わかれ②
時間も忘れてゴロゴロしていると、いつのまにか辺りは暗く、夜になっていた。
「そういえば、キリンやセンちゃんさん、オルマーさんはどこにいるんですか?」
私は、少し気になり、ライオンさんに聞いてみた。
「ああ、きみの仲間だね。みんなヘラジカ軍の方にいるよ。」
ライオンさんは、最初に話した時とは全く違うゆるゆるとした声で教えてくれた。
ヘラジカさんは…たしか、ライオンさんと戦う予定だった、オルマーさん達の仲間の大将だ。私は、意識を失う前の記憶から推測した。
「今日はもうだいぶ暗くなっちゃったし、ここで休んでいきなよ。明日、向こうまで送っていってあげるからさ。」
ライオンさんは、私に提案した。
みんな、私のことを心配しているかもしれない。一刻も早く、無事だと伝えにいきたいけれど、確かに外は真っ暗だ。これでは移動もままならない。
「そうですね…お願いします。」
私は、そう返答し、このお城で一晩過ごさせてもらうことにした。
その後も、じゃぱりまんを食べたりなどしたけれど、やっぱり、ただただゴロゴロとして時間は過ぎていった。と、そんな時、
「そういえば、きみ、合戦に参加しにへいげんに来たって聞いたけど、やってみる?」
と、ライオンさんに聞かれた。
「か、合戦ですか…?どんなことをやるんですか?」
まずは、合戦についてしっかり聞いておこうと、私は、ライオンさんに聞き返した。
「んーっとねー、次の合戦は、この鞠を自分の陣地に落とさないようにして、相手の陣地に入れる遊びをやるんだ。たしか、『ばれーぼーる』?っていう遊びだったかな?」
ライオンさんは、近くから丸い鞠を持って来て教えてくれた。
「なんだか難しそうですが…楽しそうですね!やってみたいです!」
私は、ばれーぼーるに興味が湧き、やってみたいと思った。
「よーし!それじゃあ、明日、その件についてヘラジカとも話をしよう!合戦は明後日だから、明日は練習あるのみだね!」
ライオンさんは、元気よく言った。
「お、おー!!」
私も、合戦が明後日ということに、少し戸惑ったけれど、ライオンさんにつられて掛け声をあげた。
「それじゃあ、明日はバシバシ鍛えてあげるから、今日はもう休みなよ。私もねむくなってきちゃったしね。ふあぁ〜、おやすみ〜…」
ライオンさんは、さらにゆるゆるとした声でそう言うと、すぐさま寝息を立てて寝てしまった。
「…おやすみなさい。」
私も、小声でそう言うと、すぐに眠りについた。
カーン、カーン…
何かがぶつかり合うような音が聞こえて、私は目が覚めた。日が昇り始めたばかりなのか、まだ外はほんの少しだけ暗かった。
周りを見ると、ライオンさんはいなかった。私は、せっかく起きてしまったわけだし、この音がなんなのか気になったので、音のする方に向かった。
どうやら、音はお城の外からするようなので、私は、お城を下って外に出た。すると、そこには、ライオンさんとオリックスさん、それとたしか、昨日、ライオンさんと一緒にいたフレンズさんの一人と、見知らぬフレンズさんの、計四人のフレンズさんがいた。
「おはようございます。」
私が四人に挨拶をすると、四人は私の方に振り向いた。
「あー、起こしちゃったかな?悪いね〜。」
ライオンさんは、地面に寝転がりながら言った。
「いえ、全然お構いなく。ところで、みなさん、何をしてらしたんですか?」
私が聞くと、
「部下たちの修行を見てやってたんだ。毎朝、こんな感じでいつもやってるんだよね。ほら、お前たち、自己紹介しな。」
ライオンさんは、私に何をしてたか教えつつ、他の三人にそう言った。
「私はアラビアオリックス。よろしく。」
「『ラビラビ』とでも呼んであげてね〜。ね、ラビラビ?」
「た、大将〜…それは…ま、まあ、好きに呼んでくれて構わないよ。」
ラビラビさんは、少し恥ずかしそうにそう言った。
「オレはオーロックスだ。よろしくな。」
「シマちゃんが私を襲った時に、真っ先にシマちゃんを取り押さえた子だよ。パワーがすごいんだよね。」
「その通りだ!パワーなら誰にも負けないぜ!!」
サーベルタイガーさんのように、目に光が見られないオーロックスさんは、力強そうなポーズをしながらそう言った。
「初めまして、私はニホンツキノワグマだよ。ツキノワグマでいいよ。よろしくね。」
「今までの合戦では、ちょっとした事情で、全然戦うことがなかったんだけど、実力は大したものだよ。」
「お城の警備をしてたんだけど、ヘラジカ軍が私の担当の所まで来ることがなかったんだよね。今は、色々な遊びができて楽しいね。」
ツキノワグマさんは、穏やかな口調でそう言った。その後、私も軽く自己紹介をした。
「さて、じゃあ、まだ結構早いけど、シマちゃんをヘラジカ軍の方まで送ってくるよ。あとは各自、ほどほどに修行しててね〜。」
「「「はっ!!!」」」
ラビラビさん達は、ライオンさんにビシッと返事をした。
「さ、シマちゃん、準備はいいかな?」
「はい、大丈夫です。」
「よーし、それじゃあ、しゅっぱーつ!!」
そうして、私とライオンさんは、ヘラジカ軍の方へと向かっていった。
日も昇ってきて、辺りがだいぶ明るくなってきた頃、私たちは竹林に着いた。その後も、竹林の中をずんずんと進んでいくと、昨日いた場所が見えてきた。
「おっ!シマちゃん、おかえり〜!おーい、みんな〜!シマちゃんが帰ってきたよ〜!!」
辺りを見渡していたオルマーさんが、中にいるであろうみなさんに、大きな声でそう伝えた。すると、まず始めに、キリンが猛ダッシュで私の方に向かってきた。
「し、シマちゃん!!大丈夫!?無事だった!?怪我はない!?それからそれから…」
キリンは、心配そうに私に問い詰めた。
「あ、ありがとう、キリン。私は全然問題ないよ。」
私がそう言うと、キリンはとても安心していた。
次に、センちゃんさんと、オルマーさんがやってきた。
「無事でよかったです、シマさん。」
「いや〜、センちゃんの言う通りだね。ちなみに、ここだけの話、センちゃんは不安であまり眠れていなかったんだよ。だから、ただ起きててもあれだからって、さっきも私と反対側を見張ってたんだけど、私の声を聞くと、すぐに反応してね…」
「オルマー、余計なことは言わなくていいです。さて、シマさんの無事も確認できたことですし、出発しましょう。」
センちゃんさんは、オルマーさんのマシンガントークを遮ってそう言った。
「出発って、なんですか?」
私が聞くと、
「オルマーと再会したので、ダブルスフィアとして早速、仕事をこなさなければならないのです。急で申し訳ありません。」
センちゃんさんは、そう言うと頭を下げた。
「そんな、謝らないでください!…ということは、ここで一旦お別れ、でしょうか?」
「はい、そうなってしまいます。」
センちゃんさんは、少し寂しそうにそう言った。
「センちゃん、こう見えて寂しがり屋だからね。」
「オルマー、余計なことは…でも、シマさん、キリンさん、今まで短い間でしたが、皆さんと旅ができてとても楽しかったです。ですので…また一緒に色々な所を冒険しましょうね。」
センちゃんさんは笑顔でそう言った。
「はい!センちゃんさんもオルマーさんも、お仕事頑張ってくださいね!」
「センちゃんもオルマーも、無理しすぎないでね。」
「大丈夫!私は、適度にサボりながら仕事をしっかりこなしていくからね!」
「…それは自慢になりません。」
私達は、笑いに包まれた。
「それでは、皆さん、またお会いしましょう。」
「じゃーねー!みんな、私のいない間、合戦頑張ってね〜。あ、あと、シマちゃんとキリン、仕事終わったらへいげんに帰ってくるから、へいげんにいれば絶対センちゃんにも会えるし、そうすればセンちゃんも喜ぶだろうから…って、センちゃん、引きずらないで〜!!」
センちゃんさんと、引きずられたオルマーさんは、そうして竹林を後にした。私達は、姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
と、その時だった。
「おお…お前がシマかな?ちょっと、私と手合わせしてくれないか?」
大きなツノを持った、大柄なフレンズさんが私の手を掴んでそう言ってきた。
「え、ええ?」
私は、ただただ混乱するばかりだった。
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