しょうたい①

ぐ う 〜 〜




博士さんの口が開かれたと思ったその時、緊張感とは程遠い音が聞こえてきた。その音は、どうやら博士さんと助手さんのお腹から聞こえてきたようだ。そして、

「どうやら、今は教えることができないのです。」

と、博士さんは言った。

「ええええぇぇぇ!!??なんでよ!!!」

キリンが大きな声で問いただした。

「そう騒ぐななのです。頭を使うにはエネルギーが必要なのです。そのために料理を食べる必要があるのです。我々は賢いので。」

「もちろん、じゃぱりまんは食べ飽きたのでダメです。我々はグルメなので。」

博士さんと助手さんが続けて言った。

「そんなぁ…でも、今、ここに料理できるようなフレンズはいないわよ…どうすればいいの…」

キリンが残念そうに言った。

「そんなに落ち込むななのです。じきにやつが帰ってくるはずなのです。料理を作ることのできるフレンズです。」

「みんなでやつの帰りを待つのです。ほら、としょかんの中に入るのです。折角だからお前たちも一緒に料理を食べていくのです。人数が多い方が料理もおいしくなるのですよ。」

助手さんと博士さんは続けざまに言い、としょかんの中に入っていった。ゴマバラワシさん、オオセンザンコウさん、ブームスラングも続いて入っていった。

「ほら、キリン、中に入って一緒に待とうよ。」

私は落ち込んでいるキリンに声をかけた。

「うう…シマちゃんは折角ここまで来たのに、自分がなんのフレンズか聞けなくていいの?」

と、私に問いかけた。

「うん、確かに少し残念ではあったかな。けど、しょうがないし、それに、料理を食べればちゃんと聞けるはずだから、全然大丈夫だよ!」

と、私は答えた。

「…そうね。待っていればちゃんと聞けるものね。よーし、それじゃあ、みんなでそのフレンズの帰りを待とう!!」

キリンはあっという間に立ち直り、あっという間にとしょかんの中に入っていった。

「あ!立ち直り早いよー!置いてかないでよー!!」

私はキリンを追いかけて、としょかんに入った。



「さて、料理ができるまでとしょかんの中を見て回っているといいのです。」

「そうすれば、いつのまにか料理ができているです。ただし、としょかんの中ではお静かに、なのですよ。」

博士さんと助手さんは、としょかんに入った私に言った。

「そうですね。色々見て回ってみます。キリン、ブームスラング、行こう。」

私は静かにそう言うと、キリンとブームスラングと共にとしょかんを回ることにした。



「それにしても、たくさん本があるね。この中にオオカミさんのギロギロもあるの?」

「そうよ。あっ、じゃあ、ギロギロの続き、見に行こっか!」

「やったあ!私も、『ホラー探偵ギロギロ』好きなの!」

「おお!ここにも先生のファンが!!じゃあ、ギロギロを熟知したこの私が、二人に読み聞かせをしてあげようじゃない!」

「「やったあ!!!」」

テンションが上がってきた私達は、いつの間にか大きな声で話していた。すると、

「としょかんではお静かにお願いします。」

と、どこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。その声の方を見ると、見たことのあるフレンズさんがいた。

「あ、ヘビクイワシさん。」

「君達はアミメキリン君にブームスラング君、それとろっじで会った君は…」

「シマです。自分がなんのフレンズか聞きにきました。ところで、ヘビクイワシさんはなんでここに?」

私は簡潔に自己紹介をし、質問をした。

「なるほど、博士達が言っていたフレンズは君だったのですね。そうですね、私は書記官として普段は書記をしておりますが、としょかんの司書もやらせていただいておりますのでありましょう。」

ヘビクイワシさんは私の質問に即座に答えた。

「今からギロギロをみんなで見にいくの。それで、ちょっと楽しくなっちゃって少し騒いじゃったわ。ごめんなさい。」

「わかってもらえれば大丈夫でありましょう。それでは、楽しんでいってください。」

キリンが謝ると、ヘビクイワシさんは元来た方へ戻っていった。

「よし、じゃあ、ギロギロの置いてあるところまで行くよ。」

キリンがそう言い、私とブームスラングは静かに頷いて、キリンの後についていった。


「あっ!新しいのが出てるよ。」

ブームスラングは新しく出たギロギロ、つまり、私達もかいたギロギロを見つけて言った。

「あ…で、でも、まずはシマちゃんが最初の方からあまり見てないから、最初の方から見て行こうよ。」

「う、うん、私もその方がありがたいなあ。」

私達は自分のかいたギロギロを見るのがなんだか怖くて、なんとか回避しようとした。

「ああ〜、それもそうだね。私もキリンちゃんの読み聞かせ聞いてみたいから、そうしてもらおうかな。」

ブームスラングは私達の意見に賛成してくれた。私達はホッと息をついた。

「じゃあ…先生の読み聞かせを何回も何回も聞いて覚えたギロギロの読み聞かせを始めるわね。先生みたく、ホラー感を出せるかはわからないけどね…」

キリンは、棚から一冊取り出して言った。

「キリン、頑張って!」

「私も楽しみ!」

「こほん…それじゃあ…『ホラー探偵ギロギロ』の世界へようこそ…!」




「ーー姿の見えないセルリアン…!ギロギロはこの謎を解くことができるのか…!?続く…!!」

キリンは、一冊目を読み終えた。そして、私達に、

「ど、どうだったかしら?」

と、聞いた。

「すごい!ギロギロの世界がマンガの中じゃなくて実際にすぐそこで起こっているみたいだったよ!!」

「本当だね!オオカミさんの読み聞かせに全く負けてないよ!さすがだね!!」

私達は、素直にキリンを褒めていた。

「ほ、ほんと?それならよかったわ。じゃあ、どんどん続きいっちゃうよ。」

キリンはまた、オオカミさんに引けを取らない読み聞かせを続けてくれた。




「やっぱりここにみんないたのね。料理ができたから、博士達から呼んでこいって言われたのよね。」

ギロギロが山場に入りかけてきた時、ゴマバラワシさんが博士さんからの伝言を伝えに来てくれた。

「ここからいいところに入るんだけど…続きは後にしよっか。さあ、ご飯を食べに行きましょう!」

「「おー!!」」

私とブームスラングは同時に声を合わせた。そして、ゴマバラワシさんとキリンに続いてとしょかんの外へ向かった。


外には、オオセンザンコウさんに、博士さんと助手さん、ヘビクイワシさんと…もう一人、見知らぬフレンズさんがいた。

「全く、遅いのです。せっかくの料理が冷めてしまうのです。」

机の前に座っている博士さんが言った。

「す、すいません。でも、先に食べててくれててもよかったんじゃ…?」

「何を言うのですか。みんなで一緒に食べた方がおいしいとさっき言ったではありませんか。頭を使うのですよ。」

私が聞くと、助手さんがすぐに答えた。

「そうですね!待っててくれてありがとうございました!」

私がお礼を言うと、

「礼には及ばぬのですよ。それでは、いただきます。」

博士さんは号令をした。私達みんなもそれに続いていただきますを言い、机の上に並んでいるたくさんの料理を食べ始めた。みんなで食べた料理はとてもおいしかった。


ふと目についた見知らぬフレンズさん。多分、このフレンズさんがこのおいしい料理を作ってくれたのだろう。

「あなたが料理を作ってくださったんですよね?とってもおいしいです!ありがとうございます!」

私は料理の感想とともにお礼を言った。

「喜んでもらえたようでよかったわ。そういえば、紹介がまだだったわね。私はサーベルタイガーよ。あなたはシマね?博士から聞いたわ。よろしく。」

「はい、よろしくお願いします!」

サーベルタイガーさんは微笑んで答え、私は挨拶を返した。

すると、その時、

「ふう〜。ごちそうさまなのです。」

「ごちそうさまなのです。満腹、満足なのです。さあ、シマ。お前がなんのフレンズか教えてやるので、料理を食べ終わったらとしょかんの中に来るのですよ。」

博士さん達はそう言って、としょかんに戻っていった。私は残りの料理を食べて、ごちそうさまを言ってからとしょかんの中に急いだ。


私がとしょかんの中に入ると、まだ外にいたみんなも続々と中に入ってきた。

「さて。お腹も満たされ、みんな揃ったので、シマ、お前がなんのフレンズか教えてやるのです。」

助手さんが話を切り出し始めた。としょかんに来た時と同じような緊張感が流れた。そして、博士さんが私をまじまじと見て、口を開いた。




「シマ。お前はーー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る