12月10日

 仕事というのはポーカーフェイスに限ります。顔に出るとまず損をする事が多い。

 俺なんか顔に出る他にデコにも出てしまうので、損しまくりです。

 例えば課長から仕事を頼まれたとしましょう。


<古賀くんの場合>


「古賀」

「はい」

「明日の進捗会議で書記をやってもらいたいんだけど」

(やば、あれ大変なんだよな)


 と、思いつつも彼は顔に出しません。

 素知らぬ顔でコクンと頷きます。


「頼んでいい?」

「はい、わかりました」

「じゃよろしく」


 流石古賀くん完璧。大仏の如く完全冷静ポーカーフェイス(なんとなく古賀君は仏像に顔が似ている気がする)

 とまあこういう感じで、すんなりと「嫌だ」とか「めんどい」とかを表情に出さず、仕事のやり取りをするのが社会人なわけです。

 ところが俺の場合はこうなります。


<加納の場合>


「ヅラ」

「ヅラじゃありません課長」

「ちょっとね、設計書の修正を頼みたいんだけど」


「!?」(ワードってホントむかつくんだよなあ)


「どう?頼んでいい?」

「(´□`)」

「なんだよその顔は……」

「いえ、何でもないです」

「嫌そうだなあ、じゃあいいよ頼まないから」

「いえやります。任して下さい!」

「なら、最初からそういえ」


 というように、いらない所で印象を悪くしてしまいます。

 顔に出ると損だなあ。しかし、最近評判も悪いのできちんと仕事をして行動でやる気を示さねばなりません。

 表情に出るのはそのうち直すとしてさっさと仕事を済ませる事にしました。


 まず課長の書いた注釈を元に設計書の修正を進――


 

 読めません。



 相変わらず課長の字は達筆すぎです。

 草書体みたいですよ、なんだこれ? 平安時代?


「こ、古賀くんこれなんだと思う?」

「んー、これは「数」だろ多分」

「じゃ「基数」かな」

「そうっぽくね?」

「よし「基数」決定」




 「種類」でした。

 わかるか!!




「ほんじゃこれは?」

「んー……これはムズイなあ……あ、「イロ」じゃね?」

「「イロ」と――」




 「個」でした。




 よく係長はわかるなあ。

 まあそんなこんなでですね、なんとかその日中に解読修正を終えて提出する事ができたのです。


「課長できました」

「御苦労さま、ちゃんと見直した? ミスない?」

「ええ、うまく解読さえできてれば――」

「は?」

「いえ、なんでも」

「まあいいや、ところでこの前出してもらった交通費清算書なんだけど」

「はあ」

「字が汚いよ。もうちょっと綺麗な字で書きなさい」

「……」

「古賀のを参考に書くように、あいつの字綺麗だよな」

「…………」

「わかった?」




「(´□`)」

「うわ、ブサイク! なんだよその顔?!」




そりゃ顔に出ちゃいます。

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