12月3日

 最近古賀くんが仕事でめきめきと頭角をあらわしつつあります。

 今日も課長に呼ばれてました。


「古賀」

「はい」

「このプログラムを作ってもらいたいんだけど。細かい資料は俺の共有ファイルに入ってるから」

「わかりました、今日中に作ります」


 みたいな会話を最近俺の前でですね、課長と古賀くんが毎日やってます。

 なんつーか古賀くんあれです。できる子です。できる子になりつつある。

 もういっぱしの社会人です。凄いなあ。

 え? 俺? 俺はどうなのかって?

 俺も最近は随分ミスとか少なくなりましたよ! 課長に怒られる事もなくなってきてですね。

 まあ古賀くんほどではないのですが、大分仕事も任されるようになってきましたし。


「加納先生」

「……先生?」

「君にも仕事をお願いしたいんですけど。」

「はい喜んでー! 仕事ッスか!? プログラムっスか?!」

「ん? 違うコピー7部ほど。」(100枚くらいの)

「……」

「嫌ですか?」

「いえ、やります」

「あとそれが終わったらこの書類を別館に届けてね」

「わかりました」

「それが終わったら喫煙所の灰皿取り替えてきてください。」

「わかりました」


 ほらね? 大分仕事任されるようになってきてるでしょ?(雑用の)

 はあ、これがあれか、社会の厳しさか。さすが実力社会。

 ダメな子はやっぱりダメなのかなあ。

 そんな事を思いながら俺はボヘーとコピー機の前の椅子に座り、グルングルンと回っていたのです。

 そしたら藤谷さんがコピーを取りにやってきました。


「加納……何回ってんだ?」

「あ、藤谷さん。すいませんコピー機使ってます」

「そうか……どれくらいだ?」

「あと10分くらいスかね」

「……長いな」

「すいません、課長命令ッス」


 藤谷さんはゴマシオ髭を撫でながら舌打ちをしました。

 相変わらず渋いです。


「どうした元気ないなおまえ」

「いやあ……何か雑用ばかりで、もしかして俺ってダメな子なのかなって」

「そうか……じゃあ猪木の真似をしてやる」

「は?」

「……ナンダコノヤロー」

「………」

「……ナンダコノヤロー」

「………」

「……似てるだろ?」

「はあ」




 藤谷さんそれ、励ましてくれたんですか?

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