まーげい②
「なんなの、これ…」
「おっきいねー。」
「うーん、不思議だな。」
「でも、いったい誰が…?」
「それになんのために作ったんでしょうかね…?」
そんな時、この困惑を振り払う、いい考えが思いつきました。
「えー、こほん!!」
わざとらしく、私は咳払いをしました。そして、
「きっと、昨日の夜にライブを楽しみにしていたフレンズが、他のフレンズにもライブの楽しさを味わってもらいたいと思って、みんなが来られるように、注目をされるような大きな雪だるまを作ってくれたんです。ですので、私達は気にせずにライブを始めちゃいましょう!!」
と付け加えました。
「そ、それもそうね。みんな、ライブの準備にとりかかるわよ!!」
プリンセスさんが、全員を代表してまとめてくれました。ありがとうございます。
その後、トナカイさんを筆頭に全員でステージの雪かきをしたり、色々な機械の点検をして、ライブの準備は着々と進んでいきました。
「それじゃあ、準備も終わったところで…待たせたね、これから、
コウテイさんが喋り、そして、私達が歓声をあげたり拍手を送ったりすると、コウテイさんは少し照れくさそうに顔を赤らめました。
「三人でこの盛り上がりなら、さらに増えたらもっと盛り上がること間違いなしね!たくさんのフレンズが来てくれるように、みんな、全力でいくわよ!!」
「「「「おー!!!!」」」」
こうして、コウテイさん発案、
ライブが始まってすぐ、問題は起こりました。一曲目の最後のサビの前の間奏に入った時でした。
「あっ!!」
「みんな気をつけて!!」
ライブに夢中になっていた私達は、ステージに立っている五人の声でそのことについて気付かされました。後ろにいた雪だるまが今にも倒れそうにゆらゆらと揺れていました。私達は、慌ててその場から移動して、
ドシーン!!
間一髪、雪だるまを避けることができました。
「ふう、危なかったですね…」
「雪だるま作るなら、ちゃんと倒れないように作ってよね!!」
「そうですね。まあ、目印になるようなものは倒れちゃいましたが、私達は気にせずにライブを楽しみましょう。」
そんな私達の無事を確認した
一つ問題が起こると、連鎖的に問題が起こるのでしょうか、またまたすぐに問題が起きました。一曲目が終わり、二曲目にさしかかろうとしていた時でした。
「あれ、なんだか、あの雪だるま、ちょっと動いてるように見えませんか?」
最初に異変に気付いたのは、ユキヒツジさんでした。そんなまさかと見てみると、確かに震えるように動いています。
「きっと、スピーカーの音と共鳴して震えているんですよ。」
「でも、今は音楽も歌も流れてないよ?」
私の考えは、トナカイさんにすぐに亡き物とされてしまいました。
「えっ、じゃあ、なんで動いて…」
そう私が言いかけた時でした。なんと、雪だるまがひとりでに立ったのです。
グオオオォォォ!!!
立つと同時に雄叫びをあげた雪だるま。
「雪だるま型のセルリアンだ!!」
トナカイさんが大きな声をあげて、武器を構えました。私とユキヒツジさんも本能的に、身構えました。
「私達も行くわ!!」
プリンセスさんがそう言うと、
「危険ですので、みなさんは離れていてください!!」
私は、思っていたよりも気迫のこもってしまった声でそう発していました。いつもなら何か言い返してくるのですが、どうやら、私の雰囲気がいつもと違っていようで、五人はステージから降りることはしませんでした。それほど、緊迫した状況だったのです。
さて、離れていてくださいと勇敢に言ったものの、どうしましょうか。ユキヒツジさんも武器は持っていますが、攻撃というよりは、他のフレンズの援護に使うもののようです。私はちょっと素早く動けますが、あまり戦いには慣れていません。唯一、トナカイさんが武器の使いに長けていて、戦うことができるくらいです。
はっきり言って、勝機はゼロです。
こんなピンチな時にこそ、頭はフル回転してくれるもの。名案が浮かびました。
「
私は、思いついた案をすぐに言い放ちました。
「私たちにできることがそれなら…たとえ声が枯れようとも、歌い続けるわ!!みんな、いくわよ!!」
プリンセスさんがそう言うと、ライブはそのまま続行されました。
かくして、ライブの中で戦うという、奇妙な戦いが始まりました。
グオオォォ!!!
まずは、私がさっきの雄叫びを真似して、セルリアンの注意をステージとは逆の方向に向かせました。
「トナカイさん、これをどうぞ!私特製のアロマです!」
「えっ、なんでこんな時に…あ、でもいい香り…なんだか、力が湧いてきた気がするよ!よーし、行くよー!!」
その隙に、ユキヒツジさんはトナカイさんになにかの匂いを嗅がせていました。その匂いによって、どうやらトナカイさんは強くなったようです。
「おおー!!いつもより速く動けるよ!!これなら楽勝だよ!!」
トナカイさんも、それを実感している様子。ここで、一つ気になることが。
「ユキヒツジさん、さっき嗅がせてたやつ、なんか色々と大丈夫なんですか?」
「えっ?私の特製のアロマですよ?」
それ、答えになってません。なんだか怖いので、もう聞かないようにしましょう。
「うう〜、攻撃しても周りの雪を吸収して、すぐに回復しちゃうよ〜。」
特製アロマの効果があっても、疲れは出るようで、一旦、戦闘から離脱してきたトナカイさんは、そう言いました。確かに、トナカイさんが攻撃して、雪が削れたところも、いつのまにか元の状態に戻っています。
「周りの雪を吸収…雪はいくらでもありますから、厄介ですね…」
ユキヒツジさんも不安そうにしていました。
ここで、私は、眼鏡をクイッとあげてセルリアンの方をよく見てみました。
「見てください、セルリアンの周りの雪は少しですが、なくなっています。セルリアンはあの場所から動かなさそうなので、あの場所の雪がなくなれば、勝機は見えてきますよ!」
私がそう言うと、
「ほんとだ!じゃあ、今までのは無駄じゃなかったね!よーし、やるぞー!!」
トナカイさんはさらに気を引き締め、
「それでは、アロマをどうぞ〜。」
ユキヒツジさんは、トナカイさんに特製アロマを嗅がせました。私にもどうかと勧められましたが、怖かったので断りました。
その後、私達も遠くから気を引いて、トナカイさんの攻撃のチャンスを増やしたりして、戦い続けました。
「この調子なら、無事にやっつけられそうですね。」
ユキヒツジさんが私にそう言いました。私も、それに答えるように軽く頷きました。
そのすぐ後のことでした。
ボンッ!!!
セルリアンの鼻なのか口なのかよくわからない尖った部分から、物凄い速さで雪玉が発射されました。
「あぶない!!」
私が声を上げた時には、もうすでに遅かったのでした。狙いはすぐ近くにいたトナカイさん。ほぼ垂直に発射された雪玉は、すぐ下にいたトナカイさんの頭に直撃しました。
「うっ…!ああ…」
トナカイさんは、持っていた武器と共に、その場に前のめりになって倒れてしまいました。
戦況は一気に逆転してしまいました。
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