第57話 奉公人頭 ヨハネ
ヨハネは商会の建物に入ると、階段を上って右手にある
そこは
ヨハネがこの街に売られてきてから五年、ティーとの別れから三年の月日が流れた。
ヨハネはあの一件以来、しばらく魂の抜けたように暮らした。しかしながら、すぐに元の働き者のヨハネに戻った。
彼は
神殿の解体作業では、解体しながら建物の構造を少しでも憶えようとした。石垣の積み上げ作業では、石の裏に詰める砂利を何度も手ですり合わせてその種類を手で憶え、
奉公人のヨハネに仕事を教えてくれる酔狂な人間などいなかった。だからヨハネは必死に様々な仕事を
勘定係の部屋にあるゴミを片付ける時、商会の勘定に係わりのありそうな書類をこっそり持ち帰っては、その文字を暗記した。それでも独学は限界があった。ヨハネは誰か教えを乞う人間がいない事を心から無念に思った。
いま外から帰ったヨハネはトマスから借りた会計の本を手に取った。それは遥か遠く海の向こうにある貿易国家で書かれた
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