じけん②

「犯人は……あなたよ!!…いえ、あなた達よ!!」



キリンはそう言って、二人のフレンズさんを指差した。



「「なんで私達なのですかああああ!?」」



二人のフレンズさんは揃ってそう言った。そう、博士さんと助手さんだ。

「わけがわからないのです!どう考えたらその結論に至るのですか!!」

「詳しく説明するのです!!」

二人は普段は想像もつかない大きな声で言った。

「仕方がないわね。犯行の動機、そして手口について説明してあげるわ。」

キリンはそう言って、説明を始めた。




「まず、博士と助手は、調べ物や話し合いをしているのに、私たちが読み聞かせでワイワイと楽しんでいるのを、少しうるさく思っていた。そうね?」

「それはそうです。確かに、なるべく声を抑えてはいたようでしたが、少し騒々しくはありました。」

「としょかんではお静かに、なのです。」

「ええ、そこは私たちも悪かったわ。そして、それの意趣返しとして、私たちの楽しんでいたギロギロを取って、困らせてやろうと思った。これが動機ね。」

「た、たしかに動機としては十分かもしれないけど…仮にそうだとしても、博士さんと助手さんが、そんなことするのかな…?」

「甘いわ、シマちゃん。この二人ならではの手口、それと合わさってこの疑いは確信へと変わるのよ!!」

「な、なんなんですか一体…!聞かせてもらおうではないですか!」

「どんと来い、なのです。」

「まず、この二人は、音を立てずに空を飛ぶことができる。それなら、暗闇に紛れて飛んでいれば、寝ているフレンズはもちろん、起きているフレンズにも気付かれにくいんじゃないかしら。それなら、私が寝ている間も大事に持っていたギロギロを、気付かれずに取ることも可能じゃないかしら。」

「確かに、それはありえるかもしれませんね。ですが、一つ不可解な点があります。」

「ギロギロ、その不可解な点とはなにかしら?」

「二人はヘビクイワシさんとずっと話していました。それでは犯行は不可能なのでは?」

「フッフッフッ、ギロギロ、あなたもまだまだ甘いわね。それについても、この二人だからこそできたのよ!なぜなら…」




「二人は見た目がそっくりで、片方がいなくなっても気付かれないからよ!!」

キリンは自信ありげにそう言って、満足感に浸っていた。

「………」

キリン以外の全員は沈黙に包まれていた。

「さあ!容疑者の二人はこの完璧な推理に反論もできないようね!」

キリンは沈黙を破るように言った。

「キリン…それってちょっとさ…」

「無理がありすぎない?」

「まあ、キリンらしいといえばキリンらしいわね。ウフフ。」

「全く、呆れたのです。どんな名推理が飛び出すかと思ったら、とんだ迷推理だったのです。」

「我々も雰囲気を出すために乗ってあげていましたが、そんなんじゃあ乗る気にもならないのです。」

私達は口々に言った。

「え!?な、なんで!?」

キリンは焦ったように言った。すると、

「仮に私の目をだませたとしても、片方のいない方と会話ができていたのはおかしいでありましょう。」

ヘビクイワシさんが冷静に言った。

「うぐぅっ!!そ、それは…ふ、双子だったのです!!博士か助手、ギロギロを取りに行った方にはそっくりの双子がいて、いつのまにか入れ替わっていたのです!!いや、ヘビクイワシも共犯だったのです!!それで二人のアリバイを作って、犯行が不可能なように見せかけていたのです!!」

キリンはさらに焦ったように言った。周りのみんなはため息をつき、頭を抱えていた。

「キリン落ち着いて!話が変に広がっていっちゃってるよ!」

私はキリンを落ち着かせようとした。

「はっ!!そうね、ありがとう、シマちゃん。たしかに、少し無理があったようね。でも、落ち着いて考えてみたら、別の答えが出てきたわ。」

「真実はいつも一つじゃないのですか。」

「そこ!としょかんではお静かに!さあ、真の犯人は……あなたよ!!」

そうして、また一人のフレンズさんを指差した。



「…で、なんで私になるのかしら?」



ゴマバラワシさんはいつも通りの口調で言った。

「そもそも、『寝ていた』というのが嘘だったのよ!寝たフリをしていて、それで周りに誰もいなくなったときに、犯行に及んだのよ!!空を飛んでいれば、足音を立てないで周りに気付かれずに犯行を行うことが可能ォォォ!!最初から怪しいとは思っていたけれど、まさか本当にあなただったとはね!!」

「でも、動機が全くないんじゃないかしら?」

「うぐぅっ!!」

キリンの推理はすぐにはね返された。

「そ、それじゃあ、次はあなたたちよ!!」

めげないキリンはブームスラングとサーベルタイガーさんを指差した。

「ブームスラングが、私が寝たことをサーベルタイガーに伝えに行き、その長いサーベルでギロギロをチョイチョイと…!!」

「だから、私達にも動機がないじゃない!」

「私も、そんな誰かを困らせるようなことのためにこのサーベルは使わないわ。」

ブームスラングとサーベルタイガーさんも反論をする。

「はっ!!灯台下暗しとはまさにこのこと!!真の犯人はシマちゃん、あなただったのね!!面白いギロギロを独占しようと企んで…!!」

「そんなことしないよお!!!」

なんだか大変なことになってきてしまった。


「みなさん、落ち着いてください。事情聴取だけでは証拠が足りないのではないでしょうか。一先ず、現場に向かってみませんか?」

私達を落ち着かせるように、オオセンザンコウさんが言った。

「そ、それもそうね。現場に動かぬ証拠があるかもしれないわ。行ってみましょう。」

キリンはその提案に乗り、私達が読み聞かせをしていたところに向かった。



「そもそも、証拠が不十分なのに推理を始めるなんて、お前は本当に名探偵なのですか?」

「わ、私もちょうど現場に向かおうとしていたところだったのよ!!」



私達が読み聞かせを楽しんでいた場所、つまり犯行現場に着いた。本棚に囲まれたその場所には変わらず、一つの大きな机と、それを取り囲むようにある私達の座っていた椅子が三つあった。

「現場にはまだ何も手をつけてないわ。そして、盗まれたのは、今、この棚にないギロギロよ。」

キリンはそう言ってギロギロの棚を指差した。そこには、一冊だけ抜けていた。

「なるほど、では、何か見つかるかもしれませんし、少し現場を調べてみましょう。」

オオセンザンコウさんはそう言って懐から虫眼鏡を出して現場を調べ始めた。

「どう見ても、こっちの方が探偵っぽいのです。」

「タイリクオオカミがモデルにしたのも頷けますね。」

「………」

博士さんと助手さんの言葉にキリンは無言でいた。


現場を調べ始めてからすぐに、

「んっ…これは…?」

と、オオセンザンコウさんが言った。

「も、もう証拠が見つかったの!?」

キリンが驚いて聞いた。すると、

「証拠というか…むしろ、盗品そのものが見つかったと言いますか…」

と、思いもよらないことをオオセンザンコウさんが言った。



「えええええええぇぇぇ!!??」



としょかんに私達の驚きの声がこだました。


「さて、このギロギロですが、この椅子の下に、ちょうど死角になって見えない位置に落ちていました。この席に座っていたのは誰でしたか?」

オオセンザンコウさんは私達に問いかけた。



「あれ?確かそこの席に座ってたのって…」


「キリンちゃんじゃなかった?」



私に続けてブームスラングが言った。当のキリンはというと、

「あ、あわ、あわわわわわわわ…」

と、状況を理解しきれていないようだった。

「なるほど…つまり、キリンさんは、寝ている間もギロギロを持っていたようなので、その間に落としてしまったのでしょう。それを『盗まれた』と勘違いしてこのようなことになってしまったと…つまり、この事件の犯人は、キリンさん、貴方です!!」

オオセンザンコウさんは、ビシッとキリンを指差した。そうして、キリンは、


「い、いや〜…たしかに私だったかも?許して?ね?」


と、言った。



「キリンんんんんんんん!!!!!」

「ひいいぃっ!!お騒がせしてごめんなさーい!!!」



私達とキリンの声が明るくなりつつあるしんりんちほーに響き渡った。




「ギロギロ…いえ、オオセンザンコウは行動を以って証明しました。事件は無事解決しました。何も問題はありませんでしたね。」

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