じけん①

「事件って、どうしたの!?」

私は、飛び起きてすぐにキリンに聞いた。

「それは…後で全員集まってから話すわ。さて、シマちゃん、としょかんの中にいる全員を入り口に集めてもらえないかしら?」

キリンは深刻そうな顔で私に言った。

「う、うん、わかったよ。」

私はそう言って、としょかんの中のフレンズさん全員を入り口の辺りに集めた。




「まったく、朝っぱらからなんなのですか。」

「としょかんではお静かに、と何回言ったらわかるんですか。」

「ま、まあまあ。二人ともそんなに怒らないでくださいよ。…で、シマちゃん、一体何事なの?」

ブームスラングが博士さんと助手さんを落ち着かせつつ、私に話をふってきた。

「それが、私にもよくわからないの。キリンは事件だって言ってたけど…」

と、その時だった。


「この事件…名探偵アミメキリンが現れたからには安心よ!!」


としょかんの階段の上の方から降りてきながらキリンが言った。

「無駄な演出はどうでもいいので、さっさとその事件とやらを教えるのです。」

博士さんが口調を強めて言った。

「む、無駄な…!?フッ、まあいいわ。事件について教えてあげましょう。」

キリンはそう言うと、なぜか私達に背を向けて話し出した。

「あの、超人気作家タイリクオオカミ先生の代表作、『ホラー探偵ギロギロ』が何者かに盗まれたわ。シマちゃんとブームスラングに最後に読み聞かせをした話よ。はんこーすいてーじこくは、今から四十分ほど前から十分ほど前までの間の、私が睡眠をとっていた約三十分間よ。」

キリンは淡々と言った。

「ぬ、盗まれたって、誰がそんなことを…?」

私が聞くと、

「私も疑いたくはないけれど…犯人は必ずこの中にいる!!」

キリンはそう言って、私達の方に振り返り私達八人を指差していった。

「それじゃあ、今から一人一人じじょーちょーしゅをしていくわ。正直に答えないと、マフラーでぺちんぺちんしちゃうわよ!」




「まずはシマちゃん、あなたからよ。事件の起こった時間帯に何をしていたかしら?」

「私はずっと寝ていたと思うよ。キリンが大声を上げた時に起きたから、多分ね。」

「たしかに、私が寝る前から起きた時までずっと同じ体勢で寝てたわね。犯行はできにくそうだわ。次に行きましょう。」



「ブームスラング、あなたは何をしていたのかしら?」

「私もシマちゃんが寝ちゃってからしばらくの間は起きてたけど、いつのまにか眠っちゃっていたわ。それで、起きたらキリンも寝ちゃってたから、ちょっととしょかんの中を見て回ってみようかなって歩いてたの。」

「その起きた時、ギロギロはまだ現場にあったかしら?」

「うーん…暗くてよくわからなかったなあ。そう、その後、サーベルタイガーさんに会ったわ。」

「なるほど、じゃあ次は、そのサーベルタイガーにじじょーちょーしゅよ!」



「あなたは何をしていたの?」

「私は、ちょうどここら辺で少し寝てたわ。それで、犯行推定時刻より結構前に起きて、朝ごはんの献立を考えに、料理の本の棚に行ったの。それで、そこでブームスラングに会ったわけ。」

「サーベルタイガーさんってすごいんだよ!火が使えるし、材料を綺麗に切れるから、色々な料理ができるんだよ!それに、文字はあまり読めないけど、その分、絵からだいたいのことを読み取ってほとんどレシピ通りにできちゃうだって!」

「記憶のない私に色々なことを教えてくれた博士達に恩返しをしたいと思ってね。このサーベル、傷つけるため以外の目的で誰かの役に立てたいと思っていたから、ちょうどよかったのよ。」

「なるほど、いい話ね。って、話が逸れちゃったわ。その後、二人で何をしていたの?」

「さっき言ったことや、他愛もない会話をしていただけさ。そしたら、キリンの大声が聞こえて向かっている時にシマに呼び止められたの。」

「ありがとう。次は…」



「普段の行いから結構怪しそうなゴマバラワシ、あなたは?」

「何も聞いていないのに怪しいって、ひどくないかしら?私はずーっとここで寝てたわ。さっきの大きな目覚まし時計のおかげで早起きできたわ。ありがとうね。」

「確かに、私が寝ていた時も起きた時もすぐ近くで寝ていたよ。」

「私もみんなを呼ぶ時に入り口を通った時、既にゴマバラワシさんだけはいたよ。」

「なるほど。より怪しさが深まったわね。」

「それ、なんかおかしくないかしら?まあいいわ。ウフフ。」



「次はセンザンコウ、いえ、ギロギロよ。」

「私はギロギロではないと何回も…まあ、それはいいでしょう。私は博士、助手、そしてヘビクイワシさんと共に、調べ物や話し合いなどをしていました。その後、私は寝てしまいましたが、他の猛禽類のみなさんはずっと話し合っていたようですね。」

「話し合い…?怪しいわね…?何について話していたのかしら?」

「えーと…話しても大丈夫でしょうか?」

「今、尋問されているのはセンザンコウ、お前なのです。」

「お前が話すのですよ。」

「わかりました。私達は、二つのことについて話していました。一つは、シマさんの夢についてのこと。これについては、色々な経緯は省きますが、ありえなくはないことだと結論付けました。そして、もう一つ、最近のセルリアン騒動についてです。この間のイカリアンについても絡んでいます。これについては、検証が必要なため、まだ何か話すことはできません。」

「な、なんだか難しい話をしていたようね…わかったわ、ありがとう。」



「さて、ヘビクイワシ、あなたは…」

「私もさっきオオセンザンコウ君が言ってくれたように、博士達と話し合いを夜通ししておりました。それで、アミメキリン君の声を聞き何事かと向かっていたところに、シマ君に呼ばれたのでありましょう。そもそも、私はとしょかんの司書なのであって、そのような者が蔵書を盗むだなんてことあってはなりません、いえ、あるはずがないでありましょう。」

「た、たしかにそれはそうね。じゃあ次に行こうかしら。」



「…と思ったけど、博士と助手は二人の話からなにやってたかは想像つくから、もう聞かなくてもいいんじゃないかな?」

「なぜですか。」

「我々にもちゃんと事情聴取をするのです。」

「じゃあ…二人はなにをしていたの?」

「調べ物と話し合いです。」

「シマのこととセルリアン騒動についての調べ物と話し合いです。」

「それ以上のこともそれ以下のこともしていません。」

「もちろん、本を盗むなどといったこともです。」

「…まあ、想像通りの答えをありがとう。」

「「想像通りとはなんですか。」」




「…さて、じじょーちょーしゅを終えた今、私の頭の中では、既に犯人の姿は浮き彫りにされているわ!」

キリンはまた私達に背中を向けて話し出した。

「え!?もう誰かわかったの!?」

「フフッ、シマちゃん。この名探偵アミメキリンを見くびってもらっちゃ困るわ。」

キリンは横顔を見せて、誇らしげに笑いながら言った。そして、

「さあ、真実はいつも一つよ!」

キリンはそう言ってから、少し溜めて、



「犯人は……あなたよ!!」



振り返ってあるフレンズさんを指差してそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る