まーげい③

「「トナカイさん!!!」」

私とユキヒツジさんは、倒れたトナカイさんの元へ向かいました。

あと少しで辿り着く、そんな時でした。セルリアンが私達の方に目を向けてきました。



敵意。

最初のうちは敵意はほぼなかったようでしたが、何度も何度も攻撃をされた今、私達には敵意が向けられていました。

それを感じ取った私は、無意識のうちに威嚇をしていました。いや、威嚇するしかできなかったのです。

先ほどの光景が、脳裏に浮かび上がりました。優勢だったトナカイさんが一瞬でやられてしまった、あの光景が。次にああなるのは、敵意を向けられた私。そう思うと、恐怖でその場から動くことができなかったのです。



「マーゲイ、逃げて!!」

ステージから、プリンセスさんの声が聞こえました。たしかに、セルリアンの例の尖った部分に、どう見ても雪玉ができ始めています。逃げなければ、トナカイさんと同じようになってしまうでしょう。そう思っても、私は体を動かすことができませんでした。




………PPPぺぱぷのみなさん、今までありがとうございました。マネージャーをできて、とても楽しかったです。






ドゴォッ!!!!




辺りに鈍い音が響きました。さて、発射されたであろう雪玉に当たったであろう私は………




「………あれ?」

無事でした。それどころか、むしろ、無事じゃないのは、目の前にいたセルリアンでした。頭の向いている方向が変わって、その反動でまた倒れてしまっています。頭の向きが変わったために、雪玉の発射される向きも変わって、私は無事だったのでしょう。いったい、誰がこんなことをできるのでしょうか。きっと、私のすぐ前にいる、白い毛皮のフレンズさんがやってくれたのでしょう。


「ホッキョクグマさん!!」

ユキヒツジさんがその白い毛皮のフレンズさんをそう呼びました。

ホッキョクグマさん。大きな熊手を持っていて、いかにもパワフルで強そうなフレンズさんです。

「みんな無事か?遠くから大きな音が聞こえてきたから、近くまで来てみると、このセルリアンが見えてね。最善を尽くして、急いできたんだよ。」

ホッキョクグマさんは、そう言いました。

「よかった…私達の歌声で助けが来てくれた…」

ステージから、コウテイさんがそう言いました。PPPぺぱぷのみなさんは、その言葉で緊張の糸が切れたのか、全員よろよろと腰を下ろしていきました。

お疲れ様です。本当にありがとうございました、もう一生ついていきます。

心の中でそう思いました。




「………なるほど、攻撃し続けて、吸収できる雪をなくしていくのが最善の方法か…」

セルリアンが起き上がろうともがいている隙に、ホッキョクグマさんに事情を説明しました。

「どうでしょう、大丈夫そうですか?」

私がおそるおそる聞いてみました。

「大丈夫、最善を尽くすよ。みんなは危ないから下がっていてくれ。あとは、私に任せて!!」

ホッキョクグマさんがそう言って構えるとほぼ同時に、セルリアンも起き上がりました。なんとかして、顔ももとの向きに戻したようです。いったいどうやったのでしょうか。

「ホッキョクグマさん、私の特性アロマをどうぞ!」

「ん、ああ、ありがとう、助かるよ。よし、行くよ!!」

ホッキョクグマさんは、ユキヒツジさんのアロマでさらに強くなってセルリアンに向かっていきました。

「………じーー……」

ところで、なんでユキヒツジさんは、アロマを使って欲しいかのように私を見てくるのでしょう。

「さあ、早く離れましょう。犠牲になったトナカイさんも…一緒に…」

私は、倒れているトナカイさんを見て、涙をこらえながら言いました。

「そうですね。気絶しちゃってますし、介抱してあげないといけませんもんね。」

ユキヒツジさんはそう言いました。なんだか、私は変な勘違いをしていたようで、恥ずかしくなりました。




その後の戦況は、ホッキョクグマさんがずっと優位に立ち続けていました。頭の向きを変えさせられたり、倒されたりしたために、セルリアンはさらに怒って、攻撃の手を激しくしていたのですが、そんな中でもホッキョクグマさんは攻撃を交わし続けていました。しかも、力強い攻撃を浴びせながら。そのおかげもあって、雪はどんどん吸収されていき、遠くからでもわかるほどに辺りの雪はなくなってきていました。


「このままならいけそうですね…!」

ユキヒツジさんは、安心したように言いました。私も、勝てそうな気がしてきました。

「見て見て。セルリアンの体、少し小さくなってきてるよ。」

「それに、攻撃もさっきより激しくないぜ。弱ってきてるんだな。」

フルルさんとイワビーさんが言いました。たしかに、そんな感じはします。勝機は本当に見えてきています。


その後、セルリアンはみるみる小さくなっていき、ついに、その時は来ました。

「みなさん!石が見えましたよ!!」

ジェーンさんがそう声をあげました。背中に石がたしかに見えました。

「ホッキョクグマ!背中に石が見えたわ!!ぱっかーんとやっちゃえ!!」

プリンセスさんが、即座にマイクを通してホッキョクグマさんに伝えました。それに気付いたホッキョクグマさんは、背中に回り、高くジャンプして………




ぱっかーーん!!!




見事、石に命中しました。が、ここで問題が。どうやら、雪の下にセルリアンの本体があるらしく、石が割れたことにより、本体が弾け飛んだのですが………


「あっ………」


遠くから見ていた私達は、一斉に声を漏らしました。本体についていた雪がすごい勢いで拡散したのです。それは、だいぶ離れたこのステージ上にも雪が降りかかってきたほど。

では、その拡散元のすぐそばにいたホッキョクグマさんはというと…

「ホッキョクグマさん!!」

またも全員一斉に声をあげました。雪の圧力で、空中に高く吹き飛ばされてしまっていました。そのまま、雪の上に落ちていきました。

私達は、急いでホッキョクグマさんの元に向かいました。どうやら、雪がクッションになって、落ちた時に怪我はなかったようです。が、

「痛っ…!」

ホッキョクグマさんは、右手をおさえていました。弾け飛んだ雪の塊が右手に当たったようです。

「最善を尽くしたつもりだったが…最後にやってしまったな。」

ホッキョクグマさんは、少し悔しそうに言いました。でも、一応は、みんなほとんど無事でいられたので、私は安心しました。



しばらくして、ユキヒツジさんが空を指差して、

「あれ、なんでしょうか?」

と、言いました。見てみると、何か光っているものが浮かんでいます。今まで、セルリアンがいたところの上に。私達が身構えていると、その光っているものは、ゆっくりと飛んでいきました。

「……私、ちょっと追いかけてきます。ライブまでには必ず戻るので、大丈夫です。」

私は、なんだか直感的に、追いかけなければならない気がしました。私は、他のフレンズの返事も聞かずに、すぐにその場を走っていきました。ライブ会場を後にして。






「マーゲイのやつ、どうしたんだろうな。」

「ねえねえ、それよりみんな、セルリアンがいたところに、なんか面白いものがあるよ。」

「なんだろうこれ…板かな?」

「なんだか、今日は変なものが色々見つかりますね。」

「ユキヒツジとホッキョクグマ、この板に何か見覚えあったりしないかしら…って、ユキヒツジは?」

「ちょうど今、『私も追いかけてきます』って言って、行っちゃったところだよ。なんか、慌ててたように見えたよ。」

「慌ててた…?なんでかしら…?」






後ろから、誰かがすごい勢いでやって来る気配がします。私はとっさに身構えました。すると、

「はあはあはあ…追いつきました、マーゲイさん…」

息を切らしてきたのは、ユキヒツジさんでした。

「どうしてここに?」

私が尋ねると、

「実は…伝えなければいけないことがあるんです。」

深刻そうにユキヒツジさんは答えました。

「とりあえず、あの光を見失わないように、追いかけながらそれは聞きます。大丈夫ですか?」

「はい…」

ユキヒツジさんは、尚も深刻そうな顔で言いました。






「多分…さっきのセルリアン…私が原因で現れたんだと思います。」






「……え?」






ゆきやまちほーの冷たい風が、理解の追いつかない私と、ユキヒツジさんの間に吹きました。

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とあるフレンズの冒険談 しれん @Siren_927

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