4月7日

 日曜日なので部屋でぼへーっとしてると父が入ってきました。


「なんか用?」

「ああ、いやそのな……」


 と、父はなんだかモジモジ照れくさそうにしながら花束を差し出してきたのです。


「お誕生日おめでとう!」

「わあ、ありがとう!」


 なんだそういうわけか。


「今年でおまえも24だな」

「ああ年男だしね」(棒読み)

「仕事頑張れよ。それ飾っとけ」

「ああ、ありがとう」


 ていうか父さん意外と少女趣味だね――とか言おうと思ったのですが、最近やっと「口は災いの元」ということに気付いた(遅い)俺は素直にお礼を言ってから笑顔で花束を受け取ったのでした。

 そして、その日の夕飯は俺の誕生日だという事で、母も腕を振るってご馳走を作ってくれました。

 わあ嬉しいなあ。


「モルァ! 奮発してやったぞ! 食え!」

「わあ! ありがとう」



 ブリの煮物

 蛸サラダ

 納豆




 ……奮発?

 まあいいや頂きます。


「いやしかし禎丞も24か。大人になったなあ」

「モルァ、24年間も飯食わせてやったんだからちゃんと恩返ししろよ!」

「あ、はい……」

「ところで末弟はどうした?」

「映画観に行ったぞ!」

「まったく家族の誕生日なのに……あいつは薄情なやつだなあ」

「そういえば私の誕生日の時もぶっちしやがったな!」

「……いや俺別に気にしてないし」

「そうか? まあ明日からまた仕事だろうけど頑張れよ」

「………」

「どうした禎丞?」

「モルァ? 飯まずいのか?」

「いや、そんな事は……ありがとう」




 本当は明日が誕生日ととても言い出しづらい雰囲気だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る