3月30日 その2

 お昼休み、古賀君と――


「仕事やめたい?」

「うん、この仕事向いてないんじゃないかって思って」

「……」

「なんかミスばっかしてるし、評判悪い――ってとうとう言われてさ……なんか課長も見放しつつあるし」

「いや、だってそりゃ全部身から出た錆だろ?」

「そりゃわかってんだけど、でもそうまでして会社に来たくないかなあって思った」

「……」

「……」

「……」

「コメントなしですか?」

「俺は慰めないぞ。おまえ慰めて欲しいんだろう?」

「そんな事はない」

「おでこに血管浮き出てるぞ」

「そんな事はない」

「俺は頑張れとか言わないぞ。頑張れって言葉はいい加減だからな。すっげー他人任せだからな」

「……古賀君」

「俺が「頑張れ」って言ったら、それは見放してる事だぞ。いいのか?」

「それは嫌だ」

「まあでも、やめたきゃやめていいんじゃない?」

「そう?」

「でも今やめると『逃げる』ことになるけどな」

「……」

「向いてないとかそういう理由ですぐ諦める奴は子供だ」

「…そうかなあ」

「そうだね。俺は簡単に辞める奴は嫌いだし。仕事だぞ? 金貰ってんだしさ。いろんな人に迷惑かかるし、なにより人間性を疑うな」

「……」

「あとなー、俺のオヤジが言ってた言葉だけど」

「うん。」

「社会でたら誰も何も言ってくれない。注意してくれない――ってさ」

「……へえ」

「見放してたらおまえなんか誰も叱ってくれないし放っておくよ?」

「……」

「おまえまだ叱ってもらえるんだからいいじゃんか」

「そうかな……」

「俺が課長だったらお前殴ってるね。そしてもう無視だね」

「マジで!? そこまで?!」

「だっておまえ一度ミスしたことまた何度もミスるしさ。人の話聞いてないし、落ち着きはないし。ヅラだし」

「いや、ヅラじゃない」

「まあそうかもしれないけど、成果が出てねえんだよ」

「そっかー成果か……」

「口はいいから行動で示してみたら? 課長に呆れられてるんだったら」

「……ああ」

「でも俺はバカなおまえの方が好きだけどな」

「古賀くん……」

「まあ頑張れよ」

「……はやっ、見放された!?」



 30分後――




「誰だ俺の机の中にコーラ入れた奴!?」

「はあ、俺ですが……」

「加納、おまえか! なんだよこれ?」

「いや、課長コーラ好きだから一本どうかなと思って」

「欲しい時は自分で買うっての!」

「いや、いつも迷惑をかけているお詫びに――」

「だったら仕事しろ! うわ、ぬるいなこれ!」

「飲んでる!?」



(結局賄賂かよ……)←古賀君

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