ぺぱぷ

「『ぺぱぷ』ってなんですか?」

私はその場にいた全員に対して質問を投げかけた。

PPPぺぱぷは、アイドルっていわれてるもので、歌って踊るフレンズたちのことね。」

「正式名称は、"Penguins ペンギンズPerformanceパフォーマンス Projectプロジェクト"です。それらの頭文字を取って略して、PPPぺぱぷです。」

「まあ、キリンの説明がなんだかんだで一番伝わりやすいかな。このステージでペンギンのフレンズ五人が歌を踊りながら歌うんだ。すごい人気があるんだよ。」

「五人全員かわいいのよね。あの子達の慌てふためく顔、見てみたいわね。ウフフ。」

「なるほど…ちょっと気になるなあ。」

ぺぱぷが何かをみんなが思い思いに教えてくれて、興味が出てきた。ただ、ゴマバラワシさんだけちょっとおかしかった気はしたけれど、むしろいつも通りだ。



「さて、会場周辺は一通り見回りをしたから、マーゲイに報告に行こう。シマ達も一応来てくれ。」

イッカクさんはそう言うと、ステージの裏にある小屋の方へ向かった。私達も続いて小屋に向かった。


小屋の中からは楽しそうな音楽がかすかに聞こえてきた。それを聞いているだけでも、なんだか楽しくなってきた気がした。

「マーゲイ、いるか?一通り警備してきたぞ。」

「あら、イッカクさんにセンザンコウさん、ご苦労様。何か変わったことはあった?」

「セルリアンの数がやはり多いですね。お客さんが来る時、少し大変かもしれません。さっき、皆で結構な数のセルリアンを倒しましたが、まだ多くいると思われます。」

「そう、ありがとう。せっかくチケットを手に入れたファンには来てもらいたいから、セルリアンの数をせめて減らしてもらえるとありがたいわ。それはそうと、後ろの三人は…?ってキリンじゃない、どうしたの?」

三人は仕事のことについて話し合っていた。そんな中、私達に気付いたマーゲイさんと思われるフレンズがキリンに話をふった。どうやら知り合いらしい。

「マーゲイ、久しぶり。『あの子』の見送りの時以来ね。私達も警備を手伝っていたの。この二人はシマちゃんとゴマバラワシよ。」

キリンが紹介をしてくれたから、私は一応、お辞儀をしておいた。

「初めまして、私はマーゲイよ。PPPぺぱぷのマネージャーをしているわ。よろしくね。」

「よろしくお願いします。」

私は再びお辞儀をした。


「マーゲイ、とりあえず一曲通し終えたけど…あら、イッカクさん達、いつも警備ありがとうございます。それと…あなたは初めましてね。私はロイヤルペンギンのプリンセスよ。よろしくね。」

小屋の奥から、一人の白い髪のとても綺麗なフレンズさんが現れた。プリンセスさんは、私に握手を求めてきた。

「なんのフレンズかはわかりませんが、シマといいます。よろしくお願いします。」

私は、そう言って、プリンセスさんと握手を交わした。それを見たマーゲイさんが、

「はわわわわ!!初めて会うフレンズにも握手をするという、プリンセスさんのこの寛大さ!!ただ、これはプリンセスさんの魅力のほんの一角!たとえばですね、プリンセスさんはあんなことやこんなことを…」

これでもかという早口で興奮気味に語り始めた。

「あはは…マーゲイはスイッチ入ると止まらないからね…そうだ、あなた達も警備のお手伝いしてくれてたのよね?お疲れだろうし、中で私達の練習の見学でもしていかないかしら?」

マーゲイさんに微笑を漏らしつつ、プリンセスさんが提案した。

「練習を見学できるのはすごく貴重だ。休みがてら見させてもらうといいよ。私とセンザンコウはまた夕方くらいまで警備にあたるよ。」

イッカクさんはそう言うと、オオセンザンコウさんと共に小屋を出て行った。

「じゃあ、こっちよ。入って。」

プリンセスさんに手招きされて、私とキリンは小屋の奥に入っていった。

「私はここでもうちょっとマーゲイの解説を聞いてるわね。すごくおもしろそうだから。ウフフ。」

ゴマバラワシさんは、未だに語り続けているマーゲイさんの前に座って話を聞いていた(かどうかは定かではない)。



小屋の中には、他にも四人のフレンズさんがいた。

「プリンセス、マーゲイは?それと、その二人は?」

片目が髪で隠れているフレンズさんがプリンセスさんに聞いた。

「この二人は、イッカクさん達の警備を手伝ってくれたのよ。だから、お礼に練習の見学をって思って。」

「あ、見学ですね。ではこちらへどうぞ。ちなみにお名前は?」

髪の長いフレンズさんが、私達を案内してくれた。

「シマです、よろしくお願いします。」

「名探偵のアミメキリンよ!って、みんな一回あってるから知ってるわよね。」

「あ〜、いつも変な推理をする『迷』探偵のキリンちゃんだ〜。」

ほわわんとしているフレンズさんがツッコんだ。

「し、失礼ね!!『名』探偵よ!『名』探偵!!」

キリンが必死に訂正した。私達の中に、笑いが生まれた。

「あ、私達の紹介がまだでしたね。ジェンツーペンギンのジェーンです。よろしくお願いします!」

「イワトビペンギンのイワビーだぜ!!よろしくな!」

「フルル〜!フンボルトペンギン!」

「コウテイペンギンのコウテイだ。よろしく。」

「それと、私プリンセスで、五人合わせて…」

「「「「「PPPぺぱぷ!!!」」」」」

紹介を終えた五人が声を合わせて言った。私とキリンはついつい拍手を送っていた。

「それじゃあ、練習を再開するわよ。二人とも、楽しんでいってね!」

プリンセスさんがそう言うと、五人は練習を始めた。五人の綺麗な歌声と可愛らしい踊りに、私はおもわず見とれてしまっていた。そして、とても素敵な時間はどんどん過ぎていった。



「はい、今日の練習はここまでよ!みんないい感じだわ!明日のリハーサル、そして明後日の本番には万全で挑めるようにね!」

プリンセスさんがそう言って、練習は終わった。五人はとても疲れているようだった。

「どうだった?私達の練習、楽しんでもらえたかな?」

コウテイさんが私達に聞いた。

「とても楽しかったわ!いいものを見させてもらったわね!」

「はい!みなさん、すごく可愛らしくて、とても楽しかったです!」

私達の感想を聞いて、五人は嬉しそうだった。

と、その時だった。突然、大きな地鳴りがした。

「な、なに!?」

小屋の中にいた全員が、戸惑っていた。その地鳴りはどんどん大きくなっていき、ついに…


ドン!!!


何かが小屋の壁に当たった音がした。と、同時にその何かが当たった壁が崩れた。そこにいたのは…

「セ、セルリアン!?」

触手がたくさんある大きなフレンズだった。圧倒的な存在感を放つセルリアンに、私やジェーンさん、フルルさんは腰が抜けてしまい、他のフレンズさん達もただただ立ち尽くすことしかできていなかった。

私達の存在を捉えたセルリアンは、一本の触手を振りかざした。


「ジェーン!!危ない!!」


プリンセスさんの叫びが、穴の空いた壁のある部屋に響いた。

セルリアンの狙いは、一番近くにいたフレンズさん、つまりジェーンさんだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る