けっちゃく

とびかかっている私に気が付いたイカリアンは、一本の触手を私に向けて伸ばしてきた。

「そんなもの、くらわないよ!えいっ!!」

私は武器を使って触手を受け流し、触手をつたって走って行った。そして、触手の付け根に辿り着き、石に向かってジャンプした。


ーー勝てる…!!


そう確信したときだった。横から、何か黒い水のようなものが私に襲いかかってきた。どうやら、イカリアンが口から吐いたもののようだ。その黒い水の勢いに私はおされていった。

「シマちゃん!!!」

キリンの声が聞こえた。




この時の私は、とても冷静だった。黒い水に吹き飛ばされていても、野生解放して輝いている私の目は、しっかりとイカリアンの石を捉えていた。



「この距離なら…大丈夫!!」



そう思い、私は、石めがけて武器を投げつけた。勢いよく、一直線に飛んで行った武器は…



見事にイカリアンの石に刺さった。



グオオオオオオオオォォォォォォォ!!!!!


イカリアンが叫んだ。割れた石からは、何か光るものが勢いよく飛び出していた。そして、ついにーー



ぱ っ か ー ん ! ! !



大きな音を立ててイカリアンは消滅した。

黒い水に押されながら、イカリアンの消滅を確認した私は、安心したせいか、野生解放が自然と解除された。そして、私は水の中に放り出された。

「シ…ちゃ……!!……!」

私を呼ぶ声が聞こえた気がした。けれど、力が何も残っていない私は、そのまま気を失ってしまった。






「んん…ここは…」

気がつくと、私は布団の上で横になっていた。

「イカリアンは!?」

私は慌てて起き上がった。けれど、体に力が入らず、すぐにさっきまでの姿勢に戻ってしまった。

「シマ…!起きたのか…!」

私は、声のした方に顔を向けた。そこにはイッカクさんが座っていた。周りを見ると、オオセンザンコウさんやゴマバラワシさん、いつもは座りながら寝るキリンまでもが横になってすやすやと眠っていた。

「イッカクさん!イカリアンは!?みんなは無事ですか!?それと、それと…」

「まあ、シマ、落ち着いて。順を追って全部説明するから。ほとんど聞いた話になるけどね。」

イッカクさんはそう言って、説明を始めた。




イカリアンは、シマとキリンが最後まで頑張ってくれたおかげで倒すことができた。だが、最後のイカリアンの足掻き、まあイカスミの攻撃によって、シマは水の中に放り出された。

「シマちゃん!!どうしよう、シマちゃんは泳げないかもしれないのに…私が泳げたら…私が動けたらすぐに助けに行くのに…!」

その光景を見ていたキリンがそう言った。すると、そこに、キリンに言われて戦闘不能になったセンザンコウを戦場から離したゴマバラワシが帰ってきた。

「イカリアンは倒したようね…あの子シマは…?」

「水の中に入っちゃって…早く助けなきゃ!!」

「そうね…キリン、あなた動けないんでしょう?私が行くわ。」

質問の答えを聞いたゴマバラワシは、シマが沈んでいく水の上に飛んで行った。そして、ゴマバラワシは勢いよく水中にもぐった。そのまま水底まで泳いでいき、シマを見つけたゴマバラワシは、シマを救出することに成功した。


「シマちゃん!!しっかりして!!」

「落ち着いて、キリン。脈もあるし息もしてるわ。ただ気を失っているだけよ。サンドスターの消費が激しいみたいだけど、命に別状はないはずよ。」

慌てるキリンをなだめるように、びしょびしょに濡れたゴマバラワシが言った。

その後、ゴマバラワシは、シマとキリンを連れてセンザンコウについていたマーゲイと合流した。少し落ち着いた後に、ゴマバラワシがシマとキリンを、マーゲイがセンザンコウをここまで連れて帰ってきた。




「そして、全員休んでいるところだよ。つまり、イカリアンは倒せたし、みんなは無事だ。安心してくれ。」

イッカクさんがそう言うと、私は安心して深く息を吐いた。ただ、もう一つ気がかりなことが…

「ジェーンさんのマイクは!?」

私が聞くと、

「シマがイカリアンを倒してくれたおかげで、マイクも取り返せたようだ。ジェーンはすごく感謝してたぞ。ちなみに、今、PPPぺぱぷの五人は明日のライブに向けてのリハーサル中だ。終わったらみんなの様子を見に真っ先にここに来るだろうさ。」

すぐにイッカクさんは答えた。


どうやら、全てうまくいったようだ。とても安心した。


「イッカクさん…私、私…とても不安でした…ちゃんとマイクを取り返せるか、ちゃんと戦えるか、みんな無事でいられるか…でも…本当に、本当に良かったです…!全てうまくいって…!」

私は、自然と涙を流していた。喜び、嬉しさ、安心、色々な感情が混ざり合わさった涙だ。

「シマ、お前は本当に頑張ったよ。よくやったよ。」

イッカクさんは優しくそう言って、私の枕元に座った。そして、私の頭をそっと自分の膝に置いて、繊細に優しく撫でた。私は耐えられなくなり、イッカクさんの膝に顔を埋めて、声をあげて泣いた。それをイッカクさんは、尚も私の頭を撫で続けながら、一身に受け止めてくれた。




しばらくすると、外から大人数で話す声が聞こえてきた。それはどんどん、私達の方に近づいてきていた。そして、小屋の入り口からトントンと音が鳴ってから、入り口が開いた。

「失礼しま〜す。イッカクさ〜ん、みんなの調子はどうですか〜。」

プリンセスさんが小声でイッカクさんに言った。

「リハーサルお疲れ。みんなまだ寝てるよ。あ、シマは少し前に起きたけどね。」

イッカクさんがそう言うと、PPPぺぱぷの五人とマーゲイさんが一気に入ってきた。

「起きたのね!無事でよかったわ!」

「活躍聞いたぜ!お前、相当ロックじゃねえか!!シビれるぜ!!」

「イカリアン、やっつけてくれて、ありがと〜。」

「戦い終えたばかりのシマさんを見たときは、無事かどうか不安で不安で…とにかく、無事でなによりです〜!!」

みなさんが、口々に言った。

「ほら、ジェーン、お礼言わなきゃ。」

コウテイさんが、ジェーンさんの背中を押して言った。

「あ、あの…感謝の気持ちが多すぎて、全然言うことがまとまらなくて…と、とにかく!本当にありがとうございました!!」

ジェーンさんが、礼をして言った。

「いえ、そんなにしなくても!私は、ただ当然のことをしただけで、えっと…」

私もうまく言葉がまとまらず、言葉が止まってしまった。すると、

「そうです!みなさんを、ライブにご招待しませんか?ぜひ、みなさんにもライブを見てもらいたいんです!!」

と、ジェーンさんが言った。他のPPPぺぱぷの四人とマーゲイさんは満場一致でそれに賛成した。

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

私は、嬉しくなって言った。

「その前に、自分の体を治さないとな。」

イッカクさんが私に向けて言った。確かに、その通りだった。

私は、まだ残っているイカリアンとの戦いの疲れと、さっき、たくさん泣いたことによる疲れで、また眠くなっていた。まともに動けない私は、ご飯をイッカクさんに食べさせてもらってから、またすぐに眠りについた。






次の日になった。外が何やら騒がしくて目が覚めた。

体は動かすことができた。疲れはそれなりに取れたようだった。

「おはよう、シマちゃん!」

キリンの声がした。周りを見ると、ゴマバラワシさんもいた。

「おはよう。キリン、ゴマバラワシさん。調子はどう?」

「私はもう大丈夫よ!サンドスターを多く使っちゃっただけだからね。」

「私はサンドスターもだいぶ残ってたから、何も問題はないわね。あなたこそ、大丈夫なの?」

キリンは元気そうに答えて、ゴマバラワシさんは逆に問いかけた。

「私も大丈夫!…って、あれれれ?」

私は立とうとしたが、フラフラとして、しっかりとは立てなかった。

「わっとと…慣れないことしたから、まだフラフラね。」

フラフラとした私を、キリンがサッと支えてくれた。

「ありがとう、キリン。ところで、外が結構騒がしいけど、どうしたの?」

私が聞くと、

「ああ、これは、PPPぺぱぷのライブを見に来たフレンズ達の声よ。まだ少し時間はあるけど、待ちきれなくて来ちゃったんじゃないかしら。」

と、キリンが答えた。

「ちなみに、イッカクとセンザンコウは、そのフレンズ達の整備をしているわ。イッカクはともかく、センザンコウはまだ完全に疲れが取れてないのに、よくやるわよね。」

ゴマバラワシさんが付け加えて言った。

「それなら、私達も手伝おう!二人だけじゃきっと大変だと思うしさ!」

私が提案すると、

「「そのフラフラの体で?」」

と、二人に同時に言われた。私達は顔を見合わせて、笑った。

「そうね、手伝いにいこう!シマちゃんは、私がおんぶしてあげるよ。」

キリンはそう言うと、しゃがみ、私を背負った。

「さあ、みんな、行くわよ!!」

キリンがそう言い、私達は、たくさんのフレンズの声のする方へ向かって行った。

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