されたのだった。ということは今のポンジャ王とポンジャ大臣は魔物ということになる。
「犯人はこいつらだったのか!?」
「これでどこからポンジャ王が魔物に変わったのが分かったわね。」
コウとナーは真相を聞いてしまった。ポンジャ王とポンジャ王妃は魔物に殺されたのだった。そして、その魔物がポンジャ王にすり替わっているのだった。
「ちきしょう!? ポンジャ姫に逃げられてしまった!?」
「忌々しい、あいつが現れなければ、計画通りポンジャ一族を殺せたのに!」
「ポンジャ姫は、我々が魔物だと知っている! 確実に殺さなければ!」
何者かがポンジャ姫を助だしたらしい。いったい誰が姫を助けたのだろう? またポンジャ姫は両親のポンジャ王とポンジャ王妃が魔物に殺されたことを知っているというのだ。
「その点は抜かりなく。何も知らない勇者候補生たちにポンジャ姫を連れてくるように仕向けています。バカな人間たちは殺されるとも知らずに、ポンジャ姫を我々の元に連れてくるでしょう。」
「そうだな。ワッハッハ!」
「ワッハッハ!」
悪の会話に華が咲く。ハチたち勇者候補生は、図られているとも知らずに命懸けで戦い傷ついているのであった。
「許せない! なんていう奴らだ!」
「ダメよ! 今は耐えて。」
「どうしてだ!? 僕なら普通にホーリー&ダーク!!! の1撃で倒せるのに!?」
「ダメよ! あいつらはハチさんたちがポンジャ姫を助け出した時に、まだ健在だったもの!」
「クソ!?」
「それに・・・ポンジャ姫とハチさんたちが、どうして闇に堕ちたのかも、まだわかっていないわ。」
謎。物語も終盤であるが、まだ謎だらけである。そして、細かいことに気づくナーではなく、意外にもコウも気づいたことがあった。
「ダメだ。今こいつらを倒してしまったら、僕は普通に生まれないことになってしまう・・・。 」
「え。」
そう、コウがポンジャ5世なので、目の目にいる魔物のポンジャ1世は、コウの先祖ということになる。さらにコウは大切なことを思いだす。
「ポンジャ3世!? あいつは、もうこの世界にいるのか!?」
「仮にいたとしても、まだ子供なんじゃない?」
コウに闇の使い方を教えた2人の父親の1人がポンジャ3世である。ポンジャ1世は完全に魔物であったが、ポンジャ3世の人格は、かなり人間の影響を受けていた。
「それでは勇者候補生たちに魔界樹を与えて、激流の川に橋をかけさせ、逃げたポンジャ姫を連れてきてもらいましょう。」
「大臣、お主も悪よのう。ワッハッハ!」
「王様ほどではありません。ワッハッハ!」
奇跡でも何でもなかった。奇跡の木材の正体は、魔界樹だった。そうとは知らずにハチたちは魔王モヤイにさらわれたポンジャ姫を助けに行こうとするのだった。
「もうこの世界のことが分からなくなってきたわ。」
「複雑すぎて頭が痛い。」
「私たちは橋がかかるまで、ポンジャ2世とポンジャ3世を探しましょう。」
「おお。」
コウとナーは探すも、まだポンジャ2世とポンジャ3世は生まれていなかった。
そして、ポンジャ国王とポンジャ大臣の策略とは知らずにハチたちは、奇跡の木材(魔界樹)を手に入れて、激流の川を渡るための橋の建設された。
「奇跡の木材を使って、奇跡の橋ができたぞ!」
「これで魔王の城に渡ることができますね。」
ポンジャ城の目の前に魔王モヤイの城はあったが、激流の川が行く手を阻んでいた。激しい川の流れにもビクともしない「奇跡の木材」を取りに行き、「奇跡の橋」を川にかけることに成功した。
「それでは王様、魔王を倒しに行ってきます!」
「頼んだぞ勇者候補生たちよ、魔王を倒せたら、真の勇者になることができるだろう!」
「ポンジャ姫も取り戻してきます!」
「がんばれ! 勇者候補生たちよ!」
王様に見送られながら、ハチたちは奇跡の橋を渡っていく。シメシメとニタニタと笑うポンジャ国王と大臣。自分たちの思惑通りに、勇者候補生たちを魔王モヤイの城に向かわすことに成功したのだった。
「見ていて何かムカつくわ。」
「そうだね。僕たちもハチさんたちの後を追おう。」
コウとナーの2人はポンジャ国王と大臣の思惑を知っているので、無性に腹が立つ。コウとナーも陰ながら魔王モヤイ城に向かう。
ここは魔王モヤイの城。
「ハチさんたちがガイコツと戦っている!?」
魔王モヤイの城に突入したハチたちは、ガイコツの大群に襲われ戦いになった。今のハチたちならガイコツぐらいは問題なく倒せる。
「僕たちも普通に加勢しなくっちゃ!?」
「ストップ!」
「なんで止めるんだよ?」
「私たちは、ポンジャ姫を探しに行くわよ! 事の発端をポンジャ姫は知っているはず! 話を聞かないことには分からないことだらけよ!」
「分かった。ポンジャ姫を探そう。」
コウとナーは戦闘には参加せずに、この城のどこかにいるであろうポンジャ姫を探しに向かう。
「いた!? あの人がポンジャ姫よね?」
「そうみたいだけど・・・何か様子が変だ!?」
コウとナーはポンジャ姫らしきプリンセスを見つけた。しかし、プリンセスにガイコツ剣士が跪いて、姫に忠誠を誓っている。
「ポンジャ姫。必ずや私が追ってから姫を守って見せます。」
「ありがとう。ガイコツ剣士。決して無理はしないでくださいね。」
「もったいないお言葉を。こんなガイコツにも慈悲の心で接して下さるなど・・・。」
「心から感謝しています。私はいつもみなさんに助けてもらってばかりでしたから。」
「この命に代えても、姫を守って見せます! では、いざ出陣!」
ガイコツ剣士は士気が高鳴り、ハチたちの元に向かう。その様子を心配そうに見つめるポンジャ姫であった。
「どういうこと!? ポンジャ姫とガイコツが仲良くしている!?」
「あの人がポンジャ姫に間違いなさそうだけど・・・。いったい何があったんだろう!?」
人間の姫と魔物のガイコツが仲良く暮らしているのを見て、コウとナーは戸惑う。ポンジャ姫の側にいた鎧の騎士が語り始める。
「我々は魔王モヤイ様とポンジャ姫様に感謝しているのです。魔物として悪事を働くことしか知らなかった我々に、人間らしく豊かに生きることの喜び、大切さを教えてくださったのですから。」
「それもモヤイ様が私を魔物の魔の手から救い出してくれたからです。父と母は殺されてしまいましたが。」
「姫様のことは我々が絶対にお守りします。」
ポンジャ姫の両親。ポンジャ国王とポンジャ王妃は魔物に殺され、国王の座を奪い取られたのであった。窮地のポンジャ姫を救ったのは、なんと! 魔王モヤイだった。
「どういうこと? 魔王モヤイは悪者じゃなかったの!?」
「ポンジャ姫は普通に魔物に守られてきたというのか!?」
予想していなかった展開に驚きを隠せないコウとナー。そしてポンジャ姫の元を鎧の騎士も去って行くのだった。
「いったい何がどうなっているんだ!?」
「そういえば魔王モヤイはいないわね?」
何があったのかが分からないというのがコウとナーの2人の気持ちである。魔王モヤイがポンジャ姫をポンジャ城の魔物から救ったらしいが、その魔王モヤイの姿はなかった。
「あ!? ハチさんたちがやって来た!?」
「鎧の騎士も倒したんだわ。」
ここまでは運命通りである。ハチたちはガイコツ剣士も鎧の騎士も倒し、遂に囚われのポンジャ姫と会うことになるのだ。部屋の扉を開けて、ハチたち勇者候補生が入ってくる。
「待っていましたよ。」
ポンジャ姫が堂々とした態度でハチたちを迎える。その表情は、助けが来てうれしいというものではなく、どこか悲しそうであった。
「ポンジャ姫、助けにやって来ました。」
「・・・。」
「さあ、私たちと一緒にお城に帰りましょう。」
「魔王モヤイはいないようだな。」
「こ、こ、王様がお待ちですよ。」
「!?」
王様と聞いて、ポンジャ姫の表情が強張る。ポンジャ姫の両親は、今の偽の国王に殺された。そのことをハチたちは知らない。
「いやです! お城には帰りません!」
「え!? なぜですか!?」
「早くしないと、魔王モヤイが帰って来ちゃいますよ!?」
「魔王モヤイはいません。」
「え!?」
「魔王モヤイは、もういないのよ。」
ハチたちは魔王モヤイとの最後の戦いを勇者候補生らしく覚悟していた。それなのに魔王モヤイはいないという。それを告げるポンジャ姫の表情は、まるで悔しさを噛み締めているようだった。
「魔王モヤイがいないとはどういうことですか!?」
「あなた方には、私に起こったことの真実を最初から知っていただく必要があるようですね。」
「真実!?」
ポンジャ姫が語り出した。ポンジャ姫の実の父親と母親、ポンジャ王とポンジャ王妃は魔物に殺されたと。今の王様は魔物が人間の姿になり、すり替わっているのだと。
「王様と王妃様が殺された!?」
「では今の王様は魔物だと言うのですか!?」
「そうです。」
驚愕の事実にハチたちは衝撃を受ける。それでは自分たちは魔物の王様の王命に従って、勇者候補生になり冒険をしてきたということになってしまう。確かに思い起こせば疑わしい所は多々あった。
「そういえば何で旅の支給品が3択だったんだ!?」
「勇者候補生は多い方がいいのに、90人も冒険に出ることができなくなってしまった・・・!?」
「わ、わ、罠!?」
「まさか魔物だったとは!?」
「僕は普通に人間だと思っていました!?」
魔物である偽物のポンジャ王は、将来の天敵になるであろう勇者候補生の数を意図的に減らしたことになる。しかも人間の心の弱さを利用して。
「私が魔物に殺されそうになった所を助けてくれたのが、魔王モヤイでした。」
「ええ!?」
ハチたちは驚いた。魔物に襲われたポンジャ姫を間一髪のところで助けてくれたのが魔王モヤイであった。
「魔王モヤイは私を助け出し、この荒れ果てたお城を私が住めるように、手下の魔物たちに命令し、きれいなお城にしてくれました。」
「魔物がリフォーム!?」
「おかげで快適に暮らせました。魔王モヤイはとても紳士的で優しく、理想の王子様でした。手下の魔物たちも最初こそ人間の私に抵抗があったようでしたが、魔物であってもこちらから優しく手を指し伸ばせば、私のことを受け入れてくれました。みんなで舞踏会を開いて楽しい時間を過ごせました。」
「はあ・・・。」
楽しかった日々の話をするポンジャ姫は控え目に笑顔を見せ少しだけ楽しそうだった。思わず、ハチたちは呆れてしまう。しかし、直ぐに笑顔は消えてしまう。
「でも楽しい時間は長く続きませんでした。」
「え!?」
一瞬でポンジャ姫の顔色が曇る。真実の全ての真実とは、魔物に両親を殺されて、魔王モヤイが助けてくれた。これだけではなかったのだ。
つづく。
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