イケメン灯台は人材不足です!!

ちびまるフォイ

イケメン元暮らし

今日もイケメンは灯台の頂上に立っていた。


ボ――!


汽笛とともに船が港に停泊する。

どの船もイケメンを目印にして港に戻ってくるのだ。


「ああ、今日も堂元くんは尊いわぁ♪」

「どんなに離れていても見つけちゃう」


「あんたら結婚してるよね」


「「「 イケメンは別腹なのよ!! 」」」


男性が2割、女性が8割となった現代。

船乗りも女性の方が圧倒的に多く、灯台では目印にならない。

そこでイケメンを配置したところ問題が一気に解決された。


管理者は灯台イケメンのもとに給料を支払いに行った。


「やぁ、堂元くん。今日もお疲れさま。はい、給料」


「いりません」

「えっ?」


「ボク、今日限りでこの仕事を下ろさせてもらいます」


「ええええええ!? こっ、困るよぉ!」


「毎日長時間立たされるだけ。それがどれだけ大変かわかりますか!?」


「そ、そうだけど……君がいないと船が戻ってこれなくなるよぉ」


「とにかく決めましたから、それじゃ」


「堂元くん!」


イケメンは灯台を去って二度と戻ってこなくなった。

こうなったら次の灯台用イケメンを探すしかない。


既婚者の船乗りたちの目を引くようなイケメンを。


「いないよなぁ……」


街に出てイケメンを探してみるがあまりの不作に管理者は絶望した。

男性がそもそも少ないこの昨今。

その中でイケメンを探し当てるなんて、4つ葉のクローバーを探すよりも難しい。


――イケイケメンメン イケイケメンメン



「はっ! 聞こえる! 聞こえるぞ! イケメンの足音だ!!」


管理者は音のする方へと向かった。

雑踏に紛れながらも足音の主は周囲とは別格のイケメンオーラを垂れ流している。


「あの! すみません! そこのイケメンさん!」


「はい? なんでしょう」


「灯台イケメンになってもらえませんか!? イケメンが足りなくて困ってるんです!」


「ああ、ごめんなさい。すでにジョニーズ事務所での仕事があるので」


「ちくしょおおおおお!!」


管理者は悔しさのあまり地面に頭を打ちつけた。

やっぱりイケメンなんてどこにも見つからない。


「もうだめだ……イケメンは捕まらないし、明日には船が戻ってくる。

 いったいどうすれば……」


管理者は目の前が真っ暗になった。





翌日、既婚者の船乗りたちを乗せた船がやってきた。

イケメン灯台は結局用意できなかった。


「ああ、船が到着する時間だ。どうすればいいんだろう」


管理者はイケメン不在の灯台で焦っていた。

そこに一人の男がやってきた。イケメンではないので灯台には使えない。


「お困りですか?」


「あなたは……船乗りの旦那さんですね。

 実は灯台に配置するイケメンがいなくって……」


「私に任せてください」


旦那は友人の女性を呼んで、一緒に灯台へとのぼっていった。


「妻は私を必ず見つけてくれますよ。私が目印になるんです」


「それは効果ないんです! イケメンじゃないと見つけてくれないんですよ!」


管理者はすぐに否定した。

見慣れた大切な人の顔よりも、整った人の顔に吸い寄せられる。


旦那が灯台に立ったところでなんの意味もない。

なんの意味も……。



「なっ……! 船が戻ってきてる!!」


管理者は驚いた。

イケメンを使っていないのに灯台めがけて船が猛スピードで戻って来た。


船が港に停泊すると、船乗りは顔を怒りに染めて戻って来た。


「あなた!!! その隣にいる女はだれ!?」






「どうです? すごいでしょう。私の妻は浮気をしていると

 どんな遠くにいてもかぎつけて戻ってくるんですよ」

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