としょかん

しんりん

「戻ってきたわ…!しんりんちほー…!」

みずべちほーを抜けて、私達はしんりんちほーへと足を踏み入れた。私がうまれ、そしてろっじが、としょかんがあるこのちほーに。

「ここからだと、まだとしょかんまで少し距離があります。とりあえず、無事しんりんちほーに入ることができましたし、少し休憩しましょうか。」

道の案内をしてくれていたオオセンザンコウさんが言った。

「「さんせーーい!!!」」

私とキリンは同時に声を上げた。そして、

「あそこに大きな木があるわ。あそこの下で休憩しましょう!シマちゃん、あの木の下まで競争よ!!」

と、キリンは言って走り出した。

「あっ!!先にずるいよ〜!よし、負けないよ!」

私もキリンを追いかけて走り出した。

「二人とも、周りには気をつけてくださいね。」

後ろからオオセンザンコウさんの声が聞こえてきた気がした。


「あれ、もう追いつかれちゃった!?やっぱシマちゃん、速いわね。」

すぐに追いついてきた私を見てキリンは驚いていた。

「イッカクさんに特訓してもらってさらに速くなったよ!それっ!!」

私はそう言って、さらに加速し、キリンを一気に追い抜いた。そのまま速度を緩めることなく走っていると…


ドンッ!!


誰かにぶつかってしまったようだ。私と、その相手はぶつかった衝撃で転倒した。

「うわあ!ごめんなさい!!」

私はすぐに謝った。

「うーん、いたた…楽しく走り回るのはいいけど、周りには十分気をつけないと。」

そのフレンズさんはすぐに立ち上がって私に言った。見ると、茶色っぽい毛皮の上に白い長めの服を着ていて、メガネの奥から私を鋭い目つきで見つめていた。

「シマちゃん、急ぎすぎだよ〜。ごめんなさいね…って、あなたバビルサじゃない。」

「そういう君はアミメキリン君か。こんなところでどうしたんだい?」

バビルサさんは後から来たキリンに言った。

バビルサさんって確か、ゴマバラワシさんの風邪や背中の痛みを治した薬を作ったフレンズさんだったっけ。

「私達はとしょかんに向かっているの。このシマちゃんがなんのフレンズか知るためにね。」

キリンはさっきのバビルサさんの問いかけに答えた。

「なるほど。先の噴火の時に新たにうまれたフレンズと見えるな。確かに、あまり見かけない顔のようだ。それにしても、さっきの足の速さ、あれは実に興味深いな…シマ君…といったか。ちょっとこの私特性の『けもの水』を飲んでみないか?ククッ…」

バビルサさんは、私に何か水のようなものが入ったビンを差し出した。それを私が受け取ろうとした時だった。

「シマ。受け取っちゃダメよ。」

後ろから声がした。私達に追いついてきたゴマバラワシさんの声だ。

「バビルサ、久しぶりね。実験の時以来かしら?そうそう、この間、あなたの薬のおかげで風邪も背中も痛みがすぐよくなったわ。ありがとうね。」

「ほう、私の薬が役に立ったとは、それは喜ばしいことだ。」

ゴマバラワシさんとバビルサさんは顔見知りだったらしく、いい雰囲気で話しているように見えた。

「だけど…変な実験はほどほどにしたらどうかしら?それに、けもの水は所持を禁止されたんじゃなかったのかしら?あなたはなんでそれをまだ持っているのかしら?」

ゴマバラワシさんは声の調子を変えて言った。顔はいつも通り冷静そうだけれど、聞いたことのないような声の調子でよくわかる。ゴマバラワシさんはどうやら怒っているようだ。

「ククッ、そう怒らないでくれたまえよ、ゴマバラワシ君。私もドクターとしての手前、実験せずにはいられないタチなんだ。君がスカイダイビングを好むように、私も実験を好んでいるのさ。その気持ちは君にもわかるだろう?」

バビルサさんはゴマバラワシさんを煽るかのように言った。

「ふーん。あなたの気味の悪い趣味とは一緒にしてもらいたくはないわね。」

「おや?君も人の慌てふためく顔を見て楽しむという変わった趣味があるじゃないか。それに…」

「ストップストップ!!二人とも口喧嘩はやめて!!」

キリンが二人の間に割って入って言った。

「アミメキリン君の言う通りだな。ちょっと熱くなりすぎたようだな。それじゃあ、私は去るとするよ。また会う機会があったら、その時は…クククッ。」

すると、バビルサさんはすぐにその場を去っていった。




「キリン、止めてくれてありがとう。私は冷静でいたつもりだったけど、ついカッとなってしまっていたようね…」

しばらくして、ゴマバラワシさんが言った。

「あそこまで冷静じゃないゴマバラワシなんて初めてよ。何かあったの?」

「…結構前に、バビルサがフレンズの力を試すというテストを行ったの。それに私も参加していたんだけど、それはテストではなくて、実は彼女の実験だったの。私は騙されて、さっき彼女が持ってたけもの水の実験台にされてたのよ。それがちょっとね…」

ゴマバラワシさんは握った拳をわなわなと震わせていた。

「とりあえず、落ち着きましょう。ゆっくり休憩すれば怒りも収まるはずです。じゃぱりまんもたくさんあるのでみなさんどうぞ。」

オオセンザンコウさんが冷静にその場を取り繕った。

「さすがセンザンコウ!用意がいいわね!シマちゃん、食べまくるわよ!!」

「そうだね、いっぱい歩いたからお腹ペコペコだよ。ほら、ゴマバラワシさんも食べないと、なくなっちゃいますよ?」

「あっ、もう、そんな一気に食べたら危ないわよ。ウフフ。」

次第にゴマバラワシさんの声がいつもの調子に戻ってきた感じがした。



「ふぅ〜、食べた食べた。ごちそうさまでした。」

「それにしても、さっき、キリンが口に押し込みすぎて、苦しそうにしてた時の顔…すごくよかったわよ。ウフフ。」

「それはどうも…いや〜、あれは正直、物凄いききてきじょうきょーだったわね。」

「焦って食べるからですよ。ふふっ。」

「あ〜っ!!センザンコウが笑った!!これはレアなシーンね!!!」

「わ、私だってフレンズですし、笑いますよっ…!」

「あら?顔赤くして、照れてるのかしら?思わぬところでいい顔を頂けたわね。ウフフ。」

「照れてませんっ!!さ、さあっ、休憩したことで、ゴマバラワシさんもいつも通りになったようですし、早くとしょかんに向かいますよ!」

じゃぱりまんを食べ終え、私達は楽しく会話をしていた。そして、いざ出発しようとした時だった。私達の方に何かが飛んでくるのが見えた。

「あれは…なに…?」

私が言うと、その方向から、

「わああああぁぁ!!待って〜!!飛んでかないで〜!!!」

と、声が聞こえてきた。その声はどんどん近づいてくる。

「名探偵の私の推理によると、きっとこの声のフレンズは、あれを追いかけているようね…ゴマバラワシ、とってあげてきてくれないかしら?」

「んー、しょうがないわね。よっと。」

ゴマバラワシさんはそう言って高く飛び、その飛んできたものを掴んで降りてきた。


「あら、これは…PPPぺぱぷのライブチケットね。でも、この間のやつみたいよ。」

「この間のって、私達も見せてもらったやつかな?」

「そうみたいね。それにしても、なんで終わったライブのチケットが…怪しいわね…!さて、ギロギロ!あなたの推理を聞こうじゃない!!」

「私はギロギロではありませんが…ただ記念に持っていただけでは…?」

「フフッ、ギロギロはまだ甘いわね。仕方ないわね。この謎は、この名探偵アミメキリンが直々に…」

その時、このPPPぺぱぷのライブチケットを追いかけていたであろうフレンズさんが私達に追いついた。

「ああっ!チケットをとってくれてありがとうございます!!助かりました!!」

そのフレンズさんは、とても明るい調子で言った。

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