「それにしても…想像以上に大きい木だな…」

周りの景色から浮いた雰囲気で生えている大きな木を見て、イッカクさんは言った。私も、イカリアンと戦っている時には戦いに必死であまり気にしていなかったけれど、改めて見てみると、自分でもかなり大きいと思った。イカリアンより少し高いその木の枝からは、青々とした葉っぱが生い茂っていた。

「シマ、少しこの木を調べさせてくれないか?」

「もちろんいいですよ。というか、ぜひお願いします!」

私がイッカクさんの問いかけに答えると、イッカクさんは木を色々と調べ始めた。


イッカクさんは、周りを周りながら木を見たり、スピアーで木を軽く突っついてみたりして木を調べていた。すると、

「シマ、少しわかったことがある。」

と、イッカクさんが私を呼んだ。

「何がわかったんですか?」

「まあ、順を追って説明していくよ。まず私は、この木がなんでここに生えることができたのか、そこに着目した。確かに、シマが生やした、と言えば全て解決するけれど、その原理がよくわからない。それについて、私なりの見解を出したんだ。」

イッカクさんはそう言って、解説を始めた。

「さっき木をスピアーで突いてみた時、その衝撃でこの葉っぱが落ちてきたんだ。この葉っぱをよく見てみると、枝から離れた部分が少し光っているのがわかるか?」

「た、確かに光ってますね…これは…?」

私は、根元が微かに光っている葉を見て言った。

「この光はきっと、サンドスターなんじゃないかと思う。」

「サンドスター…ですか…?」

「ああ。多分、木の中にもサンドスターがあると思う。木の表面が硬くて、中まで調べるのは難しかったけどね。キリンの話を聞くに、木が生えた時、イカリアンは木を攻撃し続けたという。サンドスターが少し外に出ているキリンより、サンドスターの塊のような木の方を優先的に狙おうと決めたんだろう。」

イッカクさんは根拠もあげて説明した。なるほど確かに、イカリアンは木を必死に攻撃していた気がする。回復するために木からサンドスターを供給しようとしていたというなら、合点が行く。

「さて、じゃあこのサンドスター、どこから供給されたのか。それはまあ簡単なことだけど、シマ、お前のサンドスターだよ。」

イッカクさんは私を指差して言った。

「シマは、直接の攻撃は食らっていなかったと聞く。目立った傷もなかったからね。それに、野生解放も、イカリアンの止めをさしたときにしか使っていないから、サンドスターの消費もそこまで激しくなかったのではないかと思っていた。それなのに、野生解放によってサンドスターをだいぶ消費したキリンや、イカリアンから直接サンドスターを奪われたセンザンコウよりも疲弊していたのは、少し疑問だった。けど、これだけ大きな木を生やすのにサンドスターを使ったとしたら、どうだろう?相当多くのサンドスターを使い、体の中からサンドスターがほぼなくなるんじゃないか?」

「確かに…そうですね。」

私はイッカクさんの見解に頷きながら答えた。

「さあ、ここからが本題だ。私は、この木を生やす力を身を守ることに使えるんじゃないかと思ったんだ。ジャパリパークで身を守る術を持つことはとても大切だからだ。それで、木を調べて、それができそうかを確かめようとしたんだ。」

「身を守る…確かに、できそうですね!」

「そう、私もできると思っていた。だけど、あまりにサンドスターの消費が多いようだから、身を守ろうとして逆にシマがピンチになってしまう。サンドスターの消費を抑えることも可能だとは思うけど、それだと身を守るほどの木を生やさないんじゃないかと思う。」

イッカクさんは、そう言った。確かにその通りだった。自分やみんなを守ろうと力を使っても、自分がピンチになったら元も子もない。私は少し残念に思った。

「そこでだ。最初は、その力の制御の特訓をしようと思っていたが、予定変更だ。シマ、お前はだいぶ身体能力もいいようだ。その身体能力をしっかりと使えれば、木を生やす力を使わなくても身を守ることができると思う。その身体能力を磨く特訓をしてやろう。」

イッカクさんはニヤリと笑って言った。なんだか、自分の力をイッカクさんに認めてもらえたような気がして、私はちょっと嬉しくなった。

「はい!!ぜひお願いします!!」

私はイッカクさんにお辞儀をして言った。

「よし、じゃあまずは、今のシマの実力を見てみたい。組手をしよう。」

「組手って…?」

「まあ、つまりは、私とシマが戦うんだ。」

イッカクさんはそう言って、スピアーを構えた。


イッカクさんと戦う…?とても強くて優しいイッカクさんと…?


「ああ、フレンズ同士で戦うっていう表現だと、ちょっと気分が乗らないか。なんていうか、一種の狩りごっこみたいなものだよ。だから、安心して。」

イッカクさんは、私を見て言った。

「狩りごっこ…ですか…?」

「そうだ。だけど、手加減はしないで、本気を見せてほしい。さっきも言ったけど、シマの実力を見たいんだ。頼む。」

イッカクさんはそう言うと、軽く頭を下げた。

「…わかりました。本気でいきます…!では…お願いします!」

私はそう言って、武器を構えた。そして、一気に助走をつけて高くジャンプした。

「さあ、来い!!」

イッカクさんもスピアーを構え直してそう言った。




しばらくの間、私は武器を振り続けた。けれど、それは全てイッカクさんのスピアーに防がれていた。長いこと振り続けていたから、だいぶ疲れてきていた。

「渾身の一撃で…決める!!」

私はそう言って、力を振り絞って武器を大きく縦に振るった。

「これは防ぎきれないかもしれないな…こうなったら…!」

イッカクさんはそう言うと、私の渾身の一撃を素早くかわした。そして、隙だらけになった私の横に移動し、私の首の付け根にスピアーを突き出した。スピアーは、私の首に当たる寸前で止まった。

「ひいっ!!」

私は恐怖の声を漏らした。

「フフッ、突いたりはしないから大丈夫だよ。だけど、今回は私の勝ちだな。」

イッカクさんはそう言うと、スピアーを自分の方に戻した。私はその場に崩れるように座りこんだ。

「はあ…はあ…やっぱり、イッカクさんは強いです…全然敵いませんでした…」

「そんなことはないよ。私も、最後の一撃にはちょっとゾッとしたからね。よし、特訓のメニューを考えたよ。全部こなせるかどうかはわからないけど、一旦休憩したら、特訓再開だ。」

イッカクさんはそう言うと、木の方に向かって行った。

「はい!!」

私も返事をしてイッカクさんについていく形で木の方に向かって行った。

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