さくせん

「ゴマバラワシさん、ありがとう。それで、イカリアンはどこに行ったの?」

マーゲイさんが、帰ってきたばかりのゴマバラワシさんに聞いた。

「イカリアン…?ああ、なるほどね。イカリアンはマーゲイの声に反応して、移動していったわ。方向で言うと…この小屋から東へ一直線にね。結構速く泳いでたわね。」

ゴマバラワシさんは答えた。

「ここから東…もしかしたら、私とイッカクさんがイカリアンに遭遇した場所と同じかもしれませんね。他にその地形の特徴はありましたか?」

オオセンザンコウさんも尋ねた。

「そうね…特にはないけど、小型のセルリアンが他の場所より少し多くて、水の近くには、少し広めの陸があったわね。」

「なるほど…おそらく、私達がイカリアンと遭遇した場所と同じですね。ならば、やはり、陸上にあげてから戦う作戦になりますね。私は陸上でしか戦えませんし…ただ、イッカクさんが戦えないであろうこの状況で、どうやって陸上にあげるかですね…」

ゴマバラワシさんの返答を聞き、オオセンザンコウさんが必死に考えていた。

「それだったら、私達がイカリアンを水中から追い出します!私達は水中でも大丈夫なフレンズなので!」

プリンセスさんが提案した。PPPぺぱぷの他のメンバーも頷いていた。

PPPぺぱぷのみなさんのお気持ち、とてもありがたいです。ですが、みなさんに何かあっては、どれだけのフレンズが悲しむでしょうか。みなさんにはここで待っていて頂きたいです。帰りを待っているフレンズがいるというだけで、戦う力になりますので。」

オオセンザンコウさんは、プリンセスさんの頼みを断った。


しばらくして、

「私に一つ、案があります。」

と、マーゲイさんが手をあげて言った。

「私がさっきここからイカリアンを追い払ったように、声マネをして水中から誘きよせます。」

マーゲイさんは続けてそう言った。

「いいわね、その案!!」

キリンが賛成した。

「でも、それだと、マーゲイさんがとても危険なんじゃ…マーゲイさんの声マネで誘き出されるなら、そのままマーゲイさんに向かっていくんじゃ…」

私がそう言うと、

「確かに、戦闘向きではないマーゲイさんには危険すぎるかもしれません。全力で守っても、守りきれる保証はありませんし…」

と、オオセンザンコウさんもマーゲイさんの危険について指摘した。すると、マーゲイさんは、

「私のことは心配しないで大丈夫です。さっき、PPPぺぱぷの五人が、力になろうとした姿を見て、覚悟を決めました。PPPぺぱぷのマネージャーとして、ぜひ力になりたいんです!!」

マーゲイさんが必死に頼み込んだ。しばらく考えた後、オオセンザンコウさんは、

「わかりました。マーゲイさん、お願いします。全力で守っていきますが、もし、本当に危険だと思ったら、すぐに逃げてください。それが条件です。」

と、言った。マーゲイさんもそれを了承した。すると、キリンが、

「それじゃあ、今日、警備を手伝った私達も戦わなきゃね!そもそも、センザンコウ一人じゃ、あんな大きいの、大変でしょう?」

と、言った。

「私も、最初からお手伝いするつもりでしたよ!…少し、怖いですが…」

「これは、私も行かなきゃね。見てるだけに…って、ウソよ。私も真面目に戦うわ。ウフフ。」

私とゴマバラワシさんもキリンに続いて言った。

「みなさんも危険には晒したくありませんが…少しでも戦力は欲しいですし…不本意ながら、お願いします。ただ、マーゲイさんと同じく、危険だと思ったら逃げてください。」

私達三人もそれを了承した。

「そうと決まれば、早速イカリアンをやっつけに行きましょう!!」

キリンが威勢良くそう言った。けれど、

「私は夜目も利きますから、問題ありませんが、キリンさんやゴマバラワシさんら、夜行性ではないフレンズには、月明かりだけで戦うのはあまりに危険です。日が昇ってからにしましょう。それに、休息も必要です。万全の状態にしておくに超したことはありません。」

と、オオセンザンコウさんが言うと、

「た、確かにそうね。ここまで長旅だったし、色々あって疲れも溜まっているしね。」

と、キリンも同意した。

「それでは、とりあえず作戦会議は終わりにしましょう。みなさんはお疲れでしょうし、ゆっくり休んでください。シマさん、キリンさん、ゴマバラワシさんは私についてきてください。」

オオセンザンコウさんがそう言って、私達をどこかに案内しようとした。私達は、PPPぺぱぷのみなさんとマーゲイさんにお休みなさいを言ってから、オオセンザンコウさんについて行った。


今までいた小屋から少し行くと、さっきの小屋より一回り小さい別の小屋が見えてきた。

「私とイッカクさんが、警備に当たるにあたって、用意してもらった待機場兼休憩場です。少し狭いかもしれませんが、布団も何枚かあったはずなので、こちらでお休みになられてください。」

オオセンザンコウさんがそう言って、私達をその小屋の中に入れた。そして、私達は布団を敷いて、そこに寝転がった。

「ふう、さすがに疲れたわね。1時間くらいは眠れそうかしらね?」

「それでもやっぱり短いんだね。私はもっとたくさん眠れそうだよ。」

私とキリンは、少しお喋りをしていた。

「ところで、あなたは休まなくていいの?」

ふとゴマバラワシさんが、オオセンザンコウさんに聞いた。

「はい、私も休んでおきたいところですが、何でも屋として、壊れた壁を軽く修理してから休もうと思います。すぐ終わるので、大丈夫ですよ。それでは、お休みなさい。」

そう言ってオオセンザンコウさんは小屋から出て行った。手伝いに行こうかと思ったけれど、長旅や戦闘によって想像以上に疲れていた私は、あっという間に眠ってしまっていた。





朝が来た。

「ん…」

「おはよう、シマちゃん。疲れは取れた?」

私が起きたことに気付き、キリンが言った。

「うん、ぐっすり眠れたからバッチリだよ!…って、ゴマバラワシさんは?」

「ゴマバラワシは、PPPぺぱぷのみんながいる小屋の方に行ったわ。私達も行きましょ。」

私達は布団を片付けて、もう片方の小屋の方に向かった。


小屋の中に入ると、すでにみんな起きていた。イカリアンを倒しに行くフレンズさん達は、準備もできているようだった。私は、小屋の中にいたフレンズさんにおはようございますと言ってから、心の準備をしていた。すると、

「シマ、少しいいか?」

と、呼びかけられた。それはイッカクさんの声だった。

「ちょっと伝えておきたいことがあるんだ。」

イッカクさんは続けてそう言った。

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