11月30日

 いつぞやの藤谷さんとのやりとりを古賀くんに話したのです。

 コンビニに買出しに行った際に。


「――というわけなんだ」

「へえ、藤谷さんがねえ」

「あの人硬派な感じはするけど、実は意外と面白い人なんじゃないかなあ」

「うーん見た目ちょっと怖いし、初対面だと緊張しそうだけど、実はそうかもしれないな」


 と、噂をしていたら藤谷さんがビルから出てきたのです。

 ポケットに手を入れつつ、のっしのっしと。


「あ、藤谷さん」

「おう加納に古賀、なにやってんだ?」

「買出しです」

「仕事中にさぼってんじゃねえ。」

「す、すいません」


 藤谷さんはそう言って、コンビニに向かって歩いていきました。


「こえ~~」

「こえ~どこが優しいんだよ?」


 しかし藤谷さんはそのままはいるかと思ったら、コンビニ前で突然止まったのです。

 そして徐にその場にしゃがんで、屯していたネコを撫でようと手を伸ばしました。

 凄く笑顔で。

 でもネコはビビったように後ずさり、脱兎の如く逃げ出したのでした。

 藤谷さんはとても残念そうでした。


「……意外だ」

「でも逃げられた」

「逃げられたな」

「何見てんだよ!! 早く戻れ!」


 藤谷さんは少し恥ずかしそうでした。

 やっぱりいい人なのかもしれない。

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