けいび

「大丈夫か!?さっき、物凄い悲鳴が聞こえてきたんだが…」

そのフレンズは槍を構えて辺りを警戒しながら、私達に聞いた。

「ま、まあ、何もなかったって言うと嘘になるけど、特に問題はないわ。」

その悲鳴の元のキリンが答えた。

「そ、そうか?特に問題がないなら、良かったが…ああ、私はイッカククジラのイッカクだ。よろしく。」

イッカクさんが自己紹介をしたので、私達三人も自己紹介をした。



「ところで、イッカクさんは何をしていたんですか?」

私がイッカクさんに聞くと、

「私はここら辺の警備をしているんだ。この間の噴火の影響か、セルリアンがいつもより少し多くなっていてね。この私の誇りのスピアーで、みんなを護りたいんだ。それに目を付けられて、今はちょっとした仕事も頼まれているんだ。」

イッカクさんはその長い槍を空に向けて掲げて言った。

「他のフレンズのために動く…男気が溢れていてとてもかっこいいわ…!」

キリンが感動しながら言った。その言葉に同意するように、私も、それにゴマバラワシさんまでもが頷いた。イッカクさんは、少し頬を赤らめて照れているように見えた。

「そうだわ!その警備、私たちにも手伝わせてもらえないかしら?イッカクは水中を、私たちは陸上を警備すれば、とてもいいんじゃないかしら?」

キリンが提案した。私とゴマバラワシさんは、唐突な提案に少し驚いた。

「うーん…あまり他のフレンズを危険に晒したくはないんだが…しかし、役に立ちたいというその気持ちも大事にしたい…よし、なにか異常を見つけたらすぐに私を呼んで、お前達はその場から離れる、という条件でなら手伝ってもらおうかな。」

イッカクさんは、少し考えてから言った。

「ありがとう、イッカク!ちなみに、全く聞いてなかったけど、シマちゃんとゴマバラワシはどう?」

「私は、見てるだけでいいなら手伝ってもいいわよ。」

「私も、セルリアンと戦うのかと思ってたけど、戦わなくても大丈夫なら、ゴマバラワシさんと同意見かな。」

「よし!じゃあ、みずべちほーの警備にれっつごー!!」

私達の同意を聞くと、キリンは張り切って歩き始めた。それに続いて私達も歩き始めた。イッカクさんは、道をどこで曲がるかなどを私達に教えてから、水に潜って泳ぎ始めた。



「ところで、何でキリンは警備を手伝おうと思ったの?」

道すがら私はキリンに聞いた。

「それは、イッカクの思いに感動したからね。誰かのために動くっていう心を、私も欲しかったのかもしれないわ。」

キリンはそう言った。

「(キリンは、いつも私のために行動してくれてるから、既にその心は持っているんじゃないかな。)」

私はそう思ったけど、それは心の中に留めておいた。と、その時、

「二人とも、向こうの方にセルリアンが見えるわ。」

空を飛びながら辺りを見ていたゴマバラワシさんが私とキリンに言った。私達の間に緊張が走った。

しばらくして、セルリアンが近付いてきた。

「あ、そういえば、シマちゃんはセルリアン見たことないわよね。あれがセルリアンよ。大きさとか色は違ったりするけどね。」

キリンがセルリアンを知らない私に説明してくれた。道の少し先には青くて小さいものが見えた。

「あれが…セルリアンね…」

私は唾を飲んだ。それと同時に、キリンが、

「イッカク〜!!セルリアンが見えたわ!!」

と、イッカクさんを呼んだ。


ざば〜ん!!


勢いよく水の中からイッカクさんが飛び出してきた。

「教えてくれてありがとう。さあ、三人は下がってて。」

イッカクさんは、そう言うと、セルリアンに向かって走って行った。

「やあああぁぁ!!」

高く跳び上がり、イッカクさんの突き出した槍がセルリアンに命中した。


ぱっかーん!


セルリアンは音を立ててはじけとんだ。それを見ていた私達は自然と感嘆の声を漏らしながら拍手を送っていた。

「別に見世物というわけではないが…まあいいか。またセルリアンを見かけたら頼むよ。」

そう言って、イッカクさんはまた水に飛び込んだ。


そうして、セルリアンを見つけてはイッカクさんを呼び、というのを更に二回ほど繰り返した時だった。前から一人のフレンズが歩いてくるのが見えた。

「おや、貴方達は…?」

「私たちはイッカクさんのお手伝いでみずべちほーの警備をしている者です!」

キリンがその問いかけに対して、ビシッと決めて答えた。

「なるほど、イッカクさんのお手伝いですか。申し遅れました、私はオオセンザンコウです。何でも屋をしています。私も警備の仕事をしていたところです。イッカクさんとは仕事で一緒になった仲間なのです。」

オオセンザンコウさんは丁寧に自己紹介した。その流れで、私とゴマバラワシさんも軽く自己紹介をした。すると、キリンが、

「あなた、どこかで見たことがある気がする…どこだったかしら…?」

と、オオセンザンコウさんをジロジロと見ながら言った。

「キリン、失礼でしょ。オオセンザンコウさん、ごめんなさい。」

私がキリンの代わりに謝った。でも、確かによく見ると、私もどこかで見たことがある気がする…


「おーい、三人ともどうした?…って、センザンコウじゃないか。警備お疲れ様。」

イッカクさんが水から出てきて言った。

「こちらこそお疲れ様です。それにしても、やはり普段よりセルリアンの数が多いですね。そちらはどうですか?」

「こっちは、特に水中にセルリアンが多いな。水中ではかれこれ十体ほど倒しているよ。」

イッカクさんとオオセンザンコウさんは仕事の報告をしあった。まさか、私達が三体見つけた間に、十体も倒していたなんて…さすがイッカクさんだ。


しばらく黙り込んでいたキリンが唐突に、

「あ〜!!あ、あなたはもしかして!!」

と叫んだ。その場にいた全員がキリンの方を見ると、キリンはオオセンザンコウさんの方を指差していた。そして、

「あ、あなたは『ギロギロ』ね!!」

と、言った。どこかで見たことがあると思ったら、確かにオオカミさんの「ホラー探偵ギロギロ」に出てくるギロギロにそっくりだった。

「ギロギロ…ああ、タイリクオオカミさんの漫画ですね。たしかに、以前『漫画の主人公のモデルになってくれないか』という依頼を受けたことはありますね。」

オオセンザンコウさんは冷静に答えた。キリンの方はというと、

「ほ、本物のギロギロ…!!あ、握手してください!!」

と、興奮を抑えきれていなかった。オオセンザンコウさんは、特に躊躇うことなく、キリンと握手を交わした。キリンはとても嬉しそうにしていた。



そのままオオセンザンコウさんも加えて歩いて行くと、広場のようなところに着いた。

「ここは…?」

私がイッカクさんとオオセンザンコウさんに聞くと、

「ああ、そういえば仕事の内容については言ってなかったな。」

「イッカクさん、伝えていなかったんですか。てっきり伝えたものだと…まあ、それはさておき、ここは、『ステージ』という場所です。」

イッカクさんに代わりオオセンザンコウさんが言った。

「ステージって言うと、もしかして…!」

キリンには心当たりがあるようだ。ゴマバラワシさんも同様だった。

「そう、私達は『PPPぺぱぷ』の護衛の仕事をしているんだ。」

イッカクさんが言う。私には「ぺぱぷ」がどういうものなのかはわからなかった。

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