3月30日 その3
定時後――
「課長――」
「なんだ加納?」
「あの、いろいろ考えたのですがどうも何が悪いのか良くわからないのですが」
「何が?」
「今朝言われた「思い当たる節」です」
「わかんない?」
「……もしかしてみんなクソ忙しい時に、定時で帰ったことがあったからですか?」
「別に特に仕事がない時は残らなくていいよ」
「じゃ、仕事中にパイの実とかミルキーとかこそこそつまんでる事ですか?」
「いや、腹が減ってちゃしょうがないし、俺も食うし」
「ソッスよね、課長ベビスターぼりぼり食べてますもんね」
「どうでもいいよそんな事は! それよりホントにわかんないのか?」
「ヒントください」
「えっ、ヒント!?」
「すいません」
「まあいい、そんじゃヒント……『生活態度』」
「生活態度?」
「職場での態度の事だよ。おまえなんか周りの反感を買うことやってない?」
「……反感……親指でハナクソほじってたりとかしたことですか?」
「汚なっ! 違う、そうじゃなくて仕事中にインターネットやってたりとか――」
「二ヶ月前『4ちゃんねる』の見てたのばれて、係長からプロキシ禁止のお達しを受けて以来、インターネットやメールやってませんよ」
「……それじゃ寝てたりとか?」
「俺は寝た事一度もないはずですが」
「……じゃ、無駄話とかしてないか?」
「はあ、それはちょっと。古賀君とたまに」
「あのな、お前は目立つんだよ。良いにせよ悪いにせよ」
「そうなんですか?」
「そうだな、みんなで悪いことした時とかもお前だけ怒られるタイプだな。目立つから」
「ああ、当たってますね。小学校の頃とか給食費盗んだ奴の汚名を着せられたり――」
「どうでもいいよそんな事は、とにかく周りは結構そういうの見てるわけだ。さりげなくね」
「暗い職場ですねぇ」
「あ゛?」
「いえ、なんでも」
「お前ももう二年目になるんだから、新人じゃないんだ。もう少し落ち着きなさい。そしてまずミスをなくせ」
「……努力はしてるのですが、そんな急には――」
「じゃあその成果をちょっとずつでもいいから見せてみなさい」
「はあ……」
そして翌日――
「加納『大』先生――」
「……大!? 大ついた?!」
「これはなんですか?」(設計書を掲げながら)
「設計書です。成果を見せてみました。ミスないと思いますよ?」
「ほう……じゃあコレはなんですか?」
ミスばかりですいません。気をつけます――加納
「ああそれは、心を込めて書いてみました」
「『その他』の項にですか?」
「『その他』の項にです」
「書くなよバカッ!」
「すいません……」
「んで、じゃあこれはなんですか?」(お菓子を掲げながら)
「課長の大好きなベビスターです」
「また賄賂かよ! いらないつってるだろ!」(ぼりぼり)
「食ってるし!?」
(あそこはいつもうるさいなあ……) ←他部署の出向の人達
怒涛の2年目へ続く。
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