ばれーぼーる①
「よーし、じゃあ早速、特訓といこうか!」
お城に着き、ほんの少しだけ休憩してから、ライオンさんが言った。
「そうですね。お願いします!」
「じゃあ、私は他のみんなを呼んでくるから、シマちゃんは外で待っててね〜。」
ライオンさんはそう言うと、お城の中を回り始めた。私は言われた通りに、外に出て待っていた。
しばらくすると、ライオンさんと他のみなさんが勢揃いでやってきた。
「お待たせ〜。みんな揃ったし、これから、シマちゃん強化特訓を始めるよ〜。」
ライオンさんの声は相変わらずゆるゆるとしたものだったけれど、私の気は引き締まった。
「はいっ、お願いします!!」
「お〜、いい気合いだね。じゃあ、まずは、軽くルール説明をしようか。ラビラビ、頼んだよ。」
「えっ、私ですか?わ、わかりました…」
どうやら、私の強化特訓に関しては、なんの打ち合わせもしていない様子。雲行きが怪しくなってきた気がした。
「えーっと、図書館にあった本では、色々と細かいルールが書いてあったみたいだけど、博士が簡単にしてくれたから、そのルールを教えるね。まずは…」
ラビラビさんは、そうしてルールをぽつぽつと言い始めた。
まずは、点の入り方。相手に攻撃して相手の陣地に落ちたら一点。相手の攻撃を防御して、そのまま鞠が相手の陣地に落ちたら一点。相手が自分の陣地に鞠を落としたり、戦場の枠の外に鞠を出したら一点。
勝敗の決め方は、二十五点取った方が勝ち。本来のバレーボールだと、二十四点で同点になったら、それ以降は、先に二点取った方が勝ちになるらしいけど、それはなしとのこと。
そして、試合中の動き方のルール。自分の陣地内なら、どこにいても構わない。自分の陣地内で鞠に触れるのは全員合わせて三回まで。一人のフレンズが、二回連続で鞠に触れてはいけない。
大体こんな感じのルールだった。よくわからないところもあるけれど、練習していくうちに覚えるだろう。
「ルールもわかったことだし、早速体を動かそう!まずは防御の練習をしよう。みんな、任せた!」
ライオンさんはまた部下の三人に任せていた。急に任された三人は、打ち合わせをしていた。本当にこれで大丈夫なのだろうか。
しばらくして、ツキノワグマさんが私の方に来て、
「防御については私が教えるね。相手からの攻撃を防ぐためにとても大切な役割だよ。基本的に、こうやって、手を組んで腕を前に出して、鞠を受け止めるんだ。」
と、実践しながら教えてくれた。私も見よう見まねでやってみた。
「こ、こうですか?」
「そうそう、そんな感じ!じゃあ、実際に鞠を受け止めてみようか。ラビラビ、オーロックス!お願い!」
「えっ、ちょっ」
いきなりはさすがに早すぎるんじゃないだろうか。と、見ると向こう側には鞠を持つラビラビさんと、やる気十分、腕を振り回しているオーロックスさんがいた。
「オーロックス、最初は優しめでやってね。それっ。」
「わかってるって…よっと。」
ラビラビさんが高くあげた鞠は、オーロックスさんの強靭な腕の力を受けてすごい速度で私の構えている腕に飛んで来て…
「いっ…たあああぁぁぁい!!!」
跳ね返された鞠は宙を舞い、地面に転がった。
「おおー、ナイスブロック!なかなかいい感じに受け止められてたよ。じゃあ、どんどんいこっか。」
「さっきよりも少し強くてもいいかも。」
「了解!どりゃっ。」
「待ってくださいまだ準備ができてな」
その後も、オーロックスさんの強烈な攻撃は、何度も私の腕に強い痛みをもたらした。けれど、何回もやっているうちに、だいぶ慣れて来てしまっていた。
「よーし、みんなお疲れ〜。そろそろ休憩挟もうか。」
ライオンさんの声がかかるまで、私の防御の特訓は続いていた。疲れ切った私は、すぐに水飲み場に向かった。水を飲み、体に水を浴びた。疲れが少しは癒されたような気がした。
しばらく水と戯れていると、ライオンさんの招集がかかった。疲れもだいぶマシになっていたから、私は急いでライオンさん達の元へ向かった。
皆さんは、準備万端な様子で私を待っていた。どうやら、私が水と戯れていた間に、特訓について打ち合わせをしたようだ。
「次は攻撃の特訓だ。指導はオレに任せろ!!」
やる気満々のオーロックスさんが、力強い声で言った。
「はい、お願いします!」
私も、威勢良く返事をした。
「攻撃については、さっき散々見てきたからわかると思うけど、ラビラビが渡してくれた鞠を、高くジャンプして思いっきり相手の陣地めがけて打ち込むんだ。簡単だろう?」
オーロックスさんが攻撃の仕方について軽く教えてくれた。確かに、割と簡単そうだ。
「まずはジャンプしないで、その場で思いっきり地面に打ち込んで練習だ。ラビラビ、よろしく。」
「わかった。じゃあ、今から鞠を軽く投げるから、それをはたき落とす感じでね。それっ。」
オーロックスさんに任されたラビラビさんはそう言うと、私の方に鞠を投げてきた。それを…
パシッ
強くはたき落としたつもりだったけれど、あまり強くははたき落とせなかった。思っていたより難しい。
「タイミングをもっと合わせるんだ。ちょうど手が綺麗に振り落とせる場所で鞠に当たるといい。」
「なるほど…もう一回お願いします!」
オーロックスさんのアドバイスを参考に、もう一回、また一回と数を重ねていった。
バシンッ!!
特訓を始めてからだいぶ経ったとき、綺麗な音を響かせることができるようになってきた。
「よし、だいぶ良くなってきた。次からはジャンプして打ってみるんだ。ジャンプのタイミングも重要になるから、そこらへんも考えてやるように。」
「はいっ!!」
私が返事をすると、
「いくよ。よっと。」
ラビラビさんは鞠を高く上げた。
それから私はジャンプをし続けた。そもそも、ジャンプのタイミングが合わなかったからだ。まずは、ジャンプのタイミングを合わせることに集中した。タイミングが合うようになって、始めて鞠をはたき落とした。地面に足をつけたままのときとは感覚が違って、やりにくかったけれど、こっちはすぐに慣れることができた。
バンッ!!!
空が赤くなってきた頃には、綺麗な音が何回も何回も、広いへいげんに響き渡るようになった。
「よーし、今日はここまで!だいぶ上達したね〜。疲れてるだろうし、今日はゆっくり休んで、明日に備えよう!」
ライオンさんが起き上がって言った。たしかに、ずっと鞠を受けたりはたき落としたり、ジャンプしたりし続けたから、久々にだいぶ疲れた。
ただ、一つ不安なことが。
「あの…実際に戦う雰囲気は掴まなくていいんでしょうか…?」
恐る恐る聞くと、
「んー、大丈夫大丈夫!ぶっつけ本番でなんとかなるよ!」
と、ライオンさんはゆるーく答えた。
これはダメかもわからない…
そう思いながら、私はお城に戻った。
その後、みんなで色々と話しながらじゃぱりまんを食べた。その後は、溜まった疲れからか、すぐに眠りにつくことができた。
「ほら、起きて起きて。もう合戦始まっちゃうよ。ヘラジカ軍はもう来てるよ。」
ライオンさんの声で私は起きた。そうだった、今日は合戦の日だった。私は急いで昨日の特訓場所へ向かった。
昨日の特訓場所に着くと、そこには、やる気満々のヘラジカ軍の皆さんがいた。ヘラジカさんを筆頭に、シロサイさん、カメレオンさん、ハシビロコウさん、そしてキリン…と、ヤマさん。
「あれ、ヤマさんは出ないんですか?」
私がふと気になって聞くと、
「私、トゲトゲで鞠を割っちゃうから審判をするですぅ。あと、人数合わせですぅ。大丈夫ですぅ、いつも鞠を使う競技では審判をしているので、慣れているですぅ!」
と、なんだか自信満々に答えていた。
「おーい、シマちゃーん、整列するよ〜。こっちきなよ〜。」
「あっ、はい」
ライオンさんに呼ばれたので、私は呼ばれた方へ向かった。
「それでは、ヘラジカ軍対ライオン軍のバレーボール対決を始めるですぅ!礼!ですぅ!」
ヤマさんの掛け声で全員一斉に、よろしくお願いしますと言いながら礼をした。合戦の始まりだ。
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