1月5日
あけましておめでとうございます。古賀です。
新年一発目なのにこんな話題で申し訳ないのですが、僕の同僚のヅラの話をしようと思います。
加納君は不器用で要領の悪い男なのです。
ミス、失敗が多いくせに、下手にいいわけをしてよく課長の血圧を上げています。
あと動揺すると、額にぶっとい血管が浮かぶので、ああこいつ今いっぱいいっぱいだなってすぐわかります。
ついでに言うと、帰国子女らしいので言語力もあまりないです。
何が言いたいかというと日本語がおかしいです。
「思春期を外国で過ごしたからあまり日本語が得意でないんだよねえ」
とか本人は言っているけれどそれ以前の問題だと思います。
ついでにいうと漢字読めない、話聞けない、理解できない。
最悪です。
そんな加納君の一日を紹介しましょう。
AM9:20
こそこそと朝から4ちゃんねるを見ていた加納君は、課長に呼ばれてビックリしながら立ち上がりました。
慌てて立ったので腿を思い切り机にぶつけていました。
「は、はい。何スか課長?」
「加納、おまえファックスの使い方わかるか?」
「いえ、わかりません。見た事も聞いた事もないです。ですので使い方もわかりませんね」
思いっきり、しかもきっぱりと言って彼は椅子に座りました。
今時FAXを知らない、使えない人とは凄い時代遅れな奴だなあと俺は呆れました。
見ると、係長も部長も藤谷さんもぽかんとしていました。当たり前です。
すると彼ははっとした顔をして突然立ち上がり
「あ、すいませんできます! ファックスなら!」
と言って課長から書類を受け取って駆けて行きました。
後で聞いたのですが、どうやら加納君は「ファックス」を「パックス」と聞き間違えたらしいです。
なんだよパックスって。
「まったくなー焦ったよ。「パックス」てなんだ? 新手のJAVA言語か? とか思っちゃったじゃんかねえ、ほんとアハハ」
と、無事FAXを終えて帰ってきた彼は、自分の聞き間違いを棚に上げて、勝手に新言語を創造して笑っていました。
いいわけ下手すぎです。
AM10:25
加納君がまた課長に呼ばれました。
「加納、ちょっとコピーお願いできるか?」
「えっ!? コピーッスか!! いいっスよ任して下さい!」
と、自習嫌いの彼は呼ばれた途端、嬉しそうにすっ飛んでいきました。
加納君はコピーには自信があるそうです。本社にいた時、相当鍛錬を積んだといっていました。
まあコピーくらいへたれな加納君でも大丈夫だろうと思い、俺は再び自習に戻りました。
ところがいつまで経っても戻ってきません。
確かに100枚以上もある書類のコピーを5部ですから、時間もかかるはずですがいくらなんでも遅すぎです。
「おっそいなあ。何やってんだ?」
この後会議がある課長は時計を見ていらいらしています。
本当どうしたんだろうと思って俺は様子を見に行ってやったのです。
そしたら加納君はコピー機の前にしゃがみこみ、唸っていました。
なんだかコピー機もこの上ないくらい、いろんな所の蓋が開いていて作動していません。
「加納、どした?」
「あっ、古賀君! コピー機が!」
どうやら紙詰まりを起こしてしまい、直そうといろんな所の蓋を開けていたようです。
しかしいっぺんに8ヶ所も同時に紙詰まりを起こすなんて人はそうそういません。
何をしたらそうなるのでしょう。
仕方なく俺も手伝ってコピー機を直し、ギリギリで課長の会議に間に合わせる事ができました。
「ふう、何とか間に合った。いやーよかったよかった」
加納君も満足そうです。しかし加納君気づいてない。
確か課長は5部コピーをしてくれと言っていたのに、加納君の手元には2部しかない。
また聞き間違えていたようです。それか数が数えられなかったか。
どちらにしろそこまで教えてやる義理もないので俺は自習に戻りました。
後ろからまた課長の呆れ声が聞こえてきました。
PM 0:05
「はあ俺、怒られてばっかだよなあ」
と、昼飯を買った帰り道に加納君は呟いていました。
「俺のせいで課長に迷惑かけっぱなしだよな。仕事忙しそうなのに申し訳ないなあ」
どうやらそれなりに気にして落ち込んでいるようです。
それか俺に慰めてほしいのかもしれません。デコが割れてるし、ホントわかりやすすぎです。
仕方ないから慰めてやろう。
「もっと集中してミスをなくせば、課長も認めてくれるんじゃない?」
「そうだね、俺気をつけるよ。なるべく課長の負担を減らせるようにサポートするよ! まかしとけ!」
「うんその意気だ。頑張」
こいつは立ち直りだけは早いなあ。なんかいきなり元気になったよ。
まあどうせ反省してもすぐ忘れると思いますが。
「そうだ! 今までのお詫びになんか課長にプレゼントを贈ろう! うんいい考えだ!」
賄賂かよ!
「そうだなぁ。肩たたき券とかお手伝い券とかどうかな? 元手かからないし」
父の日かなんかですか? というかなるべくお金がかからないようにして課長の期限を取ろうとしているのが見え見えです。
そんなんじゃなくて仕事した方が課長は喜ぶと思う。
やっぱりバカだ。
PM 3:00
「課長!」
「なんだよ?」
「ちょっと牛乳とガムと板チョコ買ってきます!」
そんな事をいちいち大声で言わなくていいと思います。
ほら、課長怒ってるよ?
PM 4:15
加納君は屁が臭い。
PM 5:30
俺はこんな職場嫌です。
もうこのバカには付き合ってらんない。
こいつにはもう少し要領よい仕事の仕方を覚えてもらいたい。
じゃないともうやってらんない。このゴクツブシめ! 給料泥棒!
俺は帰ります。帰ってスポーツジム行って汗流す。
バイバイ加納君! もう知らない!
――と、帰り際の古賀君の目は語っていた気がします。
新年早々アクシデントが多かったなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます