4月11日

 ぶっちゃけ入社二年目になったからといっていきなり変わるわけがありません。

 仕事の内容も、俺自身も。

 出世とか当然ながらありません。ヒラのままです。フレックスになったくらいです。


 そんなわけで今日も俺は新人時代と変わらずに、せっせとコピー取りとかしてたわけであります。

 そしたら課長が俺を呼びました。



「加納隊長――」

「……隊?」


 先生から隊長になりました。レベルダウンしたんだか、アップしたんだか微妙です。

 またなんか俺悪い事したのかなあ。


「なんだよ、嫌なのか?」

「いえ、ちょっと川口探検隊を思い出しまして」

「なんだよそれ、古いよ。ところでね」

「やってません!」

「何がだよ!?」

「片面書類を両面コピーとかやってません。ありえない」

「聞いてないよそんな事は!」

「え、じゃあなんですか?」

「うん、今日席替えがあるんだ」

「へー」


 そういえば、今日回ってきた回覧板に書いてありました。

 四月から人員を増やすためにまた席替えをするとか。


「で、席替えのために場所を引越すんだけど、おまえ引越し隊長な?」


 なるほどそれで、加納隊長か。


「安易だなあ」

「あ゛? 」

「いえ、具体的に何やればいいんですか?」

「うん、俺そろそろ客先に行かなきゃいけないから、代わりに俺の荷物とか運んどいて」

「それって別に隊長がする仕事じゃ……もっとこう指揮するとかそういうのは――」

「仕事は仕事です」

「……まあ仕事なら」

「隊長とは名ばかりの雑用だけどな?」

「……古賀くん。いきなり出てきて君ひどいな」


 しかし最近怒られてばっかですし、ミスも多いのでこれ以上逆らって印象悪くするわけにもいきません。

 というわけで甘んじて加納(24)、引越し隊長を引き受ける事にしますよ!

 で、課長と課長代理が客先へ出かけまして時は過ぎ、いよいよ席替えが始まったのです。


「隊長!」

「え!?」

「隊長! 引越しです指示を!」

「あの、係長――」

「加納隊長! 今はあなたが責任者であります! 上司とか関係ない。指示を!」

「ノリいいっスね……」

「当たり前だよ加納君!」

「えと、それじゃもっかい呼んでください」

「隊長!」

「(´∀`)」

「顔キモイ!」

「す、すいません」


 なんかいいかもしれません。加納隊長。

 がーんばーるぞーー!


「隊長!」

「あ、はい!」

「隊長!」

「はいはい!」

「隊長、早く指示だしてよ。もう他の会社の人達引越し始めてるよ?」

「だまれ古賀君! 今は俺が隊長だ!」

「うるせーばーか。調子のんな!」

「もーじゃーいいよ。はい! 各自運んでください」

「うわーてきとー」

「んなこと言ったって他に何言えるんだっつの! 引き出しごと運ぶだけじゃん」

「もういい、じゃあ俺が総指揮になる! 各自任意に展開!」

「係長!?」

「じゃあ俺総隊長ぉー! 各自任意に展開!」

「古賀君まで!?」

「てきぱき動くー!」

「動くー!」



『あのすいません、早く移動してくれませんか?』 ←他部署の方々



「こいつのせいです!」

「こいつのせいです!」

「酷い!?」




 明るい職場です。

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